第31話 決戦ナイトメア〜3
裏庭に出るとそこには小さな祭壇みたいなものが作られいる。その中央に外見は80歳ぐらいの老婆が横たわっており、その周りに5人の魔術士らしき男たちが立っていた。
あれが王妃様なのか?……
ロイドの話によると女王がナイトメアに取り憑かれたのは20後半と聞いていたが全く見る影もない。
「カナデ殿、アイラをどうかよろしく頼む」
国王は深々と頭を下げた。
「はい、必ず助け出して見せます」
「お母様にもしものことがあったら絶対に許さないから」
エリナは、うつむいたまま震えた声でそう言うと、足元には涙が落ちたあとがうっすらと見えた。自分ではどうすることもできない悔しさともどかしさが涙となって溢れ出たんだろう。
そんなエリナを見ていたら、自分でもわからないうちに彼女を抱きしめていた。
「大丈夫、あとは婚約者にまかせとけって」
「何よあいつ、どさくさに紛れて……」
「エリナ様、きっと大丈夫です。カナデ様はあのバローロ殿がお認めになられたお方なのですから」
「先生が!? ど、どういうこと??」
エリナはそんな馬鹿なという感じでこちらを見ている。それもそうだろう。バローロの厳しさはエリナが一番わかっているのだから。
「はい、カナデ様は今日までバローロ殿のところで剣の修行をされておられたのです。ですから心配なさらずに見守りましょう」
それを聞いてなのかエリナはそれ以上は何も言わなかった。
「準備はよろしいでしょうか?」
無言で頷く。
「それでは始めます」
魔術士達が一斉に詠唱を始めるとアイラの体は次第にまばゆい光に包まれていく。
すると次の瞬間、アイラからドス黒い煙の塊が飛び出した。
「早く王妃様を連れて下がってください!」
それは一目でわかるほど禍々しく、全身が恐怖で震える。
黒い煙はどんどん膨れ上がっていき、なにやら形を絶えず変化させている。辺りも瘴気に覆われ視界がとても悪い。
しばらくすると視界も戻り、再び黒い煙の塊に目を向けると、そこには漆黒の巨大な馬が一頭こちらの様子を窺っていた。
その馬は、漆黒の美しい毛並に普通の馬の2倍くらいはある大きな体、さらに額には一本の立派な角が生えている。
もし、この馬がダービーに出走したら絶対優勝するだろうな。そんなこと言ってる場合じゃ無いけど……
しかし禍々しいながらも、それくらい見事な馬だった。
「貴様か? 我が眠りから覚ましたは」
鋭い眼光でこちらを威嚇する。
「馬が、しゃ、しゃ、しゃべった!」
喋ったことも勿論だが、人の姿を想像していたのでそれにも驚いた。
「なんだガキではないか?」
「小僧、死にたくなければ今すぐに立ち去れ!」
「と、と、とりあえず、お、お、お前を倒さないといけないからそれはできないな!」
緊張と恐怖のあまり、言葉がうまく出てこない。
「フハハハハ、私を倒すだと! 気でも触れたか小僧、ガキの命に興味など無い。お前の馬鹿さ加減に免じてもう一度だけチャンスをやろう」
「直ぐに消え失せろ!!」
なんて威圧感だ……
一瞬でも気を抜くと飲み込まれて押し潰されそうになる。
俺は背筋をピンと伸ばしてもう一度向かい合った。
「どうやら馬鹿は一度死ななければ治らんらしいな」
一度死んだけど治ってなくて悪いな……
「何故、お前はここに立つ?」
ナイトメアは、前足を勢いよく地面に叩きつけて威圧してくる。
「王妃様を元の体に戻すためだ!」
「なるほど、たがそれは無理なことだ。この女を元に戻したければ私の魔核を砕くしかないからな。お前に私が魔核を砕かれるなどということは万に一つも無い!」
「それはやってみないとわからないだろ?」
「どこまでも愚かな奴よ。死んであの世で後悔しろっ!」
ナイトメアはそう言い放ち、勢いよくこちらへ向かってきたが、身をかわせないほどではない。
俺は右へ跳ぶと同時に腹を剣で突いたが攻撃はいとも簡単に弾かれてしまう。
めちゃくちゃ硬い!
やはり普通の攻撃じゃ無理か。振り返った先の大木は、ものの見事に薙ぎ倒されている。
まるで戦車と戦っているみたいだ……
「次は貴様がこうなる番だ」
ナイトメアは再度こちらへ向かってくる態勢をとっている。
とにかく通常攻撃が効かない以上、全開で一気に決めにいったほうがいいな。
「大人しく貫かれて楽になれ!」
ナイトメアの鋭い角が再び襲いかかる。俺は向かってくるナイトメアに対して闘気を込めた剣を奴の頭に振り下ろした。
バッキィィィィィィーン
辺りに甲高い音が響きわたる。
よし手応えはあった。これならダメージを与えられる。
「貴様ー!! 許さぬぞ!!」
頭の角を折られたナイトメアは怒り狂い、その目は確実に俺の命を狙っている。
「ここにいる者全員、八つ裂きにしてくれるわ!!」
激しい雄叫びとともに周りの空気が一瞬震える。それと同時にナイトメアを黒い煙が包んでいった。
おいおい、なんかとんでもなくヤバそうな雰囲気だな。
俺は、剣を握りしめて静かに様子を窺った。
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