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ホルトソウ


「ほら、彼女ご覧になった?」

「あんなはしたないこと。どんな教育を受けてきたのかしら」

「きっと何か怪しい術でも使ったに違いありませんわ。あの方々がああも簡単に……」

「婚約者の方々もどんなにか心を痛めていらっしゃることでしょう」

「まったく、身の程を弁えなければならない立場だとなぜわからないのかしら」


……正直に言おう。その意見には私だって一部を除いて全面的に同意する。一部を除いている時点で全面的同意でないことは、今は問題ではないので置いておこう。


柱の陰に隠れて女子生徒たちの波をやり過ごした私は、小さくため息をついた。

現在、ここハネシィス王国の王立学院では、奇妙としか言いようがないことが起こっている、と専らの噂だ。そこに在籍し、この国の未来を背負って立つ有望な若者たちが、1人の女子生徒に入れ込み、家同士の契約として選ばれたそれぞれの婚約者をないがしろにしているのだ、と。


困ったことにと言うべきか、不幸中の幸いと言うべきか。彼らの過ちは、婚約者をないがしろにし、1人の女子生徒に入れ込んでいるという、その一点のみ。学院の内外での仕事はきっちりこなし、なおかつその仕事の質が極めて高いというのは、タチが悪いとしか言いようがない。これが仕事のできない愚か者なら、親たちも簡単に彼らを廃嫡にしたものを、能力が高いばかりに二の足を踏んでいるというのが現状である。そう、一部を除けばという修飾語はつくけれども、噂ではなく現状なのだ。このことで、国の上層部の方々は頭を抱えていらっしゃるのだとか。



さてここで、その噂の中心人物であり、先ほど散々な言われようをされていた『彼女』というのが、この私のことである。


一つ言い訳をさせてもらえるなら、これは私にとっても不本意な状況なのだ。更に言わせてもらえば、実情は噂よりももっとひどい。


なんせ、奴らは私に恋愛という意味での好意は全くといっていいほど抱いていないし、それなのに全部わかってやっているのだ。そしてここからがひどいのだが、奴らの婚約者たちは本当に良い女性たちで、奴らは彼女たちを好いているのにわざと私に執着しているような素振りを見せる。婚約解消や婚約破棄をする気など全くないと、私にわざわざ明言しやがっている。おや失礼。腹が立つあまり、少々言葉遣いが不適切だったようだ。

とにもかくにも、奴らの性格はひん曲がっているのだ。



いくら私にも利点がある、というかこの道しか選べなかったからといって、こんな人たちに振り回され、かつ現状を知らない他の人たちに悪し様に言われるんだから、私だって色々ストレスが溜まるし腹が立っているのだ。


なんとかして奴らをぎゃふんと言わせてやりたいと、そう今日も思いながら私は奴らに呼び出されている場所に向かうのだった。



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