第55話 アンネロッテ・メイフィールド〜2
「あなたがアンネロッテさん??」
「そうよ。私がキミの探しているアンネロッテ・メイフィールドよ」
彼女がアンネロッテ? そんな馬鹿な。アンネロッテは現在30代中頃のはずだ。俺は慌ててウィンドウを開き彼女のステータスをチェックしてみた。
ウィンドウには『ステータス閲覧不可』の文字。
何度やっても彼女のステータスは見ることができない。
こんなことは今までなかったのにどうなっているんだ?
「あらあら、ステータスの覗き見なんて悪趣味ねぇ。無駄よ、魔法で見れなくしてるから」
「なんで覗き見がバレてるんだっ?」
「キミも私のクラスリングを狙ってきたのかしら? だったら切り刻んで燃やしてあげるわ」
「違うんですっ! ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
ステータスの覗き見が仇となり彼女は俺の言葉に全く聞く耳を持たない。そればかりか完全に俺を敵視し、確実に殺そうという目をしている。
「それじゃあ、さようなら〜」
そう言って彼女が指先を軽く動かした次の瞬間、俺はその場に尻もちをついた。初めはなぜ尻もちをついたのか理解できなかったが、その答えは2秒後に最悪のかたちで目の前に現れた。俺の左足は膝から下が無くなっている。それに気づいた途端、激しい痛みでパニックになりその場を転げ回った。
「うわぁぁぁぁぁーー」
「フフフッ。私の真空波は切れ味良すぎて切られたことに気づかなかったでしょ? 次はどこを切られたい? 右足? 腕? それとも首を落として楽にしてあげましょうか?」
彼女は猟奇的な笑いで喉を震わせながら、こちらに近づいて来る。
「クククッ。言い残したことがあるなら聞いてア・ゲ・ル」
「これ以上はやめてください!! 俺はミリアさんの紹介で魔力解放のお願いに来ただけで戦いに来たわけじゃないんですよっ! ステータスを見ようとしたのは謝ります。見た目が若すぎたので信じられなかっただけなんです!!」
俺はミリアの魔法印を見せながらありったけの声を上げて懇願した。
「なーんだ。それを早く言いなさいよ。いつものように名を上げたい馬鹿な冒険者が、またやって来たのかと思ったわ」
彼女は徐に俺の左足を拾うとこちらに放り投げた。
「治してあげるから断面と断面を合わせて持ってなさいっ」
『超回復』
彼女が切断面に手を当て魔法を唱えると、あっという間に俺の左足は元通りにくっついた。さっきの攻撃魔法や今の回復魔法を見てもこの少女は只者でないのは一目瞭然だ。しかし本当にこの少女がアンネロッテなのかは疑問が残る。
「左足のお詫びに話ぐらいは聞いてあげるわ。ついてきなさい」
彼女に案内されたのは屋敷ではなく庭に建っている小屋だった。小屋には描きかけのお絵かきや立派な画材などが散らかっている。どうやらここは、お絵かきのアトリエみたいだ。
「適当に座って。今、コーヒーを出すから」
彼女は二つのマグカップのうち片方を俺に渡すと、彼女もソファーに腰を下ろした。いつ淹れたものか分からないがマグカップのコーヒーは冷たかった。
「冷たいのと温かいのどっちがいい?」
「出来れば温かいほうがいいです……」
「わがままねぇ。はい、どうぞ」
彼女はマグカップを指先でちょんと触れると、たちまちコーヒーから湯気が出てきたので、俺は驚きながらその様子を眺めていた。
「早く飲みなさいよ。大丈夫、毒なんて入ってないから」
「そういうつもりじゃなくて。ただ凄いなって」
とりあえず、俺は恐る恐るコーヒーを口にする。
「まずは、お互いに自己紹介をしましょう。キミのギルドカードを見せてちょうだい」
俺がカードを彼女の前に置くと、彼女もまた俺の前に自分のカードを置いた。彼女のカードも俺と同じブラックカードだ。
カードを見ると間違いなくアンネロッテ・メイフィールドと記されており、クラスは魔術師の最上級クラス、オーバーロードだった。
「ふーん。若いのにソードマスターなんて、なかなかやるわね。カ・ナ・デ・クン。ところでバローロとはどういう関係?」
「バローロは俺の師匠で旅に出る時にこのリングをもらいました。師匠と知り合いなんですか?」
「昔、一年くらいパーティーを組んでいたわ。でもある日、奥さんのためにナイトメアの根城に行くから来てくれないかって言われたけど、なんか意地悪しちゃって行かなかったの。それ以来会ってないわ。クエストも失敗して奥さんも亡くなったみたいだし……」
きっと彼女は師匠のことが好きだったんだな……
それで今も行かなかったことを後悔してるんだ……
「後でそれを聞いて私…… チャンスと思ったわっ。それで彼は今どこにいるの? 今度会いに行こうかしらっ」
やっぱりこの人、いろいろとかなりヤバい。
後悔なんて微塵もしてなかった……
「ところでなぜ少女の姿なんですか? ずっと気になってて」
「あー、これはね魔法学校時代の姿なの。さっきも言ったけど馬鹿な冒険者が名を上げるために襲ってくるからバレないように魔法でカモフラージュしてるのよ、カモフラージュ。でも本当の理由は……」
「本当の理由は??」
「可愛いからに決まってるじゃないっ! キミも初めて見た時、可愛いと思ったでしょ?? 顔に書いてあったわ。それに、この姿ならフリルの沢山ついた可愛い服もいっぱい着れるしね」
「……」
俺はしばらく言葉を失った。
「コホン。まぁ、キミも狙われないように気をつけなさいね」
「じゃあ、お絵か…… 画家もカモフラージュの一環なんですか?」
「違うわ。これは新しい私の表現方法の一つよ。今まで周りは私のことを魔術師としか見てくれなかったの。どこに行っても目当てにされるのは強い魔力だけだったわ。それに嫌気がさして魔術師の自分を封印して、昔から得意だった絵で自分を表現しようと思ったの。これでも子供の頃はよく両親に褒められたものよ」
「な、なるほど……」
絵以外で他になかったのだろうか……
「さて、無駄話はこれくらいにして本題に移りましょう」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
俺は気を取り直してアンネロッテに事情の説明を始めた。
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