トリカブト
「好きです。付き合ってください!」
これで、今月何人目だろう。顔を赤く染めた男子生徒を前に、私はひっそりとため息を落とした。正直、こんなことは早く終わらせて、最近はまっているミステリー小説の続きでも読みたい。
目の前に真剣に告白してくる人がいるのに、失礼だって?その心配は必要ない。なぜなら私は、本来この舞台の登場人物ではないからだ。
「ごめんなさい。あなたのことよく知らないの」
隣で発せられた声に、今度は隠すことなくため息をついた。今回もダメだったか。我が親友のお眼鏡にかなう男はいつになったら現れるのだろう。
自分が一部から、この親友を守る騎士のように言われていることは知っている。確かに、過保護になっていることは否めないし、昔色々あったから、そういう風に周りから見られるようにしたのが意図的にであることも認めよう。
だけど、だからと言って。告白の現場に私がいる意味はないのだと、誰か気づいてほしい。もし気づいている人がいるなら、早くツッコミを入れてほしい。
告白する側もされる側も、なんで私がいるのが当然みたいな顔してるんだよ。実はすっごい気まずいんだぞ。
早く、このふわふわとして目を離したらどこかへ連れ去られそうな親友を守ってくれる彼氏が見つからないかなぁ。
そんなことを願いつつ、私は遠い目をして、この告白劇が終わるのを待つのだった。