第24話 あと二日
師匠を見送った俺はその場にゆっくり座り込んだ。戦いが終わって張りつめていた糸が切れたせいか疲労感が押し寄せてくる。
とりあえず風呂にゆっくり浸かりたい……
しばらく座り込んだ後に、重い腰を上げて風呂へと向かう。風呂から上がり食卓へ向かうと今日もまた美味しいそうなものがたくさん並んでいる。
「おかえりなさい〜」
ファリナがいつものように笑顔で迎えてくれた。
「カナデさん、お父さんたらさっきからずっと無言なんだけど何かあったの?」
本当だ。師匠は無言で酒を呑んでいるせいなのか、今日はペースが早い。
「え〜と、それはね……」
言いにくそうにしてる様子で気付いたのかファリナはそっと近づいて小声で聞いてくる。
「もしかして勝てたの?」
「う、うん」
静かに頷く。
「やったー! カナデさんなら勝てるって信じてたー」
「ファリナ、はしゃぎ過ぎ、はしゃぎ過ぎ」
俺に抱きつきウサギのように跳ね回っているファリナを落ち着かせて、席に着くと師匠がゆっくりと口を開いた。
「カナデ、お前は一体、何者なんだよ。たった一ヶ月でここまでになるなんてどうかしてるぜ。これならいい勝負になるかもな」
「本当ですか!? 勝てますか??」
「まぁ、あとは神のみぞ知るってとこだ。おそらく瞬殺されることはないはずと思うが油断はするなよ。あとは万全の体調で臨むことだな。とにかく明日は何もせずにしっかりと体を休めておけ! いいな!」
「はい、わかりました」
そのあと師匠はやる事があると言い、先に離れの作業小屋に戻って行ってしまった。
最近、夜中に作業小屋にいるけど何をしてるんだろう?
きっと朝から晩まで俺に付き合ってるし、武器や防具の製作の仕事が終わらないのかもしれない……
「お父さん、いつも作業小屋で何してるのかしら??」
どうやらファリナも不思議に思っていたようだ。
「たぶん俺の稽古に時間を取られて仕事が進まないんじゃないかな?」
「う~ん、でもいつもなら二~三日で終わらせているの。こんなに毎日籠るのは初めてよ」
「そうなんだ。明日にでも聞いてみるよ」
俺はファリナと30分ほどおしゃべりを楽しんでから、ごちそうさまとおやすみを言って自室に戻った。
自室に入るとベッドに仰向けで横になり静かに目を閉じて物思いにふける。
こっちに来て一ヵ月。
元の世界では二年ぐらい経っているか……
野田さんも会社の人達も俺のことなんて、もうとっくに忘れてるよな……
この世界に来てから、毎日いろいろな事がありすぎてそんなこと考える暇がなかったが、あらためて考えてみると、少しだけ寂しい気持ちになった。しかし結局、家族も恋人も友達もいなかった俺にとっては、正直どうでもよかった。
いまさら元の世界のことを考えたところでどうかなるわけでもない。それよりも今の世界で生きていくことを考えなければならないしな。
あと二日。
それで俺とこの国の命運が決まる。




