第19話 家族との食事
俺は師匠のいるところへ戻ろうとしたが、急に立っていられなくなり、その場に座り込んでしまう。
すると、それを見ていた師匠は、やれやれといった感じでやって来て、俺を背負うと来た道を引き返し始めた。どうやら剣闘気は威力と引き換えに体力の消費が激しいみたいだ。俺は師匠に背負われると、徐々に意識を失っていった。
意識を無くしてからどれくらいたったのだろうか。目を覚ますといつものベッドに寝かされいた。外は、すでに日が暮れていて、額に置かれた濡れタオルもすっかりぬるくなっている。
喉が渇いた俺はベッドから起き上がりキッチンに向かうと、そこではファリナが食事の支度をしている。とても美味しそうな匂いだ。
「目が覚めたんですね。全然起きないから心配しましたよ~」
ファリナから水の入ったグラスを渡されると両手で受け取って一気に飲み干し、服の袖で口を拭った。
「ありがとう。心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」
「それなら良かったです。もうすぐ食事も出来ますから向こうで座って待ってて下さいね~」
俺はキッチンを出て居間に向かい、扉を開けると師匠がちょうど晩酌をしている。
「お、おはようございます……」
怒られるんじゃないかと少しビビりながら師匠に声を掛けてみる。
「起きたのか? てかドヤ顔しておいて気を失ってんじゃねーよ。まったく……」
師匠は半分笑いながら茶化してきたので、それに俺は少しホッとして席に着きファリナの食事を楽しみに待つ。
「剣闘気は体力消費が激しいが使い方を覚えればなんてことはない。あとは慣れだな。まぁ、これで勝てる可能性が少しは出てきたわけだが、ここからはお前次第。残りの時間で、ものにしろ! 明日からは慣れるため、常に闘気を出したまま訓練するから覚悟しとけよ」
「はい。頑張ります!」
「それにしても、まったくよぉ〜 俺が五年かかったのに、なんですぐにできちゃうかな~ ブツブツ……」
「なんだか、す、すみません……」
やっぱり少し悔しかったのだろうか。まぁお酒のせいもあると思うけど。
「はい、は~い~ ご飯できたわよ~」
しばらくしてファリナが皿いっぱいの料理を運んできてくれた。やっとこの重い空気から逃げられる、そう思ったら急に食欲が湧いてきて、テーブルに置かれるのが待ちきれない。
「いただきます! うん、美味しい~ ファリナは料理の天才だな」
料理自体もちろん美味しかったが、そこに空腹も重なってより一層美味しく感じる。
「いつも美味しそうに食べてくれて嬉しいわ。お父さんなんて感想とか何も言ってくれないし、ほんと作り甲斐ないんだから」
ファリナは少し照れくさそうにしながらスープのおかわりを入れてくれる。
「うるせーよ、俺は食事は静かに食べたいんだよ! それにいつもこんなに豪勢じゃないだろ! それにファリナ、なんでお前、最近毎日のようにここに来るんだ??」
師匠のムスッとした大人げない表情に俺は思わず笑ってしまいそうになった。
「なによ、娘が自分の家に毎日帰ってきちゃいけないって言うの!?」
ファリナも誰に似たのか負けず嫌いで、すぐに師匠に食って掛かる。
「あ~ さては~ ファリナ~ お前、もしかして~」
師匠は何やらニヤニヤした様子でファリナを見返した。
「ちょ、ちょ、ちょっとお父さん!! 急に何言い出すのよ!!」
ファリナは急に動揺して、あたふたしだした。俺は不思議に思いながらもパンにポテトサラダを乗せて頬張る。
あー なんて楽しい食事なんだろう……
俺は幼い時に事故で両親を亡くしてからというもの、親戚の家をたらい回しにされ、与えられた部屋で毎日一人で食べてたからな。本当にただ生きる為だけに食事をしていたという感じだ。
家族とする食事がこんなにも楽しかったんだということをあらためて思い出す。
「ところで師匠、ファリナが一体どうしたんですか??」
俺は、さっき師匠が何を言おうとしてたのか気になったので尋ねてみた。するとファリナは飲んでいた湯呑みをテーブルにドンっと勢いよく置くと急に強い口調でおこりだした。
「カナデさん!! 片付かないんで早く食べてもらっていいですか!!」
「えっ、あっ、ご、ごめん……」
突然の出来事にビックリした俺は慌てて残っている料理を口に詰め込みスープで勢いよく胃に流しこんだ。
「二人とも明日も早いんだから食べ終わったら歯磨きして早く寝なさい!! ほらっ、早く早く」
俺は、なぜおこられたのか理解できないまま自分の寝室に行くと、ベッドに横になりながらウィンドウを意味もなく開く。
ホント女性は分からないことだらけだな……




