第18話 修行の成果!?
ここに来てからすでに三週間が経過していた。最初は半日以上かかっていた水汲みも、今では午前中で終わらせることができるようになり、午後からは師匠と実践形式の訓練を日が暮れるまで繰り返し続ける。
当初に比べて、筋肉で身体も一回り大きくなり、剣もそこそこ上達してきたが、それでも師匠からは、まだまだダメ出しされてばかりである。
泣いても笑ってもあと一週間しかない……
そう自分に言い聞かせ、1分1秒も無駄にしないように訓練に励んだ。
今日も早々に水汲みを終わらせ、昼食を取った後、午後の訓練に備えていたが、なにやら師匠の様子がいつもと違う。いつになく真剣な面持ちで、少し恐怖さえ感じる。
「ついてこい」
あとについて森の中に入り、しばらく歩くと水の流れる音が聞こえてくる。さらに進み、森を抜けると目の前に20メートルほどの高さの滝が姿を現した。
「まずは目を見開いてよく見とけよ」
師匠は、おもむろに1メートルほどの長さの棒きれを拾って、滝の真下にある大きな石の前に立ち、気合いを込め始める。一体、何が始まるというのだろう。
「ハァァァァァァァァァァァァ」
突然、師匠の身体がうっすらとした青白い光で包まれていく。
次の瞬間、俺は目を疑った。師匠が棒を勢いよく真横に振りぬくと滝が上下で真っ二つに分かれたのだ。
「師匠!! 今のは一体何なんですか!! だだの棒きれなのに滝が!!」
俺は興奮しながら戻ってきた師匠に詰め寄った。
「今のが剣闘気だ。自身の生命力を剣に宿らせることによって、棒きれでも威力が何十倍にも跳ね上がる。お前には、これを使えるようになってもらう」
「剣闘気を使えなければ上級の魔族には傷一つ付けることが出来ない。つまり、お前は残りの一週間で使えるようにならなければナイトメアには絶対に勝てないということだ」
マジかよ……
一週間で……
絶対無理だろ……
「ちなみに俺は習得に五年かかった。もちろんエリナはまだ使うことができない。だからあいつはナイトメアに挑めないんだ。挑んだところで無駄死にするだけだからな」
「師匠が五年かかってるのに俺が一週間で習得するのは絶対無理じゃないですか~!!」
実のところ、昨日までは、今の俺ならナイトメアといい勝負になるのではないかと少し思っていたのだ。しかし剣闘気を使えないと話にならないということを聞いて、その自信も一瞬で崩れ去ってしまい愕然とする。
「まあそんなに悲観的になるな。たしかに普通なら一週間で習得なんて無理に決まっている。そう普通ならな」
「だが、お前は俺が思うに普通じゃない! ロイドの爺さんがエリナを負かしたって言った時は正直、冷静じゃいられなかったぜ。エリナには、並みの人間じゃ到底勝てるわけないからな。だからお前なら、必ずできる! 自分を信じろ」
俺は師匠の言葉に頷き、滝へ向かい一度深く深呼吸をする。昔からこれをやると一番心が落ち着くからだ。
剣闘気か…… はたして俺にできるのだろうか。
ん? 剣闘気? そういえばこの言葉初めてじゃないぞ。
俺はダメもとで習得スキル画面を開いてみる……
すると…… あった、あった。
この世界に来た時に最初に見た、使えないスキルの中にあったやつだ。
今はどうかなと……
『剣闘気・・・生命力を剣に宿すことにより威力をあげる』
・・・『使用可能です』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 使えるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
うれしさのあまり思わず声に出てしまった。そんな俺に師匠は早くやれよと言わんばかりに小石を拾って投げてくる。
俺は師匠の方に一度振り返って、ニヤリと悪い顔した。
どうせなら最高に驚かせたやろう……
最近覚えた十字切りも一緒に使ってみるか。
棒を強く握り、力を込めると身体が青白い光に包まれる。
よし! うまくいったぞ! 渾身の力で滝に向かい十字を切ると、いとも簡単に滝は上下と左右に四分割になり、その形を保ったまま滝壺に消えていった。
「やった!! 大成功!!」
俺は師匠の反応を確かめるため振り返ってみたが、師匠は口を開けたまま呆然としたままだ。




