第15話 圧倒的な力の差
小屋の中に入った俺は周りを見回した。小屋の中は作りかけの剣や埃のかぶった鎧などか散らかっていて足の踏み場が無い。
「まぁ適当に座れよ」
散らかっている物を足で隅に押しやって俺を座らせ、汚い茶碗にお茶を入れてくれた。
「なぜ、お前はナイトメアと戦う? まさか可愛い姫さんに惚れたとか、そんな理由じゃねえだろうなー!?」
「違います!」
可哀想とか、そういった感情ではあるが、惚れたとかでは決してない。なんたって俺はアリサ派だからな……
「じゃあなんでだよ?」
「お、俺は、俺は…… 世界を救う者だからです!!」
バローロは飲んでいたお茶を勢いよく吹き出すと、先程の様に床に転がり大笑いをする。
「世界を救う!? フハハハハァ」
「ホントお前は、いちいち笑わせてくれるなっ。まぁ、宝剣を抜いたエリナに勝つぐらいだ。あながち冗談でもなさそうだな」
「ついてこい!」
バローロは、立ち上がり小屋の奥の裏口に向かった。
「はい! 師匠!」
裏口を出ると外は小さな草原になっており、師匠はそこで二本の木の棒を拾い上げ、一本投げてきた。俺はそれを受けとると両手で強く握った。
「かかってこい! どの程度か見てやるから!」
「はい! お願いします!」
俺は、遠慮など一切せずに思いっきり攻撃を続けたが、かすりもしない。なにより驚いたのは、師匠はその場を一歩も動いてないということだ。
「今度はこっちの番だな」
師匠が間合いを詰めて来たなと思った次の瞬間、高速の斬撃が俺に襲いかかる。それはとてつもなく速く、1本のはずなのに、まるで10本で同時に攻撃されてるような錯覚に陥るほどだ。
「攻撃は下手くそだが回避は多少できるみたいだな」
なんとか、見切りと未来視のスキルで回避するがいつまで持つかわからない。
「未来視か、なかなか面白いスキルを持ってるな。だが、そんなものは、俺には通用しないぞ」
「やってみないとわかりませんよ!」
左手を鞘の代わりにして抜刀の構えをとり、カウンターを仕掛ける。エリナの時の様にうまくいけばいいが……
「カウンターか?? 通用するかやってみるといい」
「言われなくてもやりますよ!」
俺は自信満々で次の攻撃に備え機会を窺うと、ここぞとばかりにスキルを発動させた。
・・・『未来視発動』
0.15 0.23 0.38 0.50……
おかしい…… 何で攻撃が見えないんだ??
「ゴン」
鈍い音のあとに額に大きなコブができた。一体どうなってるんだ?? たしかにスキルは発動したはずなのに…… なぜだ?
「教えてやろうか? 簡単なことだ。俺は攻撃を仕掛けるフリをしてお前にスキルを発動させ、同時に攻撃の手を一瞬だけ止める」
「スキルの有効時間の0.5秒が過ぎた直後に攻撃すれば、お前は回避もカウンターもできないというわけだ」
「攻撃を仕掛けてきたから、攻撃してくるなんて考えは捨てろ。戦いとは、騙したもん勝ちだ! 相手をより騙した奴が生き残る! そういうものだ」
くそっ……
スキルさえあれば、なんとかなると天狗になっていた自分が急に恥ずかしくなった。これが実戦なら確実に死んでいるし、ましてやナイトメアは師匠よりも遥かに強い。
大丈夫だろうか……
ダメだ。弱気になってる場合じゃないっ!
とにかく、あと一ヵ月で師匠からすべてを吸収するぐらいの気持ちで、修行に臨むんだ……




