第48話 入国
馬車を降りるとすぐに見上げるのが困難なほどの高い城壁が俺達を出迎える。ここはウィンディラと違って街の周りも強固な城壁で囲まれており、街全体が巨大な要塞といった感じだ。
エリナもミラーナは初めてらしく、馬車を降りてから終始、はしゃぎっぱなしで少々騒がしい。
先に見える入国ゲートには様々な人種の老若男女が今か今かと順番待ちの列を成している。
俺はギルドカードを持っていなかったのでエリナとは別の列に並ぶ。エリナの列は皆スムーズに入国しているのにもかかわらず、こちらの列はというと順番は進んでいくものの誰も入国できていない。
どういうことだろう?
入国審査はそんなに厳しいのか? みんな紙切れを持って帰っていくけど、俺は大丈夫だろうか……
「次の方どうぞ〜」
入国管理者の女性に自分の順番を呼ばれ一気に緊張が高まる。彼女は、キャリアウーマン風の三十代くらいの女性で綺麗にアップにされた髪と黒ぶちの眼鏡がいかにも仕事出来ますよ感を漂わせている。
「それでは身分証をお願いします」
俺はウィンディラを出る時にロイドが越境の為にと発行してくれた紙の身分証を提示した。一応、ウィンディラの警備兵という肩書きになっている。さすがロイド、仕事ができる。
「ウィンディラ国の警備兵ということでよろしいでしょうか?」
「はい、そうです」
「では、こちらが正式にウィンディラ国から発行されたものか調べますのでこちらの整理券を持って二日後にあちらの列にお並びください」
「次の方どうぞ〜」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。今日は入れないんですか?」
「申し訳ありません。紙の身分証は偽造されている可能性もありますのでしっかりと調査させていただいております。ギルドカードでしたら偽造、複製などができないのですぐに入国できるのですが……」
「この書類が本物ってことを証明できたらいいんですよね? ちょっと待ってくださいね」
俺はゲートの向こう側にいたエリナを見つけ、手を振ると、エリナは溜め息をつきながら少し呆れた様子でこちらに来てくれた。
「悪いけどエリナ、これがウィンディラの書類ってことを証明してくれない?」
エリナは書類を受け取り、目を通すと入国管理者に毅然とした態度で説明をしてくれた。
「彼は私の警護の為に同伴している者で、この書類もウィンディラ国の物に間違いございません。どうか彼に入国の許可を与えていただけませんか?」
女性は二回、黙って横に首を振る。
「彼とはどのようなご関係でしょうか? まずはあなたの身分証をお願いします。話はそれからです」
エリナを真っ直ぐ見つめると、掛けている眼鏡を一度、クイっと上げて問い返す。
エリナは自分のカードを提示すると女性はすぐにカードを厳しい表情で確認した。
「ウィンディラ国・第一皇女、エリナ・ウィンディラ……」
「こ、これは大変失礼いたしました」
「わかっていただけたかしら?」
「もちろんでございます。どうぞ警護の方、お通りください!」
やっぱりギルドカードの力ってすごいな……
偽造や複製が出来ないみたいだし、きっと信用度が違うんだ。
「ありがとう、エリナ。助かったよ」
「仕方ないわよ。街の治安を守る為だから、どこの国でもあんな感じ。特にここみたいな大きな国はかなり厳しくしてるわ」
俺達はゲートを抜けた先の広場にあるベンチに、とりあえず腰を下ろして今からの予定を話し合った。
「さて、無事に入国できたし、さっさと用事を済ませましょう」
「そうだね。俺はギルドで登録を済ませてくるよ。またさっきみたいな面倒なことになりたくないし」
「わかったわ。私は街をブラブラしながら今夜泊まる所を探しておくわね」
「うーん、そうね〜、あそこに時計台が見えるでしょ? 今は二時だから、あの下に七時に待ち合わせしましょっ」
「了解〜。じゃ、七時に〜」
エリナと別れると俺は早速ギルド探しを開始した。
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