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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第一章 島の学校
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第12話 続 体力テスト

午前中は、初めてこともあり体育委員が上手く誘導出来なかったりもしつつなんとか学校を巡って行った。

全体的には8点以上のスコアを出せてはいるが、ハンドボール投げだけは中学の時からあまり結果が芳しくない。

小学生の時のソフトボール投げなら35メートルくらいは飛ばせていたのだがボールが変わって25メートル程。

得点としては6点(だったはず…要調査。)他の種目でカバーする必要がある。

昼休みまでのあと残りは短距離走など、中学陸上部の身としてはここで挽回しておく必要がある。

他の皆が終わるのを待っている間、先に短距離走をしていた同じクラスの女子を見ていた。

決してやらしい意図がある訳では無い、黒崎がどれほどの足の速さなのか普通に興味がある。

タイミング良く黒崎の順番が回ってきた、後ろの女子が足を押さえてからクラウチングスタートの構えをとる。

スタートラインに立った女子が片手を勢いよく下げた刹那、黒崎は風になった。

横に並んだ女子を突き放してただひたすらに前を向いて地面を駆けていく、その真剣さは彼女の生き方そのものに見えた。

女子の歓声が聞こえる、クラスの男子も驚きを隠せないようだ。

(あれは…7秒台くらいか、後半じゃないな)

女子でそれほどなら十分速い記録だ、うちの姉も確かそれくらいだったはず。

いやそれよりもまだ早いかもしれない。

一見してみると速いが、少し無駄がある。

スタートしてからの前傾姿勢から前を向くまでの間の加速する距離がちょっと短い。

あれでは充分に加速出来ておらずトップスピードが出しづらいはずだ。

陸上の経験がないからだろうが、純粋な運動能力だけで走ってあれだけ速いのだから伸び代は大きい。

ハンドボール投げが終わり次は入れ替わりで男子が短距離走となる。

もとより本気で望むつもりが、あんなものを見せられたら陸上選手の端くれとしてはちょっと燃える展開だ。

走る前に体を解し、状態を確認する。

午前中で色々な種目をやったおかげでウォーミングアップは出来ている、筋肉痛もさほどない。

調子も万全、気持ちも高揚しているがそれを全て集中力に変える。

「んじゃ、やりますか」

待ち望んだ自分の番、白線の前に立つともう前しか見えなくなる。

白線から自分の足一個分離してそこが右足の場所、左足はそこから一足半のところに左足を置く。

若干の狭さを感じるがこれくらいでいい、ロケットスタートの状態で合図を待つ。

「位置について、よーいはい!」

その声が聞こえた瞬間に右足に力を込めて勢い良く体を押し出す。

前傾姿勢を保ちながらどんどん加速、徐々に体を起こしていきつつ最高速度を維持しながらゴールを目指していく。

周りの景色を置いていきつつ最後は胸を突き出して白線を踏み込む。

全力の余韻を持ちながら急には止まらずに、少しずつ速度を落としていく。

深呼吸で息を整える、振り返り計測係をしていた女子陸上部員からタイムを聞いた。

「汐見君、6秒6!速っ、陸上やってた?」

「まあ、小学校からクラブでやってましたね」

そのタイムは中三の時とさほど変わらないものだった。

春休みの間のツケがあったらしい、記録が落ちてないだけで良しとしよう。

でも久しぶりの全力疾走の感触はやはり悪くはなかった。



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