第41話 いざミラーナへ~3
ロイドと別れた俺は次の街のカッサータ行きの馬車に乗り込んだ。
ロイドからは旅の路銀をある程度はもらったけど早めにミラーナで冒険者登録して仕事もしないとなぁ……
おっ、そろそろ出発かな?
これからやるべき事を考えるているといつの間にか御者が手綱を握っていた。
「それでは出発いたします。途中の村で2回休憩を挟んで夕方にはカッサータの街に到着します」
御者の声と共にゆっくりと馬車が進み出した。馬車には俺の他に老夫婦と大きな荷物を手にした行商らしき男、隣にはボロボロの黒いローブを纏った小柄な老婆と若い女性が乗っている。
「お前さん、これからどこに行くんだい?」
おもむろに老婆が話しかけてきた。
「ちょっと、おばあちゃん、静かにしてて。急にすみません」
申し訳なさそうに頭を下げた隣の女性はどうやら孫のようだ。
「いえ、気にしないでください。俺はミラーナまで行きます」
「冒険者さんなんですか??」
「ええ、まぁ、そんなところです。あははは」
「どちらまでですか?」
「私たちは次のカッサータまでです。ウィンディラから北に行った街で一人暮らしをしていた祖母を迎えに行って、帰ってきてる途中です」
「老人の一人暮らしは心配ですよね。おばあちゃん良かったですね」
「どいつもこいつもワシを年寄り扱いしよってからにっ!」
「カッサータに着いたら嫁にイビられながら余生を過ごすなんて耐えられんわっ!」
「もう、おばあちゃん、お母さんはそんなことしないわよ」
「そんなのは嘘じゃ! 隣のばあさんも言っとったわ。嫁にスリッパに画鋲を入れられたって」
「だから、おばあちゃん、それは隣のおばあちゃんが、お嫁さんのスリッパに画鋲を入れたのを忘れて自分で履いちゃったんでしょ。もう、何回も同じ話をするんだからぁ」
どこの世界でも嫁、姑の問題はあるんだな……
「こう見えても、おばあちゃんは昔、ミラーナで魔法学校の先生だったのよ。でも早くに身体を悪くして引退しちゃったけどね」
「そうなんですね。ちょうど俺もミラーナで魔法を学びたいと思ってたんですよ。あっ、申し遅れました。俺、カナデっていいます」
「私はクラリスです。それからミリアおばあちゃん。短い間だけどよろしくね、カナデさん」
「こちらこそよろしくです」
クラリスは愛想よく受け答えしてくれるが、ミリアは相変わらず不機嫌な顔で黙り込んでいる。
ここは一つ、魔法の話でも振って機嫌を窺うか……
「あの、ミリアさん。俺、魔法を使えるようになりたいんですけど、どうしたらいいんですか? コツとかありましたら是非教えてください!」
するとミリアは黙って右手を差し出したがそれが何を意味するのか俺には全く理解出来なかった。
「ほれ、早く出さんか。銀貨三枚」
「お、お金取るんですかっ!?」
「もう、ちょっと、おばあちゃんたら」
「けっ、金も払わずに教えてもらおうなんて甘いわ。隣のばあさんが言っとたわい。年寄りを最後に守ってくれるのは金だけだと。嫌なら別にワシはかまわんよ」
「わかりました、わかりました。払います、払います」
俺は渋々、ミリアに銀貨三枚を手渡すとそそくさと自分のポケットにしまいこんだ。
「毎度あり。で、お前さんは、魔力解放はしてるのかい?」
「魔力解放?? いえ、してないです。なんですかそれは?」
「何も知らんのか。魔力解放とは一定以上の魔力を持つ者を魔法を使えるようにすることじゃ。そもそも魔術士の家系でもなければ魔力解放できるほどの魔力は持っておらんわ。魔蓄石を作動させるぐらいの魔力は全ての人間が持ち合わせておるから魔力解放できなくても生活には困らんよ。ところで、お前さんは魔術士の家系か?」
「ち、違います。父親は普通のサラリーマンで母親は専業主婦でした」
「サラリーマン? 聞いたことないクラスじゃな。とにかく魔術士の家系でもなければ魔法は使えんよ。まったく、無知にもほどがあるわい」
ミリアは俺が魔術士の家系ではないと聞くと呆れた様子で早々に話を切り上げてしまった。魔力は最大値までポイントを振ってあるし魔力解放さえしてもらえば、きっと使えるに違いない。
「あのー、試しに魔力解放してもらえませんか? ちゃんとお金も払いますから」
「無駄だと言っておるだろ。まぁ、やるだけやってやってもいいが、銀貨十枚な。魔力解放は、ちと疲れるからな、年寄りには堪えるわい」
さっきは年寄り扱いしたら怒ったくせに……
「わかりました。お願いします」
「とりあえずカッサータに着いたらやってやろう。先に言っておくが失敗しても金は返さんからな!」
「大丈夫です。着いたらよろしくお願いします」
「カナデさん、本当にいいの? お金を捨てるようなものよ」
クラリスは心配そうにこちらを見ている。
「クラリスさん、そんなに心配しないでください。解放できたらラッキーぐらいで考えてますから」
「そうですか、カナデさんがいいとおっしゃるならいいのですが」
クラリスの心配をよそに俺はカッサータに到着するのを今か今かと待ち望んでいた。




