第47話 レースと膝枕
カッサータの街を出て十日が経ち、今は、ミラーナの国境付近の小さな村でエリナと昼食を取っている。この村では鹿や猪などを使った肉料理が有名らしくジビエ料理好きの俺にとっては旅の楽しみの一つにしていた場所だ。
「カナデはミラーナで何をするつもりなの?」
「とりあえずはギルドでクラス登録してから人探しをする予定〜」
「ふーん、人探しって誰を探すの?」
俺はエリナにカッサータに行くまでに出会ったミリアの話をし、アンネロッテという魔術師に魔力解放をしてもらうつもりだと答えた。
「魔力解放ならその辺の魔術師に頼めばいいじゃない?」
「話を聞いてた? それが出来なかったからアンネロッテさんを探すんじゃないかっ」
「なんか、そのミリアって人に騙されてない? そもそもカナデのご両親て魔術師でもなんでもないんでしょ? 本当にそんな魔力があるなんて信じられない」
「それに、カナデは魔法が使えなくても剣だけでやっていけるんじゃない?」
「そうかもしれないけど。この先、何があるか分からないから使えるにこしたことないし」
「たしかに、それはそうね。ところで背負ってる布に巻かれてる物って新しい剣よね? ちょっと見せてよ」
「これはダメ。大事な物だから」
「少しならいいでしょ。ケチね。いいわ、後で勝手に見るから」
こうなったエリナは手がつけられない。俺は渋々、剣を見せることにした。
「わかったよ。見せるけど絶対に触らないでよっ」
俺は剣から巻いてある布を取ると静かにテーブルの上に置く。
「この剣っ! お父様の剣じゃない! まさか盗んできたのっ!」
「ち、違うよ! 盗んでない、盗んでないから! 国王様に渡されたんだよ」
「嘘つかないでよっ! お父様がそんな大事な剣を渡すわけないじゃないっ! 私だって触ることを禁じられているのに!」
だから見せたくなかったんだよ……
予想通りの反応に必死に弁解をし、事の経緯を説明するとようやく理解してもらえた。
それでもまだ、エリナは腑に落ちないといった様子で飲み終えたグラスの氷をストローでつついている。
とにかく話題を変えよう……
「そんなに人探しは急いでないし、まずはギルドでするクラス登録のこと教えてよ」
「しょうがないわねー。わかったわ」
「エリナ先輩!お願いします!」
「冒険者でクラスカードを持って無いとか剣を持たずに旅に出るようなものよ。クラスカードはね、もちろん身分証なんだけど、これが無いとギルドでは依頼を受けれなし、入国審査も厳しくなるわ。あと便利なのはクラス登録すると支給されるアイテムバッグかしら」
「何それ??」
エリナは肩に掛けていた特に何の変哲もない鞄を指差し、中から適当に物を取り出して見せてくれた。
ヘアブラシ、靴、非常食、帽子、薬、地図、まだまだ出てくる。
「へー、かなりの量でも入るんだな」
「うん。これには空間魔法がかかってるから家一軒分ぐらいの荷物なら余裕よ。それに重さも感じないし個別に保管されるからモンスターの素材なんかを入れても汚れたりしないんだから」
「それすごく便利だね。それはそうと早く荷物をしまったほうがいいよ」
「なによ、急に?」
「えっ、やだっ!」
エリナは俺が気まずそうに目線をそらしたことで、ようやく気づいたみたいだ。
「ちょっと! 勝手に見ないでよ! 変態っ!」
「自分が出したんじゃないかっ」
「もういいわ。じゃ、お会計よろしくね」
エリナはこちらを睨みつけながら急いで荷物をしまうと席を立ち上がり店から先に出て行ってしまった。
「おいっ、待てよっ」
すぐに俺も二人分の食事の支払いを済ませ店を出る。
それにしてもレースの可愛いらしい柄とかを穿くんだ……
馬車の乗り場に戻るとちょうど出発の時間前だったので、そのまま馬車に乗り込んだ。
次はいよいよミラーナの首都ミランに到着する。期待に胸を膨らませながらウィンドウを開いて街の情報をいろいろと調べてみた。
「さっきから何してるの? よく見るその空中を指でなぞる仕草がいつも気になってたんだけど」
「あっ、これ? 昔からのクセなんだよ。気にしないで、気にしないで」
「ふーん、そう」
ウィンドウは俺にしか見えないから周りからはきっと変な奴だと思われてるんだな。一人の時にするか……
うーん、やることないし到着まで少し寝ようかな。
目を閉じると食事の後だったということもあり、眠りにつくまでにそれほど時間を要さなかった。
・・・・・・
「着いたわ。起きなさいよ」
エリナの声で目を覚ますとなぜか膝枕をされている。どうやら寝てる間にもたれかかってしまったみたいだ。
「ごめんっ。これは不可抗力というか何というか……」
また怒られると思い慌てて謝罪する。
「別にいいわよ。気持ち良さそうに寝てたから、起こすのは可哀想だと思っただけ」
「へー、意外と優しいんだ」
「なによっ、意外は余計じゃない? 私はいつだって優しいわよ。なんたって私の半分は優しさでできてるんだから」
どっかで聞いたことあるセリフだな……
「とにかく早く降りて入国審査の列に並びましょ。モタモタしてたら日が暮れちゃうわっ」
「うん、そうだね。わかった」
馬車から降りるとエリナの後について入国審査の列へと向かった。
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