第32話 決戦ナイトメア~4
黒い煙は依然として晴れる気配がない。
何が起こるかわからない緊張感で嫌な汗が出る。
「さぁ、殺戮ショーの幕を開けようか」
声とともに一瞬にして煙が晴れる。するとそこには重厚な漆黒の鎧に包まれ、右手に刃渡りが身の丈ほどもある巨大な剣を握った騎士が仁王立ちしていた。
「久しぶりにこの姿になったのだ。失望させるなよ小僧」
ナイトメアは、一歩一歩こちらへ歩み寄るとそれに合わせて俺は自然と後退りしていた。
防衛本能がそうさせているのだろう。この時、俺はこの世界に来て初めて死の恐怖を感じ、フルフェイスヘルムの隙間から見える二つの赤く光る眼がより一層にそれを掻き立てる。
「では参るぞ!」
ナイトメアは大剣を振り上げこちらに向かってくる。恐怖で身が竦んでいた俺は自分の頬を思い切り平手打ちし、気を取り直してそれに応戦した。
あんなに巨大な剣を片手で軽々と振り回せるなんて、ものすごいパワーだ。
なんとか間合いを詰めて懐に入らなければ……
「逃げてばかりで面白くないぞ! もっと楽しませてみろ!」
ナイトメアの攻撃はさらに激しさを増し、こちらは受け流すのに必死だ。
このままじゃ勝てない……
次に剣を振り上げた瞬間に懐に入ってやる。
覚悟を決めた俺は虎視眈々とチャンスを窺う。
「今だ!」
俺は全速力で懐に飛び込み、振り下ろした剣をすんでのところで躱し、奴の鳩尾めがけて勢いよく剣を突き上げた。
いける……
そう思ったのも束の間。突如、右の脇腹を激痛が襲う。
こっちの剣より先に、無情にもむこうの左手の拳が先に届いていたのだ。そう理解したと同時に俺は後ろに吹き飛んだ。
あまりの痛みに起き上がれない。あばらの二、三本は折れてるに違いない。
「カナデー!!」
たまらずエリナがこちらに駆け寄ってこようとする。
「おい、邪魔をするなよ小娘。あと一歩でも近づいてみろ。お前の頭が宙を舞うことになるぞ!」
「なに心配しなくてもこいつのあとに、お前たちもすぐにあの世に送ってやる」
「やめろ! まだ終わってないぞ」
俺は剣を支えにしてようやく起き上がったが痛みで立っているのがやっとだ。
「ククククッ、惜しかったな。たが今の攻撃はなかなか良かったぞ。褒めてやろう」
ナイトメアは不気味な笑いで喉を震わせる。
「そいつはどうも」
立ち上がってみたものの体が言うことを聞かない。
さてどうしたものか……
あれ?? 頭の中で何かアラーム音のようなものが聞こえる。
すると目の前にスキル画面が表示された。
・・・『身体異常値が基準を超えました』
・・・『アドレナリンと限界駆動を使用しますか?』
アドレナリン? とりあえずヘルプ機能で説明を見てみよう。
『アドレナリン・・・痛みを無効化し身体能力も一時的に向上するが傷の回復はしない』
『限界駆動・・・スタミナ切れを起こしてもしばらくは活動可能』
『但し、上記のスキルは戦闘後の反動が大きい為に注意が必要』
なるほど、諸刃のスキルってことか……
でも後のことより、今を乗り切るには使うしかない。
俺は迷わず使用するをタッチする。
すると痛みが消えて重かった足取りも瞬く間に軽くなった。
よし、これならまだやれる!
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