第30話 決戦ナイトメア〜2
俺たちは城に向かう途中、軽く昼食を済ませ一時間ほど休憩をとった。
「それにしてもカナデ様、よくバローロ殿の修行に耐えられましたなぁ。かつて指導者だった頃のバローロ殿の訓練はそれはそれは厳しいもので、毎日のように逃げ出す者が沢山おりましたぞ」
「見かねた陛下がもう少し緩めるように申されたのですが、バローロ殿も俺は兵を強くするために来たのであって、遊びに来たわけではないと聞かなくて……」
「しばらくすると誰も訓練に参加しなくなってしまい、それに嫌気のさしたバローロ殿も指導者を辞められてしまわれたのです」
ロイドは笑いながら昔話をしてくれる。
「あははは、師匠らしいですね」
まぁ、そうだよな。
あんな生死をさまようほどの訓練なんてよほど明確な目標でも無い限り、逃げ出したくもなるよ。
俺も何度死にかけたか……
思い出しただけで背筋がゾッとした。
「おやおや、もうこんな時間ですか。無駄話がすぎましたね。そろそろ出発いたしましょう!」
俺たちは、食堂をあとにして再び馬車に乗り込み、城を目指す。
しばらく馬車を走らせ城内に到着した俺たちは馬車を降りてひとまず国王様のもとへ向かった。
城内には、ほとんど人がいない。
「すごく静かですね」
「はい、陛下が安全の為に出来るだけ城に人を残さぬようにおっしゃられたので人払いをしております」
「じゃあ、エリ、お、王女様もいらっしゃらないのですか?」
「もちろんです。エリナ様も今、陛下の御命令で北の森の魔物討伐に出かけておりますので帰るのは明日ぐらいかと」
よかった……
エリナとは、あの日、以来会ってないし、ここで会うとなんか気まずいからな。
俺はエリナがいないことを聞いて胸を撫で下ろす。
階段を上がり国王の部屋まであと少しというところで廊下の向こう側に人影が見える。おそらくは女性だ。
え!? 何で?? 一瞬、目を疑ったが間違いなくそれはエリナだった。
俺が気付くと同時にエリナも気付いたらしく、こちらへ走って詰め寄って来る。
「ちょっと! なんであんたがまだここにいるわけ?」
「エ、エリナ様こそ、もうお帰りになられたのですか?」
ロイドが焦って尋ねる。
「あんな下級の魔物に時間なんてかけてられないわ。早めに片付いたから帰ってきたの。それより、これはどういうこと? 城には誰もいないし、こいつはまだいるし、ロイド! 説明しなさい!」
エリナは物凄い剣幕でロイドを責め立てる。ロイドも観念したのか、説明を始めだす。
「実はカナデ様は陛下の勅命により本日、ナイトメア討伐を行います」
「はぁ? お父様は一体なにを考えているの! それで私を城から追い出したのね?」
「こんな奴にナイトメアが倒せるわけないじゃない! ナイトメアは私が倒します! あんたもちょっと私に勝ったからって調子に乗らないでくれる?」
ダメだ……
完全に火に油を注いでしまった。
こうなったエリナは俺たちじゃどうすることもできない。
ここは国王様に助けてもらうしかないな……
「国王様! カナデです! 只今、到着いたしました!」
俺は隙を見て国王の部屋の前まで行き、中に逃げ込んだ。
「カナデ殿よく参られた」
窓から外を眺めていた国王は、こちらへゆっくりと歩み寄ってきた。それと同時にエリナも部屋へ飛び込んでくる。
「お父様! これはどういうことですかっ!」
エリナは部屋に入るとすぐに国王のもとへ詰め寄った。
「お母様は私が助けるって言ってるじゃない! なんでこんな奴に……」
「エリナ、カナデ殿に任せてみないか?」
「わしも最初は半信半疑だったが彼の目を見て信じてみることにしたのだ」
「それにこれは国王の命令である! たとえ身内のお前であっても逆らうことは許さん!」
「し、承知しました……」
エリナは下唇を強く噛み締め、その体は怒りや苛立ちに震えている。
よかった。なんとか収まりがついたみたいだな。
無論、エリナは納得いってないみたいだが……
「失礼します! 国王様、準備ができたとのことです!」
「うむ、ではカナデ殿参ろうか」
呼びに来た近衛兵の先導のもと、俺たちはぞろぞろと階段を降り、城の奥に進むと突き当たりに古びた長らく使っていないだろう扉の前まで辿り着く。
扉を開けると手入れもされていない広い空地に周りは鬱蒼たる森。
ここは城の真裏か。
なるほど、ここなら思う存分戦えそうだ。
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