第33話 決戦ナイトメア〜5
アドレナリンで身体能力が上がったおかげで、さっきよりだいぶ戦いやすい。回避がしやすくなった為、攻撃できる機会も増えてきた。
やはり大剣よりもこちらの剣の方がスピードは少しだけ勝っているようだ。
しかしながら、その攻撃も鎧を傷つける程度で致命傷になるようなダメージは未だに与えられていない。
「ちょこまかと逃げ足だけは一人前だな」
ナイトメアに若干の苛立ちの様子が窺える。
「鬼ごっこは昔から得意なんでね〜」
「そうか、いいだろう。それなら本当の鬼の恐ろしさを見せてくれるわ」
ナイトメアは目の前で大剣を構えて力を込め始めた。すると剣先から二つに裂けていき、一本の剣から二本の剣が出来上がった。
「に、二刀流!?」
師匠〜 聞いてないですって……
二刀流の相手の戦いなんて教わってないのに。
「まさか人間相手に、それもこんなガキにこの剣を見せることになるとはな。人間にしては、なかなか楽しませてくれるではないか」
「よし、褒美としてお前にチャンスをやろう。これから私に片膝でもつかせたら、女の体は元に戻してここから立ち去ってやる。無論、この国にも今後、手出しはしない」
「随分と気前がいいな?」
「ククク、今日は久しぶりのいい準備運動が出来て気分がいい」
「それなら両膝ついたらどうするんだ?」
「フハハハハ、大きく出たな。仮にそんなことになったら、お前の召使いにでも、なんにでもなってくれるわ。魔族は強者には絶対服従が鉄則だからな。まぁ、お前は今から数分後には、いや数秒後かには死んでいるからどちらにしろ関係ないことだがな」
「では、いくぞ! せいぜい鬼から必死に逃げるんだな!」
さっきとは段違いの速さで二本の剣が不規則に襲いかかる。一本は剣で受け流し、もう一本は寸前のところでなんとか回避する。
「やるではないか。では、これはどうかな?」
次の瞬間、左の視界が真っ赤に染まる。咄嗟に俺は後ろに下がって距離をとった。
な、何が起きたんだ?
たしかに攻撃は躱したはず……
切れた瞼から血が滴り落ちる。俺は服の袖を破り、切れた瞼にあてがった。
間違いなく奴の剣の軌道からは外れていたのに何故??
もしかして、回避した瞬間に軌道が変化しているのか??
でもどうやって?
考えれば考えるほど俺はパニックに陥った。
するとナイトメアは俺に、種明かしをするかのように手首をクイッ、クイっと捻った。
そうか、手首だ!
奴は俺が回避する瞬間に手首をひねったりして軌道を変えているんだ。
「どうやら気づいたようだな。しかし、気づいたところでどうする??」
確かに寸前で軌道を変えられたらスキルを使っても躱せない。
とにかく少し距離をとって対策を考えよう……
「クククッ、急に逃げ腰になってどうした? 怖くて近寄れないのか? そんな逃げ腰のお前に、もう一ついいものを見せてやろう!」
なんかものすごくヤバそう。
俺は慌てて、さらに三歩ほど後ろに下がった。
「お前にとびきりの地獄をプレゼントだ」
どうやらナイトメアは右手に魔力を集中させている。
一体何が始まるんだよ。
正直これ以上の地獄は勘弁してほしい……
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