よくある悪役令嬢ネタ
活動報告に載せたのを追加しました
※最推しの悪役令嬢に転生してしまいました……
フェリエル=ルーナ=アマンティ。
腰まである真っ直ぐな青みがかった黒髪、垂れ気味な透き通った空色の瞳。生まれた時から第一王子の婚約者に選ばれ、将来の王妃として幼い頃から厳しい教育を受けてきた。未来の夫となる王子と会ったのは6歳の時。王族の証である紫色の瞳、王譲りの白金色の髪。美貌の少年に一目で心奪われたフェリエルは、ここから更に勉学に励んだ。全ては、王子の隣に立つに相応しい令嬢となる為に。
だが、肝心の王子が自身の婚約者に関心がなかった。一途に自分を想ってくれるフェリエルを偶に邪険に扱う始末。それは自分の頑張りが足りないからと、フェリエルはより一層努力をするのだが王子の心が彼女に傾く事はなかった。
15歳になり、貴族の子が必ず通わなければならない学校に入学しても王子の心は傾かないまま日々は過ぎていき。軈て、ある噂が広まり始めた。王子が伯爵家に引き取られた元平民の少女を想っていると。
「それを聞いてずっと王子の為に努力していたフェリエルは壊れ、元平民の子を命奪う寸前まで虐めて、最後は今までの悪行の数々を暴かれて国外追放。……悲しいわ」
と、ベッドに腰掛け悲しんでいる少女はそのフェリエル本人。現在7歳。自分の事を他人事の様に語るのは何故か。
「ゲームをプレイして一目惚れしたキャラにどうしてなってるのよ……!」
一週間前、唐突に『女子高生』だった前世の記憶が蘇った。脳内処理が出来ない膨大な記憶量に数日寝込んだのが記憶に新しい。
彼女が転生したのはある乙女ゲームに登場するキャラ。婚約者の王子の心を奪われた嫉妬から、ヒロインの主人公の命を狙うまでに虐め、最後は断罪され国外追放となる悪役令嬢。
乙女ゲームの悪役は基本プレイヤーに嫌われるのが大多数。フェリエルもヒロインを虐める嫌なキャラとして嫌われていたが、一部には同情されていた。生まれた時から決められていた婚約者に見向きもされず、挙句ぽっと出のヒロインに王子を奪われ心を病む。王子にも非はあると、悪役令嬢派のプレイヤーはフェリエルを擁護していた。私もその一人。フェリエルの見た目が好みだったのもあるが、声も好きな女性声優が演じていた事も相俟って攻略対象者よりもフェリエルが最推しとなった。
死んでしまったのなら仕方ない。新しい人生を楽しむのも有りだと前向きに考えていたのに――未来は、国外追放、ルートによっては死亡エンドしかない悪役令嬢……。
でも待って。要は、学校に入学してもヒロインを虐めなければ良いんだよね? なら……でも、あの王子の婚約者のままも嫌だなあ……。
……。
「あ! そうだわ!」
王子の方から婚約を破棄してもらえばいいのよ。フェリエルの家は公爵家。相手は王家。此方から婚約破棄は出来ない。それに、だ。元から相手にしていない令嬢と結婚するよりも向こうだって好きな人と結婚したいだろう。記憶を辿る。初対面の日は、無関心な顔をする王子しか浮かばない。手紙を送っても一週間経ってやっと返事は来る始末で、会いたいと送っても忙しいからと拒否。
「めげずにいたフェリエルすごい。私なら無理」
寧ろ、こっちから願い下げよ。
「私の将来がかかっているんだもの。絶対にバッドエンドになんてならない」
自分以外誰もいない部屋で固く決意をした。
よくある悪役令嬢ネタです。無駄に前向き主人公です。無関心だった王子に執着されるか、他のキャラと親しくなるか、それともヒロインとお友達になるか。色々と想像出来て良いですよね。