第44話 その男、マルコ・ボローニャ
ミリアの屋敷から出ると来た道を少し早歩きで引き返す。途中で何度か道に迷ったが、なんとか日が暮れる前に宿屋街に到着することができた。通りには何軒かの宿があったがとりあえず一番安そうな宿に入る。
俺はフロントで料金を払い、案内された二階の扉を開けると、部屋の中にはベッドが一つと小さな机と椅子があるだけの本当に寝るだけの部屋だった。
もうこんな時間か。
ウィンドウを開くと夕方の五時を回っていた。
さて、腹も減ったし何か食べに行こうかな……
屋敷を出た時には明るかった空もすっかり暗くなり、窓から見える街並にもポツポツと明かりが灯り始めている。
宿を出た俺は、ぱっと見、明るくて人が多そうな歓楽街の方向へ歩き出す。そして適当に目に入った食堂で食事を済ませ再び散策を続けた。
飲食街を抜けてさらに奥へ進むと急に空気がガラリと変わり、客引きの男や娼婦達が道端に等間隔で通る者に手招きをしている。
入ってみたいけどぼったくられたら嫌だしなぁ。
今回は偵察だけにしとこうかな……
キョロキョロと挙動不審な俺に一人の中年の男が話しかけてきた。
「お兄さん、どうだい? いい品が揃ってるよ」
いい品? 武器屋か何かかな?
「掘り出し物や探し物もきっと見つかるよ」
おっ、面白そうだな。ちょっと行ってみるか。
「じゃあ、ちょっとだけ」
「毎度あり。さぁ、こっちこっち」
俺は見るからに怪しいチョビ髭中年男に連れられて細い路地先の小さな店に入った。店内は明かりが一つあるだけで薄暗く、ガランとしている。男は奥にある扉を開けると俺を呼び寄せた。狭い階段を男について十段ほど降りると全面がピンク色の壁の広い部屋にたどり着いた。そこは、規則正しく棚が配置してあり、まるで図書館のような場所だった。
「ようこそ、マルコの魔映板専門店へ! いらっしゃいませ! 申し遅れました、わたくし、オーナーのマルコ・ボローニャです」
「魔映板?? て何ですか??」
「もう、わかってるくせにー、男の長旅には必要なアイテムでしょ?」
あー、つまり元の世界でいうエロDVDの店か。武器屋だと思ってついてきたのに。
「おや? お嫌いでしたか?」
「いや、嫌いじゃないです。むしろ好きなほうです」
「そうですか、そうですか。それはよかった。ここでは世界中のありとあらゆる魔映板を取り揃えております。もちろん世界中にある支店からお取り寄せもできますので気軽にお申し付けください」
なるほど、この世界の文化に触れるのも勉強のうちだな。
そう、これは勉強。
俺は興味津々でマルコの話に耳を傾ける。聞くところによると、この男は世界中を渡り歩いて様々な魔映板を集めて販売しているらしい。兎にも角にもエロに対する情熱がとんでもなかった。
「ところで気になっていたんですが、あの部屋の真ん中にあるものは何ですか?」
実は部屋に入った時から一際目立つ身の丈ほどの謎の物体が気になっていたのだ。
「よくぞ聞いてくれましたっ! あれこそ私が十年の歳月を費やして開発した魔映板検索機、その名もスーパー見つける君であります。初代の見つける君から改良に改良を重ねた自信作で、この中には私が集めた魔映板のありとあらゆるデータが入っておりますので、お客様のどんなご要望ににも必ずお応えできますよ」
「へー、どんなものでも絶対に見つかるんですか?」
俺は半信半疑でマルコに問いかけた。
「じゃあ、こうしましょう。もし、お兄さんの希望した品が見つからなかった場合はこの店にあるお好きなものを一つ差し上げましょう。見つかった場合はその品をお買い上げいただくということでどうでしょうか?」
「面白そうですね。やりましょう。俺もそっち系には結構うるさいですよ」
「おっ、勝負するようですね? 言っておきますがスーパー見つける君になってからの私は負け知らずですから覚悟しておいて下さい」
不敵な笑みを浮かべながら準備を始め出した彼の目は自信に満ち溢れていた。
「では始めましょう。まずはこちらの紙に種族や外見、コスチュームなどなどを好きなようにお書き下さい」
俺は熟考した後に事細かく希望を書いた紙をマルコに手渡した。
「ふむふむ、種族はエルフですね? 昔はエルフ物はほとんど出回ってなかったのですが最近になってやっと数が出てきたんですよぉ」
ケモ耳とも迷ったんだけどここはやっぱり王道のエルフだよな……
「えーと、次は身長はやや低めでツンデレ妹系。コスチュームはメイド服のツインテール、それから胸は左右が離れて外に開いている釣鐘型の巨乳ですね。よし入力完了しましたので結果を待ちましょう」
はたして本当に見つかるのかな?
胸の設定とかだいぶ細かくしたけど。
「もしかしてお兄さん、見つかるわけないと思ってます? 安心して下さいっ! 見つかりますよっ!」
俺の不安をよそに彼の目は依然として自信に満ちたままだった。
ピロロンッッ
「どうやら結果が出たようです。ふふふ、この勝負、私の勝ちみたいです。しかし該当が一件とは私もまだまだでしたね。ではこちらをご確認ください」
マルコに言われるがままに画面に目を向けるとそこには一件だけだがしっかりと表示されている。
どれどれタイトルは……
『エルフの森の妹系メイド喫茶! 新装開店! 離乳アルオープン!』
タイトルだけなら文句なしだが肝心の中身はどうなんだろう。
「早速、取り寄せてみますね。見つける君には転移術式も組み込まれいるので各支店からすぐに商品を手に入れられますよ」
おいおい、見つける君ハンパねーな……
「おっ、届きましたよ。もしよければ少し視聴しますか?」
「是非、見たいです」
「では、右下の丸い出っ張りを押してみてください」
期待に胸を膨らませながら丸い出っ張りを押すとそこに映し出されたのは何も無い空にただ気球が浮いてるだけの映像。よく眼科で見るやつ。
俺は騙されたと思い、すぐさまマルコに詰め寄った。
「ご安心下さい。これはカモフラージュ映像で誰かが間違って押しても大丈夫なようにしてあります。しばらくすると本編が始まりますよ」
言われたとおりに待ってみると急に映像が暗くなり本編が流れ出す。視聴をほどほどに切り上げた俺は無言のままマルコに近づき、ガッチリと握手を交わし疑ってしまったことを詫びた。
「ご満足いただけましたか?」
マルコの言葉に何度も首を縦に振る。
「それはよかったです。もしよかったらこちらもご利用ください。うちの系列の娼館のサービス券です。期限もありません。またどの国でも使えますよ」
「ありがとうございます。本当に見つける君はすごかったですよ。また機会があれば利用させてもらいます」
店の外まで見送ってくれたマルコに別れを告げると、続きを早く見ようと宿までの道を急いだ。
あまりいないとは思いますが少しでも気に入った、続きが気になるという方がいらっしゃいましたら励みになりますのでブックマーク、評価をお願いします。




