第1話 転生の間~1
どのくらい時間がたったのだろう……
目が覚めると真っ暗な闇の中にいた。
「たしか車と衝突して……」
衝突した記憶はあったが、今は痛みなどは不思議と無かった。
「ここはどこだ?」
部屋なのか空間なのか分からない。
目を開けているはずなのに何も見えないのだ。
そうだ、野田さんは無事なのか?
辺りを見渡そうとしたがやっぱり何も見えない。
「お目覚めになられたようですね」
どこからともなく女性の声が聞こえる。
「こちらへどうぞ」
目の前が急に明るくなり少し先に扉が見える。俺は恐る恐る光の射す方へ歩き出し扉を開けてみた。
「ようこそ転生の間へ。私はこの転生の間の管理者のステラと申します。」
扉を開けると白装束に身を包んだ若い女性が一人立っている。
「ここはどこなんです?」
「野田さんは無事なんですか?」
「俺は死んだんですか?」
聞きたいことが山ほどあった。
「ここは選ばれた死者を異世界へ転生させる転生の間です」
「彼女なら無事です」
「あなたは先ほど死者となり、今は魂のみの状態です」
ステラは表情ひとつ変えず淡々と一問一答で質問に答える。
「魂? て、転生?」
何が何だかまったく理解できない。ただ一つ理解したのは俺は、もう死んでいるということだ。
「俺はこれからどうなっちゃうんですか!!」
不安と恐怖のためか大声で叫んでしまった。
「今から説明いたしますので落ち着いてお聞きください」
俺は一度、ゆっくりと深呼吸をして話を聞くことにした。
「ではお掛けください」
目の前にあらわれた小さな椅子に黙って腰を下ろすと、ステラはゆっくりと口を開いた。
「あなたには、これから別の世界へ転生し、そこでの厄災を鎮めてもらいます」
「はるか遠い時代より、無数に散らばる世界は転生者によって平和と秩序が守られてきました」
「かつてあなたのいた世界も何度か、別の世界の転生者によって救われています」
「あなたのいた世界の神話にある八本の首を持つ魔物をご存じでしょうか?」
「それを封印したのが今からあなたが転生する世界、アークランドからきた転生者です」
大体の内容は把握できたが、なぜ俺なんかが選ばれたんだ?
「なぜ俺なんですか?」
俺の質問に対して間髪入れずにステラは答える。
「それはあなたがその子孫だからです」
「ご先祖様が転生者……」
「そうやってお互いの世界を守ってきてるのです。今回はあなたの代で向こうに厄災が発生したため派遣されることになりました」
つまり簡単に整理すると子孫たちが厄災が発生した時に行き来してお互いの世界を守るわけか……
「でも俺にそんな力があるとはおもえませんが……」
「ご安心ください。転生者は転生する時に人智を超えた力を手にすることが出来るのです」
「その力によって厄災を鎮めます」
なるほど、だから転生させるのか。
「それでは今からあなたの能力を決める儀式をおこないます」
ステラはそう言うと目の前に大きな鏡を一枚持ってきた。
「この鏡に全身を映して手をかざしてください。あなたの身体能力と今までの行いが数値化されて表示されます」
なんだか人生の採点される気分だな……
俺は言われた通りに鏡に手をかざしてみる。
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