第25話 ファリナと妹
「あっ! また寝過ごした!」
慌ててベッドから飛び起きる。また師匠に怒られると思った俺は急いで支度を始めた。ん? 待てよ、そうだ、今日は休みだ。
もう少し寝るか。ベッドに戻ってもう一度、横になったがすっかり目が覚めてしまっていて寝れない。
仕方ない、起きるよう……
「……」
ところで、起きて何したらいいんだろう?
ここに来てから訓練以外してなかったせいで何をしたらいいのか分からない。
このままでは、落ち着かないし外で素振りでもしよう。
俺はとりあえず剣を手に取り、外へ出ることにした。
やっぱり剣を振ってると何も考えなくていいから楽だな……
「ふっ、ふふ、剣なんて持ったことないこの俺がな~」
一ヶ月前の俺からしたら到底、考えられないセリフに自分で笑ってしまった。
「おいっ! 何してるんだ」
「うぁっ!!」
背後からの師匠の低い声に飛び上がって驚く。
「今日は休めって言っただろっ! 分からねぇやつだなぁ」
「すいません、なんだか落ち着かなくて、つい……」
「あははっ、カナデさん、またお父さんに怒られてるの??」
笑いながらファリナがこっちへやって来た。
「お父さん、私、今から街に買い出しに行ってくるね~」
「おう、気を付けて行けよ。そうだファリナ! こいつを荷物持ちに連れていけ。ここにいても邪魔だしな」
ひどい。そこまで言わなくても……
「やったぁ! カナデさん、行きましょ、行きましょ!」
「そうだね、気分転換にもなるし行こうか~」
「早く行け、行け。ついでに晩飯も食ってこい」
師匠はポケットから、しわくちゃの紙幣を取り出して、ファリナに手渡した。
「師匠はどうするんですか??」
「俺はお前と違って忙しいんだよっ! わかったら、とっとと行ってこい」
そう言うと師匠は頭を掻きながら作業場へ戻っていってしまった。一体、何をしてるんだろう? 気になる……
「じゃあ、カナデさん行きましょうか~」
俺とファリナは一緒に街に向かって歩き出した。ファリナは街に行くからなのか少しオシャレしているように見える。
「カナデさんは街に行くのは初めてですか??」
「うん、ここへ来るときもロイドさんが馬車で送ってくれたからね」
「じゃあ、案内は任せて下さいっ。明日は精霊祭なんできっと出店もいっぱい出てますよ」
ファリナ、すごく楽しそうだな……
楽しそうにしているファリナを見て、俺は小さいころ妹と神社のお祭りに行った時のことを思い出した。
俺には四つ離れた妹がいた。
いつも俺の後ろをクマのぬいぐるみを持って、ついてくる姿がとてもいとおしかった。
毎年、夏休みになると家族で祖父の田舎へ車で行くのが恒例で、その時に行った、神社のお祭りで楽しそうに笑っていた妹の顔は今でも鮮明に憶えている。
そんな妹や父も母も俺が九歳の時、いつものように祖父の田舎へ行く途中で事故に遭い、病院で目を覚ますと、俺以外はみんな亡くなっていた。初めは祖父の家にいたがその祖父もその後、すぐに亡くなり、その日から成人して一人暮らしをするまでのことは、とても思い出したくないことばかりだ。
ファリナの無邪気な笑顔を見て、妹も大きくなっていたらこんな感じなのかなと想像すると、急に眼がしらが熱くなってきたのでこれ以上は考えるのをやめることにした。
「カナデさん、カナデさん! 街が見えてきましたよ~」
30分ほど山を下り、森を抜けるとようやく街が見えてくる。
以前馬車で通った時とは違って活気づいているなぁ……
俺もだんだんと街に近づくにつれ、気分が高揚してくる。




