第37話 出発前日~1
目が覚めてから一週間が経とうとしている。相変わらず平和で穏やかな時間が流れ、窓を開けると暖かい風と鳥の囀りがとても心地よい。
昼食の後はリハビリを兼ねて庭を散歩するのが今の日課だ。
初めは杖をついていたがアイラの治癒魔法のおかげもあり、三日目には歩けるぐらいにはなった。流石、魔族に狙われるほどの術士といったところだろうか。
今後の戦闘を有利にする為にも自分も魔法を使えることが必須事項だ。当面の目標は武器を手に入れることと魔法を使えるようにすることだ。
俺はいつものように散歩途中の中庭のテーブルで休憩しながらこの先のことをぼんやりと考えていた。
「カナデさん、ご機嫌いかがかしら?」
振り返るとアイラとお付きのメイドが立っていたので立ち上がって軽く会釈をする。
「いいから座って、座って」
「はい、では失礼します」
「少しお茶に付き合っていただけないかしら?」
「お、俺でよろしければ喜んで」
アイラは俺の答えに微笑み返し、メイドにお茶の指示をした。
「お身体はどう?」
「おかげさまでだいぶ良くなりました」
「それはよかったわ。では、また旅に出られてしまうのね?」
「はい、そのつもりです」
「そうですか。寂しくなるわ。カナデさんさえよろしければいつまでもいていいのよ」
「お心遣い感謝いたします。でもいつまでもここで甘えてるわけにもいきませんので明日には立とうと思っています」
「次はどこに向かうのかしら?」
「まだ決めてないのですが、とりあえず武器の獲得と魔法を勉強をできるところを探しています」
「それならミラーナに行くといいわ。とても大きな軍事国家よ。首都ミランには国立の魔法学校もあって術士も多いから魔法の知識も得られるはずよ」
おっ、異世界定番の魔法学校キター!!
「あの魔法学校って誰でも入れるんですか?」
「入れることは入れますが、三年間の学費で大きなお屋敷が五軒は建てれるわ」
「それって、つまりめちゃくちゃお金持ちしか入れないわけですね?」
「そうですね、王族や大商人の子がほとんどです」
「そうなんですね、それは残念です」
俺は、それを聞いて一気にテンションが下がってしまう。
「あっ、でも一応、試験はものすごく難しいけど特待生制度もあるからダメもとで挑戦してみるのもいいかも」
「どんな試験なんですか?」
「魔法の基礎知識と実技はもちろんのこと、自身の魔力量が基準を満たしている必要があるわ。知識と実技は訓練でなんとかなっても魔力量は生まれ持った才能だし、なかなか合格者は出ないわ」
「やっぱり街にいる術士に直接教わるのが一番の近道かしら。学校の教員を引退した人が魔法教室を開いていたりもするから初歩的な魔法なら教えてもらえるけどほとんどが生活魔法ね」
「ちなみに攻撃魔法、回復魔法は魔術士の家系じゃないと魔力量の関係上使えないわ。ごく稀に普通の家系の人でも使えることがあるみたい」
「えっ、じゃあ俺は魔法使えないってことですか?」
「うーん、それはカナデさんの魔力量次第だけど厳しいかも…… そうだ、ちょっと待ってくださいね」
アイラはメイドに何やら持って来るように頼むと、メイドはA4サイズの石板のようなものを持って来た。石板の中央には拳ぐらいの石とその周りに六つの小さくて綺麗な石が埋められている。
「これは魔力量や得意な属性を見ることができます。簡易的なものですがある程度は参考になるかもしれませんよ」
「ではまずは属性を見てみましょうか、真ん中に手を置くと周りの小さな石が光りますのでそれがカナデさんの属性です」
「光らないこともあるんですか?」
「安心してください。どんな人間でも魔力はゼロではないので火、水、風、土のどれかが必ず光ります。ごく稀に、二つ光ることもありますが大抵は一つだけです。あとの二つは光と闇ですがこれは特別な家系の人間しか使えませんのでおそらくは光りません」
「ものは試しです。早速やってみましょう」
俺はアイラに言われたとおり石板の中央に手を置くと六つのすべて石が光り出した。
「おかしいわね、壊れてるのかしら? 一度、私がやってみますね」
アイラが手を置くとエメラルドグリーンの石が光り出した。
「あれ? 私の風属性の石がちゃんと光りましたね」
アイラは困った様子で首を傾げる。
「じゃあ次は魔力量を見てみましょうか? もう一度、中央に手を置いて下さい。強く光れば光るほど魔力が強いことを表します」
俺はもう一度、手をかざす。すると目を開けていられないほどに眩しく輝き、石板は真っ二つに割れてしまった。突然の出来事にお互いしばらく呆然としてしまう。
「す、すみません。なんかやり方が間違ったのか大事なものを壊してしまって」
「あっ、うん、い、いいのよ。きっとしばらく使っていなかったから壊れていたのね。気にしないで……」
「……」
しばらく二人とも沈黙が続く。
「アイラ様ぁ! こちらにいらっしゃいましたかぁ! お客様がお見えになっております」
ロイドが少し離れたところでこちらに向かって呼びかけている。
「はーい! すぐ行きますね」
「ごめんなさい、カナデさん、ちょっと行ってくるわね。石板のことは気にしなくても大丈夫ですから。それではまたね」
ふー、助かった。ホント気まずかったなぁ。
「カナデ様、顔色が悪いようですが、どうかされましたか?」
何かを察してかロイドが話しかけてくる。やはり、この男は何かにつけて鋭い。
「いやぁ、この石板を壊してしまって気まずい雰囲気になっていたんですよ。ロイドさんが来てくれて助かりました」
「そうでしたか、これはかなり昔のものですからね。形あるものいつかは壊れますよ。そうお気になさらずに」
ロイドは笑いながら優しくフォローしてくれる。
「ありがとうございます。そうだ、ロイドさん、明日ここを立とうと思っています」
「左様でございますか。カナデ様には命を助けて頂いた上に国のことで大変ご迷惑をおかけいたしました」
「とんでもないです。こちらこそ見ず知らずの俺に良くしていただいて感謝しかないです」
俺たちは互いに何度も頭を下げあった。
「ところでロイドさん。ミラーナに行きたいので行き方を教えてほしいんですが」
「かしこまりました。それでは夕食をお持ちした際にお教えいたしましょう」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「では私も仕事に戻ります。それではのちほど」
ロイドは軽く一礼して城へ戻って行った。
俺もロイドを見送って自室へ戻ることにした。
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