第51話 新しい剣
ギルドから出ると公園で顔を洗い鼻血が止まるまでしばらく休む。とりあえずギルドカードを無事に作れたことにホッと胸を撫で下ろす。それから、ベンチに座っている間にカードの利用規約を読んでみた。
いろいろ禁止事項や特典があるんだな……
そこには、簡単に言うと悪い事をすると自動的にカードが消滅したり、一定期間、使用停止になるといったことが書かれている。あとは買い物や宿泊の際にカードを提示すると割引になったりもするらしい。
利用規約に一通り目を通した頃には鼻血も止まったので早速、武器屋探しを開始した。地図を頼りに大通りから脇道に入り裏通りを散策したがなかなかいい品は見つからない。俺は半ば諦めかけていると目の前に小さな武器屋を見つけたので、最後にダメ元でそこに入った。
「ごめんくださいっ」
店の中は俺以外に客もいないし店主もいない。置いてある武器には値段はついていなく、ついているのは埃だけだった。
ハズレだな、帰るか……
俺が店から出ようとすると奥からやっと店主らしき男が現れた。
70、80歳ぐらい? もしかしたらそれ以上かもしれない少し不気味な老人だ。
「お前さんは誰だ?」
「武器を探していたんですけど……」
「あ、あの、もう帰りますんで。お邪魔しました」
俺は怖くなって急いで店から出ようとしたが老人は俺の腕を掴み引き留める。
「待て、お前さん、どうやって入った?」
「どうやってって、普通にこのドアからですけど……」
「嘘をつくでない。この扉は限られたクラスリングを持っているものにしか開けられない。お前さんのような小僧に開けられるわけなかろう」
「もし本当なら、クラスリングを見せてみぃ」
老人にクラスリングを見せると何も言わず奥に戻ってしまい、しばらくすると埃の被った古い木箱を持って来てカウンターの上に置いた。
「武器を探しておるんじゃろ? なら、これを持っていけ。高純度の魔硬石を鍛え上げた、このロン・グラハムベルの最後の一振りじゃ」
老人は木箱を開け、取り出した剣を俺に差し出した。俺は言われるがままにそれを受け取り、鞘から抜いてみる。
その剣の刀身は淡いエメラルドグリーンの輝きを放ち、柄の部分には綺麗に磨かれた黒い石が埋められいる。そして、驚くことに重さをほとんど感じない。まるで剣が体の一部になったかのようにしっくりくる。
「剣もお前さんを気に入ったみたいじゃ。嬉しそうにしとるわい」
「この剣はもともとはワシの親友、先先代のソードマスターに頼まれて作った剣じゃが完成前に亡くなってしまってのう。それから主人を求めて長い間眠っておったのだ」
先先代ってことは師匠の師匠か……
「そんな大事な物を俺が使ってもいいんですか?」
「かまわん。ワシは長年、扉を開けて入れる者を待っておった。それがソードマスターのお前さんだったということは、あやつが導いてくれたに違いないわ。これでやっとワシも向こうに行けるわい」
「わかりました。大切に使わせてもらいます」
「うむ。では行くがよい」
俺を送り出してくれる老人の顔はどこか清々しい表情をしている。店を出た俺はアイテムバッグに国王の剣をしまい、新しい剣を背負った。
それにしても不思議な人だったな……
俺はとにかく新しい剣がタダで貰えたことに満足げな表情を浮かべる。
日も暮れ始め、時計台の針は六時を指している。当初の目的であるギルドカードと新しい剣を手に入れた俺は、軽やかな足取りで約束の時計台へと向かった。
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