第34話 決戦ナイトメア〜6
ナイトメアは未だに攻撃をしてくる気配がない。辺りは静まり返り、今まで気にならなかった木々の騒めきがうるさいほどに良く聞こえる。
一体何をしてくるんだ……
何が起こるか分からないという恐怖が全身を駆け巡っていくのがハッキリとわかる。
考えても仕方ない。
何かやられる前にこちらから仕掛けたほうがいいかも。
俺は、剣を握り直し、先に攻撃を仕掛ける。
「そう焦るな」
ナイトメアは、俺の攻撃を左手だけで簡単にいなす。
「そんな力任せの大振りが当たるわけなかろう」
何をされるか分からない焦りからか雑な攻撃を繰り返す。
しかし、そんな攻撃にもかかわらず勢いに押されてかナイトメアは体勢を崩し後退りをした。
「今だっ!」
俺は大きく剣を振り上げる。
「ククク、こんなつまらないフェイントにかかるとはな」
まさか、誘い込む為にわざと……
次の瞬間、ナイトメアはガラ空きになっている俺の腹に強烈な蹴撃を放った。後ろに大きく吹っ飛ばされた俺は、転がりながらもなんとか受け身をとって立ち上がるが、たまらずその場で嘔吐した。
俺の動きが止まるのを待ってましたと言わんばかりにナイトメアは右手の剣を勢いよく突き出した。
「くたばれっ、小僧!! ヘルズゲートォォォォ!!」
剣先が光ったと思った途端に邪悪な魔力が渦を巻いて、まるでレーザー光線の様にこちらに迫ってくる。
ダメだ!! 回避が間に合わない!!
「ウォォォー!!」
回避できないと悟った俺は、ありったけの闘気を剣に込めて、迫ってくる攻撃を弾こうと試みた。
しかし満身創痍の俺の剣でそんなことは出来るはずもなく、今までにない凄まじい衝撃が全身を貫いた。
あぁ、ここで死ぬのか。
エリナ、約束を守れなくてごめん……
俺は仰向けに倒れてそのまま意識を失った。
「カナデェェーー!」
エリナが俺の元に駆け寄り抱き起こす。
「しっかりしなさいよっ!」
エリナは大粒の涙をボロボロ溢しながら激しく俺の体を揺する。
「無駄だ。あれをまともにくらって生きてるはずなかろう。心配しなくてもお前も直ぐに送ってやるからあの世でよろしくやるんだな」
ナイトメアは一歩一歩こちらに近づいてくる。
「うぅぅ、うぅ、冷たっ!」
目が覚めた俺の顔はエリナの涙で顔を洗った後の様になっていた。
「よかったぁ! 生きてたのねっ!」
エリナは安堵の表情を浮かべる。
「まぁ、なんとかね。俺もダメかと思ったけど」
俺は、エリナの肩を借りてゆっくり立ち上がる。
「馬鹿なっ! 確かに直撃したはず!」
ナイトメアは最初は取り乱していたが俺の傷跡を見るとすぐに冷静さを取り戻した。
「なるほど、その傷からすると剣で軌道が変化したところを上半身をそらして致命傷を免れたわけか」
「ククッ、つくづく楽しませてくれる奴よ」
ナイトメアの言うとおり俺の上半身は胸から左肩にかけて身が少しえぐれて溝が出来ていた。それでもアドレナリンのスキルのおかげで痛みはそれほど感じなかった。
「さぁ、続きを始めようか」
俺はナイトメアに向けて剣を構える。しかし何か違和感を感じる。
「小僧、自分の剣をよく見るんだな。その剣でどうするんだ?」
嘘だろ……
言われた通りに目を向けると握っている剣は、刀身の中ほどから折れて刃先は無くなっていた。戦いの中で耐久力が落ちてしまい、あの攻撃に耐えられなかったのだろう。
それでも折れる寸前まで俺を守ってくれたのだ。
「どうした? 腰に差している剣を抜かんのか?」
どうする……
腰に差している修行に使ってた剣では数回打ち合ったらすぐに折れてしまうだろう。
「これを使いなさいよ」
エリナは自分の差していた剣を抜いて俺に手渡した。
「この剣は大事な物なんだろ?」
「めちゃくちゃ大事に決まってるじゃない!!」
「でもあなたが負けたらどのみち皆ここで死んじゃうし、なりふりかまってられないわ。これを使って早く倒してきなさいよね」
「あっ、でもあなたは精霊の守護者の血族じゃないから加護は受けられないわよ」
「ありがとう。大丈夫、加護がなくてもなんとかしてみせるよ」
エリナから剣を受け取ると、再びナイトメアのもとに歩きだした。
「フフフ、別れの挨拶は済んだのか?」
「待たせて悪かったなっ」
俺は呼吸を整え、ゆっくりと両手で剣を握る。
すると全身が温かくて心地よい風に包まれた。
・・・『武器固有スキルを発動します』
・・・『オートヒールモードを発動』
・・・『風の障壁を発動』
・・・『風の翼を発動』
・・・『体力を徐々に回復します』
・・・『風のバリアを展開します』
・・・『敏捷性が上昇します』
え!? 加護は受けれないんじゃないのか?
エリナも驚きを隠せない表情でこちらを見ている。
とにかく精霊様も味方してくれるってことだなっ。
暗くなると戦いにくくなるし、なんとか完全に日が落ちる前に勝負を決めなくては……
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