第28話 最後の晩餐~3
席に着き、しばらくすると、まずは色鮮やかな前菜が運ばれてきた。野菜中心のヘルシーな一皿だ。
「じゃあ、カナデさんが明日頑張れるようにって乾杯しましょう!」
「ありがと、頑張るよ。ファリナも誕生日おめでとう!」
お互いにグラスを手に取り、手の甲を軽く合わせて水で乾杯する。
「さぁ、食べましょ、食べましょっ。どれも美味しいですよ~」
ファリナは得意げに前菜の説明も細かくしてくれた。
それでは、いただきますっ。
うん、このキャロットラペはすごく美味しい! 人参の旨味がすごく活きてるし、リンゴ酢と蜂蜜で独特の土臭さもない。それにレーズンがいいアクセントになっている。
次はトマトのファルシ、中身はアボカドとサーモンか~ 見た目もかわいいなっ。あの主人、怖い顔しているわりに可愛らしい料理も作るんだな。
あっ、これはいつもファリナが作ってくれる、オニオングラタンスープだ。たっぷりのたまねぎとスープが染み込んだバゲットが魅力的なオニオングラタンスープは、身も心もほっと温まり、たまねぎの自然な甘みがとてもクセになる。
「このスープは、ファリナが作るのと同じ味だよ」
「ホントですか~! やったぁ! おじさんに教えてもらって勉強してるんですよ。いつか、自分のお店が持てたらいいなって思ってます!」
「ファリナならきっとできるよ。料理のセンスもあるし」
「じゃあ、お店出したら絶対に食べに来てくださいね~」
「もちろん、もちろん!」
俺達は美味しい前菜に舌鼓を打ちながら自然と会話も弾んだ。
「そうだ、これ、誕生日プレゼント」
俺は、おもむろにポケットからペンダントを取り出した。さっき手分けして買い物した時に、バレない様に買ったものだ。
「わ~ ありがとうございます! しかも欲しかった赤い石のほうだぁ。どうして赤ってわかったんですか?? あの時は適当な返事だったのに~」
ファリナは大はしゃぎで、すぐに身に付けると、窓ガラスに映った自分の姿を確認した。
「な、なんとなくだよ。赤の方が似合うと思ったから」
よかった~ 赤を買って。実はファリナがペンダントを戻す時、青はすんなり戻したのに、赤は少しためらって戻したように見えたのだ。
ふっふっふ、きっと俺の観察力には見た目は子供、頭脳は大人の名探偵もびっくりに違いない……
それにしても、あの露店のオヤジ、ファリナには銅貨10枚だったのに、俺には30枚で売りつけやがって……
まぁ、とにかくファリナが、喜んでくれてよかった、よかった。
前菜を食べ終わり、一息ついているとメイン料理が運ばれてくる。それは匂いだけで美味しいことが容易に想像できた。
「この料理はこの店一押しのメニューなんですよっ」
「そうなんだ~ ではでは、いただきます」
「美味しい!! これ、めちゃくちゃ美味しいよ」
美味しくてほっぺたが落ちそうになるということを、まさにこの時、実感した。
「でしょ、でしょ!! これは、おじさんが昔、お城で料理長をしてた時、王妃様が好きだった料理なんだって」
「名前もブシェアラレーヌって言うの」
その料理は、パイ生地を何枚も重ねて、真ん中をくりぬき、オーブンで焼き上げ、トリ肉とマッシュルームをベシャメルで煮込んだソースをたっぷりとかけたものだ。
てか、あの主人、めちゃくちゃすごい人じゃないか!!
俺には怖いけど……
俺は、あっという間にその料理を平らげ、シメのデザートも十二分に堪能し、幸せなひと時を過ごした。
「そろそろ帰りましょうか??」
「そうだね、遅くなると師匠も心配するかもしれないし」
二人が立ち上がると、女将が出口まで見送りに来てくれた。俺は興奮しながら料理の感想を伝えると奥で聞いていた主人も嬉しそうにこちらを見ている。
「女将さん、どの料理もとても美味しかったです。ごちそうさまでした!」
「それは良かった。またいつでもおいで!」
「おばさ~ん、おやすみなさーい」
店の外に出たファリナは振り返って大きく手を振ると、女将も大きく手を振り返す。
「おやすみ。気を付けて帰りなさいっ!」
「そうだ、ファリナ、鈍い男は苦労するから、ほどほどにしときなさいよ」
「は~い。ほどほどにしま~す」
「女将のあれ、どういう意味??」
少し歩いたのちに、ファリナに尋ねる。
「そういう意味ですよっ」
戸惑ってる俺を置いてスタスタと先に行ってしまうファリナを追いかけ二人で帰路に就いた。
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