第21話 あと一歩
昼食を急いで済ませ、一息ついて再び外に出るとすでに師匠はやる気満々で待ち構えている。
「さて第2ラウンドはじめるか~」
師匠は剣をブンブン振り回してなぜかとても楽しそうにしている。まぁ、嫌々されるよりは全然いい。
「なんか楽しんでませんか?」
「な、なに言ってやがる。弟子に意欲的に稽古つけてやってるだけだろ! ホント俺って師匠の鑑だよな」
絶対に楽しんでるよ、この人……
どうせ久しぶりに誰かと剣を交えて昔でも思い出したんだろう。
でも、なんだかなぁ~
「次は俺も全開で行きますからっ!」
「それはそれは~ せいぜい倒れないように頑張ってくれや」
師匠は相変わらず、余裕の笑みで俺を嘲笑う。
今度は絶対に一泡吹かせてやる。俺は剣に闘気を込めると、先に攻撃を仕掛けた。
「ふっ、さっきとは違いますよってか。相変わらず成長の早い奴だぜ」
互いに一歩も引かず互角に打ち合う。俺の攻撃に師匠もそうだ、そうだといった様子だ。
「気づいたようだな。さっきは無駄が多かったことに」
「はいっ! 状況に応じて瞬時に闘気の加減をして体力を温存するんですね?」
「そういうことだ。お前みたいに馬鹿正直に、常に全開に近い量の力を出してたら誰だってすぐにへばっちまう。出す時に出して、抜く時に抜けってことだ。それを瞬時に判断できるようにしろよ!」
やっぱりそうだったんだ……
ファリナありがとう、君のおかげでコツをつかめたよ。
午前中の時とは違い、俺は確かな手ごたえを感じた。師匠には、今まで散々やられてきたけど、もしかしたら今日こそは勝てるんじゃないか? そんなことが俺の脳裏をよぎる。
だが…… 甘かった……
「あんまり~ ちょ、う、し、に、乗るなよっ!」
師匠の次の一振りで俺の剣は、あっけなく弾き飛ばされてしまった。
くそっ、あと一歩だったのに……
「お前はすぐ調子に乗る癖があるから気をつけろよ! それが命取りになるからなっ。分かったら、とっとと風呂行ってこい! 続きは明日だ」
風呂から上がり、腹ペコの俺は急いで食卓に向かう。今日も相変わらず豪勢な食事だ。
「どうだった?? 今日こそ勝てたの??」
席に着き、ファリナのお約束の質問に黙って首を横に振る。
「ははは、ファリナ、ソードマスターと呼ばれているこの俺が簡単に負けるわけないだろっ」
「まったく、少しは手加減したらどうなのっ! ホント大人げない」
「ばーか、手加減したら稽古の意味がないだろうがっ。それにお前どっちの味方なんだよ!」
「はぁ~? 何言ってんのよ!? カナデさんに決まってるでしょ! お父さんなんて早く負けたらいいのよっ」
「こいつ~ 誰に向かって言ってんだよ! まったく、親の顔が見てみたいぜ」
「どうぞ、どうぞ、鏡を見てきてくださ~い」
ふふふ、本当にこの親子は面白いなぁ~ 俺は思わず笑ってしまいそうになる。
「カナデ、何笑ってんだよ! 早く食って、早く寝ろ! 明日は徹底的にやるからな」
師匠は俺にそう宣言するとそのまま風呂に向かってしまった。
笑うの我慢してたはずなのにバレてたか……
これは明日の稽古は厳しくなりそうだ。
「明日こそ勝てるといいわね~」
「うん、今日はもう一歩だったんだけどね。明日も頑張るよ」
「頑張ってねっ! 応援してるから」
「ありがとう。それじゃおやすみ」
ファリナ、君がやっと手に入れた父親との幸せな時間をナイトメアに壊されるようなことは絶対にさせないから……
あまりいないとは思いますが少しでも気に入った、続きが気になるという方がいらっしゃいましたら励みになりますのでブックマーク、評価をお願いします。




