第39話 いざミラーナへ~1
「カナデ様おはようございます」
ロイドの声で俺は目を覚ました。
「おはようございます。ロイドさん」
「お食事をこちらに置いておきます。準備ができましたら執務室においでくださいませ。国王様のもとに案内いたします」
「分かりました。後で伺います」
俺はロイドが退室した後、シャワー浴びて朝食を口にした。朝食を食べ終え、身支度を整えるとロイドの待つ執務室を訪ねる。
「ロイドさん、お待たせしました」
「いえいえ、では参りましょうか」
ロイドの先導でそのまま国王ジークの部屋に向かった。
「陛下、カナデ様をお連れいたしました」
「入りなさい」
扉を押し開けて中に入るとジークとアイラは席を立ち俺を手厚く迎え入れてくれた。
「カナデ殿、この度の働き本当に感謝する。アイラと共に今一度、礼を言わせてほしい。本当に本当にありがとう」
ジークに何度も何度も丁寧に頭を下げられる。
「や、やめてください。こちらこそ長い間お世話になりました。ありがとうございます」
「そうだカナデ殿、新しい剣を探していると聞いたのだが……」
「はい、師匠からもらった剣も折れてしまったのでミラーナで何かいい物があればと思っています」
「そうか、そうか。しかし、ミラーナまで行くのに丸腰では不安であろう?」
「え、まぁ、そう言われるとそうですけど、よほどのことが無い限りは大丈夫だと思います。師匠からは体術も仕込まれたので」
「カナデ殿、この度の礼としてこの剣を持って行きなさい」
ジークはおもむろに立ち上がり壁に飾ってある剣を手に取ると、こちらに差し出してくる。
「いえいえ、そんな貴重な物をいただけません」
「いいから手に取ってみなさい」
「あ、あなたっ!!」
「へ、陛下、お戯れが過ぎますぞっ!!」
アイラもロイドも必死に止めようとしたがジークはそれでもなお俺に剣を手渡そうとする。
そんなにやばい剣なのだろうか?
あまりにもアイラとロイドが必死になるので一抹の不安はあったが、とりあえず剣を受け取って観察してみる。
それは一目でとんでもない代物ということが誰にでも簡単に判断できた。
鞘には隅々まで丁寧な細工が幾重にも施してあり、持ち手には綺麗なエメラルドグリーンの宝石にこの国の紋章であろう模様が彫られたものが埋められている。
「やっぱりこんな高価な剣はいただけませんっ」
鞘から剣を抜くこともせずにジークに剣を手渡そうとしたが三人とも黙ったまま呆然としている。
「あのー」
俺は呆然としている三人に何度も呼びかけた。
「すまん、すまん。ではこうしよう。カナデ殿の旅が終わるまで預けるのはどうだろう?旅の終わりに返してくれれば良いぞ」
ジークは何度か呼びかけたのちに、ようやく口を開く。
「承知いたしました。ではお預かりいたします。旅が終わり次第、必ずお返しに参ります」
俺は、折角のジークの申し出を断り続けるのも顔を潰すことになって申し訳ないと思い、一旦預かることにした。
「カナデ殿、一つ約束してほしい。その剣を絶対に誰にも触らせてはならぬぞ。不用意に触ると命を落とすやもしれないからな」
「え!! は、は、はい肝に銘じておきます」
これって、そんな危険なものなのか?
もしかして呪いの武器とか……
ま、まさかなぁ
なんか怖いしやっぱり返そうかなぁ……
でもなぁ、今さら返せないし。
まぁ考えても仕方ないからとりあえず持っていくか。
「よし、それではそろそろ失礼いたします。みなさんお元気で」
俺は受け取った剣を背中に背負い二人に頭を下げて部屋を出ようとした。
「カナデさん、私からも一つだけお願いをよろしいですか?」
部屋から出ようとしたところをアイラに呼び止められる。
「はい、何でしょうか?」
「これからもエリナのことをよろしく頼むわ」
「あっ、はい、心に留めておきます」
「ありがとう。お願いね。それでは旅の無事を祈っています」
「ありがとうございます。行ってまいります」
俺はロイドと共に国王の部屋をあとにした。
「それにしてもあなた、随分思い切ったことしたわね? 現国王と洗礼を受けた次期国王にしか触れることのできないシルフィードを触らせるなんて」
「精霊様のお怒りに触れてカナデさんに万が一のことがあったらどうするつもりだったのよっ」
「いやぁ、それはだなぁ、カナデ殿ならもしかしてと思ってだな」
「と、とにかく何事も無くてよかったではないか」
「それにしてもウィンディラ家の血を継ぐエリナでも触れることすらできない剣をいとも容易く手に取るとは……」
「彼は何者なのだ?」
「でも何者か分からない人によくあんな大事な剣を渡したわね。つまりそれってエリナのお婿さんとして認めたってことかしら?」
「そ、それとこれとは話は別だろう。わ、わしはただ彼ならあの剣の力を正しく使ってくれると思ったからであって、こ、婚約者として認めたわけでは、な、な、無いぞ」
「そんな強がりばっか言っちゃて、動揺してるのバレバレよ」
「そんなことよりアイラこそどうなんだ? エリナの婚約者としての彼は?」
「私? 私はカナデさんならいつでもウェルカムよ。強くて、優しいし、きっとエリナを大事にしてくれると思うわ」
「しかしながらカナデ殿が次にエリナに会う日がいつになることやら。何年後か、はたまた何十年後か」
「あら、あなたは何もわかってないんだからっ」
「ん? おいっ、それはどういう意味なんだ?」
「そのうち分かるわよっ」
ロイドの馬車で師匠のところに向かってる俺は二人がこんな話をしてるとは思いもよらなかった。
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