第50話 初めてのギルド〜2
「それではカナデさんこちらにいらしてください」
俺はカーラに連れられてカウンター脇に移動した。そこには魔法陣らしき物が描いてある石板と薄茶色のカードが置いてある。
「では石板に手を置いてください」
言われた通りに手を置くとカーラは右隅にさっきのカードを設置して石板を起動させる。起動した石板は魔法陣が白く光り、カードに文字が浮かんだが、すぐに消えてしまった。
「おかしいですね。登録ができないみたいです」
ピピピー プツン
カーラは何度かやり直しをしてくれたが何度やっても警告音が鳴るだけで時間だけが過ぎていく。
「剣士になる能力が足りてないからですかね?」
「いえ、それは無いと思います。初級クラスが登録出来ないことは、まずあり得ないので。実際、起動はしているので能力が足りてないことはないですね」
「もしかして、すでに他のクラスを登録してることはないですよね? もし、そうなら私、キレますよ」
「そんなことないです。ギルドに来たのも本当に初めてなんで」
カーラは作業が上手くいかないことに次第に苛立ち始め、表情も口調も厳しくなっていく。俺はずっと申し訳なく下を向いていた。
「カーラ! いつまでやってるんだい!? ピーピーうるさいねぇ」
カウンターの奥から別の女性が現れた。責任者みたいな人だろうか? 妙に威圧感がある。
見た目はカーラより歳上で30代から40代ぐらい。胸元がざっくり開いた赤いドレスにタバコを吹かしながらこちらにやってくる。
正直、怖い……
「すいません。ギルマス。この方のクラス登録ができないんです」
「カナデ・ツキシロ? 変わった名前だねぇ」
彼女はカーラから俺の身分証を受け取ると鋭い目つきでこちらを見つめてくる。
「あたしはここのギルドマスターのアリシア。特別にあたしがやってやるよ」
「お、お、お願いします……」
アリシアが近づくとさっきは分からなかったがパーマのかかった髪の間から長い耳が見える。どうやらエルフのようだ。
「手を置きなっ」
アリシアは俺の手を掴むと石板の上に置いて起動させた。
ピピピー プツン
やはり結果は同じだった。
「次は反対の手を乗せてみなっ」
俺はアリシアに言われるがままに反対の手を乗せると、それを見たアリシアとカーラの表情がなぜか豹変しだす。
「あんた、随分、舐めた真似してくれたねぇ」
「えっ? 何のことですか?」
「とぼけるんじゃないよっ。じゃあ、聞くがその腕につけてるものはなんだい?」
「こ、これは旅に出る時に師匠にもらったもので……」
「何かまずかったですか?」
「馬鹿かっ、それがクラスリングなんだよっ。しかも、それはソードマスターの物だね。一体、誰にもらったんだいっ!」
「師匠のバローロです……」
恐る恐る師匠の名前を口にする。なんでいつもいつも、こんな目に遭うんだ。
「それで、リングに書いてある数字はいくつだい?」
「64って書いてあります……」
「なるほど、そういうことかい。あんたはもうすでに64代目のソードマスターなんだよ。だからクラス登録出来なかったのさっ」
「えっーーーー! 俺がソードマスター?? すいません。本当に何も知らなかったんです」
俺はただただ驚き、テンパってその場でクルクル回った。アリシアもカーラも呆れてしまって無言のままだ。
「その様子じゃ本当に何も知らなかったんだねぇ。まぁ、アイツは昔からそういういい加減なところがあるからさぁ」
「師匠をご存じなんですか?」
「あたしはここで百年以上ギルマスしてんだ、知らないわけないだろっ」
「百年っ!!」
やっぱりエルフって長生きなんだな。てか師匠もちゃんと説明しといてくれよ。これやるよって感じで渡しただけだし。
「カーラ、このカードでこいつをソードマスターに登録してあげな」
アリシアは奥の部屋から黒いカードを持ってくるとカーラに渡した。
「わー、ブラックカードだ。私、初めてみました。最上級クラスはこのカードでしか登録出来ないんですよね?」
早速、カーラはそのカードを使ってクラス登録を始めてくれる。
ピロロロロン!
今度は上手くいったみたいだ。俺はカーラからカードを受け取るとじっくり眺めた。漆黒のカードに蒼白い文字で名前とクラスが浮かび上がっていてめちゃくちゃカッコいい。初めて車の免許を取った時と同じように、ニヤニヤしながら何度も見てしまう。
「カナデさん、浮かれてるところ悪いんですけど、こちらがアイテムバッグとギルドカードの利用規約なのでまた目を通しておいてくださいね」
「あっ、す、すいません。ありがとうございます。じゃあ、俺はこれで……」
「みんな! よく聞きなっ! こいつが新しいソードマスターのカナデ・ツキシロだっ。こんな、めでたい日に立ち会えてアンタら幸せに思うんだねっ! あと今日はあたしの奢りだから吐くまで飲みなっ!!」
「ウォォォーーーー!! カナデ!! カナデ!!」
俺が急いで帰ろうとするとアリシアが周りにいる冒険者達を煽りだす。それによってさっきまでの冷ややかな空気は一変し、歓喜と拍手が巻き起こった。
急いで出口に向かおうとすると冒険者達は左右に道を開け真っ直ぐ通してくれた。その様子はまるでモーセの十戒のようだ。
頼む…… 恥ずかしいからやめてくれ……
俺は顔を隠しながら下を向き、急ぎ足でその道を通り抜けようとしたが顔を隠しながらだった為、途中のテーブルの脚に思いっきり躓いて転んだ。
「大丈夫ですか??」
転んだ俺にパステルブルーの高そうなローブを纏った可愛らしい魔術師風の女性が駆け寄ってくれる。
あー、何でこうなるんだよ…… 完全に厄日だ……
「大丈夫、大丈夫です。気にしないでください」
「でも、鼻血が出てますよ……」
「ホント大丈夫ですからっ」
俺は両鼻から鼻血を垂れ流したまま急いで外に飛び出す。
あー、恥ずかしすぎて死にたい……
あまりいないとは思いますが少しでも気に入った、続きが気になるという方がいらっしゃいましたら励みになりますのでブックマーク、評価をお願いします。




