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プロローグ 潮風薫るこの地にて
コバルトブルーの海、季節ごとに色付く山々、耳をすましても虫の鳴き声か車の駆動音が静かに聞こえるほどのこの土地は日本列島から船で一時間ほど離れた離島。
離島と言っても電気やガス水道などのライフラインは通っており、スーパーや服屋といったお店で生活必需品も調達出来るため生活するには十分と言っていいだろう。
離島だからと言っても何か門外不出の風習があるとか、島特有の民族がいるとかそんな特殊な事は一切ない。
自然の豊かさから観光客として旅行で来る人も少なくなく、夏のシーズンになると大きな海水浴場ではそこそこの賑わいを見せている。
近年、島にあるキリスト教の教会が世界遺産に登録されて以降観光事業として活気がでて久しい。
そんななか、春の桜が舞う季節。
今年から高校生になる冴えない主人公、汐見 晶。
そして縁あって来島してきた少女、黒崎 薫。
潮風薫るこの地にて二人が織り成す物語。