第53話 ロイヤルカード〜2
俺は風呂から上がり、置いてあったバスローブに身を包み、先程の部屋に戻った。そこには、すでに料理が運ばれておりエリナは前菜をつつきながら一杯やっている。この世界では十八歳で成人となり酒やタバコも認められているのだ。
俺はとりあえずビールを手に取り、渇いた喉を潤しながら前菜をつまんだ。ビールを飲み終えた俺は棚に置いてある別の酒を物色しに向かう。棚には様々な種類の高そうな酒が置いてあり酒好きにはたまらないものだった。
「これにしよう」
俺はブランデーをグラスに注ぐと再びソファーに腰を下ろす。ブランデーを選んだ理由は、悪の組織とかのボスがバスローブでブランデーを片手に高そうな猫を撫でるというやつを一度やってみたかったからだ。
ただ、残念ながら部屋には猫がいない。俺は仕方なくブランデーを飲みつつ横にあったクッションを膝に置き、猫に見立てて撫でた。
「なにやってんの?」
エリナのごもっともな質問。
「いやぁ〜、猫を撫でながらブランデーを飲むっていうのをやってみたかったんだよ。あはは……」
「仕方ないわね〜 じゃあ、特別に猫の役をやってあげるわよ」
そう言ってエリナは四つん這いでニャーニャー言いながらソファー伝いにこちらにやって来た。四つん這いになったことで本人は気づいていないが胸元は丸見えで突起までもがしっかり見えている。
これでは猫なのか牛なのかわからない……
「お待たせいたしま……」
ちょうどそこへ支配人と料理長がメイン料理を運んで来たが二人は見てはいけないものも見てしまったといった様子。料理を置くと一礼だけしてすぐに部屋から出ていってしまった。
「……」
二人の間にしばらく沈黙が続く。
「ホントあんたに付き合うとロクなことにならないわね」
エリナは二杯目のワインをグラスに注ぐと一気に飲み干す。俺はそんな嫌味など聞きもせず、ブランデー片手に猫エリナの余韻に浸った。
「とにかく冷めないうちに食べましょ」
俺たちは気を取り直して料理をいただくことにした。運ばれて来た料理はどれもこれも美しい盛り付けで味も最高だ。二人とも今まで以上に酒がすすむ。
それにしてもエリナの酒の強さには驚かされる。すでに一人でワインのボトルを二本開けているにもかかわらずシラフのままなのだ。俺も酒の強さには自信があるがさすがに少し酔ってきている。
「明日はどうするの?」
エリナは三本目のワインを開けながら俺に尋ねた。
「剣を貰った武器屋にもう一度行ってその後、魔法学校を訪ねてみようかと思ってる。エリナは?」
「私は昼まで寝てから街をぶらぶらする〜 どうせ明日もここに泊まるし適当に帰ってきて」
「わ、わかった……」
どうやら明日もここに泊まるようだ。一泊いくらするのか想像がつかない。まぁ、支払いはエリナがしてくれるみたいだし気にすることでもないが……
俺は少し酔いを覚ますためバルコニーに出てみた。
それにしても広い。プールを避けてバルコニーの柵まで行くと街の様子が一望でき夜景がとても綺麗だ。
こんなにゆっくりしていてもいいのだろうか? 空に浮かぶ満月を眺めながらこれからのことを考える。
まず世界を救うって漠然としすぎて具体的に何をすればいいのかよくわからない。
もっと明確な目標、例えば魔王を倒すとかだったらよかったんだが……
ウィンドウのクエスト進捗率はまだ6/100だ。この6はナイトメアの時のものだろう。
先は長い……
今は少しでもレベルアップして次の戦いに備えておかなければならない。明日、魔法学校で良い情報が得られればよいのだか。
「そんな浮かない顔してどうしたの?」
部屋に戻るのが遅かったのかエリナもグラス片手にバルコニーにやってきた。
「この先のことを考えてたんだよ」
「ふーん。カナデはさぁ、いつまで旅を続けるの?」
「うーん、分からない。五年後、十年後、もしかしたら終わらないかも……」
実際、あらためて考えると、いつ終わるんだろう。とにかく寿命を迎えるまでには終わらせないとこの世界が滅んでしまう。それだけは何としても避けたい。
「エリナはどうするの? いつまでも俺と旅するわけにもいかないだろ? いずれ国王になるんだし」
「それはそうだけど…… そうだ、もし旅が終わったらウィンディラに来なさいよっ。私の専属の守護騎士にしてあげる。お給料も弾むわよっ」
「う、うん、30番目ぐらいの候補には入れとくよ」
こっそり、横目でエリナを見ると納得いかない様子で頬を膨らませたのが見えたが、見なかったことにした。
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