第9話 ボーイミーツプリンセス~3
とにかく俺は全神経を集中して回避に専念する。それが功を奏してか、彼女の攻撃をだんだんスムーズにかわせるようになってきた。しかし、まだまだ気は抜けない……
一瞬でも気を抜いたら確実に斬られる。
「ふふ、逃げてばかりじゃ勝てないわよ」
彼女は、かかって来いよと言わんばかりに挑発してくる。
いいだろう……
そっちがその気なら反撃開始だ。攻撃パターンもかなり把握できてきたしな。潜在能力の違いを見せてやる。
最初は防戦一方だったが次第に彼女が受けにまわる回数が増えてきた。大丈夫! 押してるぞ! 余裕の出てきた俺は、攻撃の手を緩めない。
「やるわね。正直、ここまでやるとは思ってなかったわ」
彼女は後ろに下がり少し間合いを取ると、不敵な笑みを浮かべる。
「次で本当に終わらせるから覚悟しなさい」
そう言うと持っていた剣を投げ捨てて、腰に差していた自分の剣を抜いた。
「エリナ様! それはなりませぬぞ!」
剣を抜いたエリナにすかさずロイドが割って入る。
「どきなさい! このままじゃ埒が明かないから、これで終わらせるわ。あなたもこのまま勝負がつかなくて食事にありつけないのも嫌でしょ? だから次で終わらせてあげるわね」
「そうですね。でも負けた後の食事なんてきっと美味しくないんで勝たせてもらいますよ」
もう一度、俺は剣を強く握りなおし、念のため未来視のスキルも発動させる。
「カナデ様、お気を付けください。エリナ様の剣は普通ではありません」
ロイドは不安そうな顔で俺の身を案じ、元の場所に戻っていった。
剣を替えたところで、何がかわるんだ?
大丈夫、今の俺ならいける。
そう自分に言い聞かせて彼女の間合いに飛び込んだ。
「えっ……」
間合いに飛び込んだ瞬間、前髪が1センチほど地面に舞い落ちる。未来視がなかったら確実に斬られていたに違いない。剣速が2倍、いや3倍は速くなっている。
「驚いてるようね、さっきの余裕がなくなってきてるわよ。この剣は、風の精霊の加護を受けた、ウインディラ家に代々伝わる宝剣ファルコニア。この剣で斬れないものなんてないわ」
マジかよ……
そんなチート武器を持ち出すなんてなんて卑怯なんだ。ただの訓練の手合わせなのに。でも、彼女もそれくらい押されていたということなのだろう。
よし、もう一度、未来視で回避に専念してタイミングをつかめたら反撃だ。
俺は、未来視と見切りのスキルを駆使して、チャンスを窺った。
上かっ、また上。下っっ、次も下。
左ぃぃ、次は右。左ぃっ、また右。
そういえば昔のテレビゲームで上、上、下、下、左、右、左、右、B、Aって入力すると無敵になれるシューティングゲームがあったなぁ。
何度か剣を受けているうちに、そんなことを考えながら回避できる余裕が出てきた。なんとか隙を見つけなくては。
全身の神経を研ぎ澄ます。
「見えた! 右があいた!」
一瞬見えた隙に渾身の力で打ち込むと彼女も反応して受け止めようとするが、こちらのほうが早い。
「いけるぞ! よし勝った!」
俺は勝利を確信した為か、緊張していた顔が緩んだ。
カーーン
確実にとらえたはずなの剣が跳ね返された。
なぜだ?
彼女の剣は間に合ってなかったはず……
分からないまま、その場に呆然と立ちすくむ。
「惜しかったわね~ 残念でした~ この剣は防御姿勢に入ると精霊の加護で風のバリアができるのよ。だからあなたの剣は、はじかれたの~ 理解できたかしら?」
俺は頭の中が真っ白になり、しばらくその場から動けなかった。
ホント勘弁してよ……
絶対に勝てないじゃん……




