第12話 真夜中の訪問者~2
「ビックリした~!! こんな時間に一体なんの用ですか??」
驚きながら彼女に尋ねる。
「昼間の返事を聞きに来たのよ」
彼女はそう言いながら、あたふたしている俺をよそに勝手にお茶を入れ始め、ソファーに腰を下ろす。
「返事?? 何のことですか??」
彼女が何を言ってるのか理解できないまま俺も向かい合ってソファーに腰を下ろした。
「結婚よ! け、っ、こ、ん、!」
「なぜ私が王女様と結婚しなければならないんですか!!」
「エリナでいいわ。敬語とかも使わなくていいから。私だってあんたみたいな小汚い男としたくないわよっ」
この人はいちいち神経を逆撫でする言い方をするなぁ……
「それでも、いま国を離れるわけにはいかないの。形だけでもいいからお願い~!!」
俺に向かって手を合わせて軽く頭を下げた。
「お断りします!! 今日は疲れたので、もう帰ってもらっていいですか?」
「……」
彼女はソファーから、まったく動こうとしない。
しびれを切らした俺は、外に置いてあるベルで誰か人を呼ぶ為に立ち上がる。
「今、人を呼んだらあなた死ぬわよ。人が来たら、部屋に連れ込まれて暴行されたって言うから」
「王女を暴行したとなれば、死罪は免れないけど。どうする?」
俺は黙って扉を閉め、下唇を噛み締めながら拳を強く握ってエリナに詰め寄る。
「なんて卑劣なんだ!」
「ふふふ、私は勝つためには手段を選ばないわ。今までも、これからも」
どうしたらこんなにひねくれた性格になるんだろう……
まったく親の顔が見てみたいよ。そういえば、この城にきてから王妃様に会ってないな。たまたま会う機会がなかっただけなのだろうか?
とにかく今は、この状況を何とかしなくては……
「結婚以外で力になれることはないですか?」
話題をすり替える作戦でいこう……
「わかったわ。確かに結婚は唐突過ぎたわね。じゃあ、こうしましょう。私に剣の手ほどきをしてもらえると嬉しいわ」
「いやいや~ 君に教えられることなんて何もないよ。俺は全然強くないし」
その言葉を聞いてエリナの表情は、みるみる険しくなっていく。そしてソファーから立ち上がり、鬼の形相でこっちに向かってくると俺の胸ぐら掴んで大声で叫んだ。
「私のことを、随分と馬鹿にしてくれるのね。俺は強くない、負けたお前が弱すぎただけだ。そういうこと?」
「そ、そういう意味じゃなくて。俺が勝てたのは、なんていうか偶然みたいなもので」
「偶然? ふざけないで!! 偶然で勝てるほど私は弱くないつもりよ!! 私は8歳から剣を握っているの! 戦った相手が強いか弱いかぐらいわかるわ!」
「誤解を与えるような言い方をしたのは、悪かった。そのことは謝る。でも君は十分強いじゃないか! 俺が教える必要なんてないと思うけど」
「あなたに何がわかるの!! 私は、もっと強くならないとダメなのっ!!」
「もっと、もっと、誰よりも! 強くならないとダメなのぉぉぉぉぉ!!」
溜まっていた何かが爆発したのか突然、エリナの瞳から大粒の涙が溢れ出す。
え、えぇぇ……
どうしよ、どうしよ、泣き出しちゃったよ……
すると、少々騒がしかったせいか、アリサが部屋に様子を見に来た。
「どうしてエリナ様がここに??」
困惑しているアリサをよそに、エリナは涙をぬぐいながら部屋を飛び出していった。
「あっ、アリサさん! ちょうどよかっ……」
次の瞬間、アリサはテーブルあった果物ナイフを取り、背後から俺の喉に押し当ててくる。とても普通とは思えない訓練された動きだ。
「貴様! エリナ様に何をした?」
いつもとは違う、低い声で尋ねてくる。
「ち、ち、違うんですよ!! せ、説明するんで放してもらっていいですか??」
アリサはナイフを納めて、俺の背中を強く押した。
俺はアリサに、事の次第をすべて説明すると彼女は恥ずかしさからか顔を真っ赤にして、ひたすら頭を下げ続ける。
「も、も、申し訳ございません!! 私は何という勘違いを」
「大丈夫ですよ。わかってもらえたなら」
「ありがとうございます。私はエリナ様をお探しするので、カナデ様はお休みくださいませ」
そう言うと、アリサは物凄い速さで部屋から出て行った。勘違いが相当恥ずかしかったのだろう。
それにしてもアリサさんの動きはヤバかったなぁ。一瞬で背後を取られたし……
俺はアリサのステータスを確認してみた。
『アリサ・トスカーナ』
『クラス・王宮特殊工作員』
『レベル・10』
『剣技8、魔力5、体力5、知力8、敏捷8、運5、センス6、シークレット×』
なるほど~
表向きはメイドで、本当は工作員だったわけか。
おっ そうだ! シークレットステータス閲覧のスキルを使ってみよう。
『剣技8、魔力5、体力5、知力8、敏捷8、運5、センス6、シークレットG』
G? Gってなんだ?? アリサさんで、思いつくGと言えば1つしかない!!
さっき背後を取られたときも背中に柔らかいものが、ずっと当たっていたし。
うん……
正直どうでもいいスキルだな……
あ~ それにしても疲れたな。寝るか……
背中の感覚を忘れないうちに、俺は寝室に向かった。




