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だんだん  作者: 武上渓
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だんだん3話



ー3話



「小林くん。賛成できない」

光治は、カメラの背面モニターを見ながら言った。

「危険は承知です」

「普通の街では、危険は回避できる。スマホや携帯も警告してくれる」

光治は背面モニターに、瓦礫の街で倒れている男の写真を出して、小林に見せた。

「彼は。流れ弾跳弾にやられた。ビュッと音がする。体を見回す。背中を見てもらう。だが、急所に当たっていればすでに死んでいるんだが…。撃つ奴が見える訳じゃない。映画のように銃声がする訳じゃない。危険ではない。生きているのが不思議な世界だ」

小林は画像を見た。

「行きたいんです。ファンが生活している街に」

「行って。どうする?何ができる?巨大な力が更地にしようとしている場所に?」

「彼らが見ているものを、僕もその場所から見なければ。もう、歌えない」

「そうか……しかし長過ぎるんだ。湾岸戦争から、何年戦ってるんだ」

光治は彼方を見るように、虚空を見た。

「行ってみるか?小林くん。私の知り合いがいる村がある。安全じゃない。安全な所なんてない。ただ、地形的に逃げやすい。そこの地理は熟知している」

小林は虚空を見る光治を見た。

「はい」

「ただ。稲沢さんと春菜の許可をとってくれ。君の命は君だけの判断でリスクを負うべきでない」


春菜は生還し続けている光治と行動するなら良いと言ってくれた。

稲沢さんは、事務所には黙っているから行って来なさいと言ってくれた。

1週間後に、日本を離れた。

イラクに降り立った。

トヨタの4駆で3日間走る。さらに、山岳地帯を2日歩いた。

瓦礫の村に、陣地が構築されている。

髭もじゃの男が、光治と肩を叩き合う。

小林を見た髭もじゃは、目を丸くして叫んだ。

「コバヤシ?コバヤシ!オォー」

陣地から、地面がボコッと開いて男たちが出てきた。

女たちも子供たちも集まってくる。

小林を取り囲み歌い始める。

「ハルトモハーモニー?」

歌詞はアラビア語だった。小林はハミングでハモった。

サビの途中だった。

体が引っ張られ、そのまま穴の中に転げ落ちた。


物凄い力で奥に引っ張られて行く。真っ暗で何も見えない。

不意に、LEDライトが目の前で光って見知らぬアラブ人の顔が目の前に現れた。

上の方で、ドン…ドンと鈍い音が連続して聞こえる。

「ジャマルです。小林さん。名古屋の愛工大にいたがや」

「光治さんは?」

「別の穴や。始まる前に気づいたから大丈夫」

「砲撃?」

ジャマルは土の天井を見る。

「空爆やね。この地下濠はバンカーバスターでしか潰せへん。空挺の降下を隠す為に空爆する。コバヤシさん。入って来ますよ。戦争をご覧に入れます」

ジャマルはタブレットを開く。アラビア文字と、地下濠のマップに無数の点が蠢いている。

土の壁に穴が開いていて、ジャマルはタブレット画像を見ながらライフルを突っ込みドンと撃った。

30分が過ぎ、ジャマルの緊張が緩んだ。

「6人編成。6チーム全滅。被害なし」

「36人死んだ?」

「撤退支援ヘリの3人に、上空警戒ヘリの6人プラス」

「強いな」

「最新式だ」

ジャマルはライフルを小林に見せる。

「世界中の兵器メーカーの研究開発から試作品が持ち込まれる。使って、レポートを送る。敵の武器は量産品で、使った事のあるものばかり」

「待ってくれ。そんな事。敵に試作品?」

「敵?同業者だ。テロリスト、反乱軍、反政府ゲリラが居るから、各国の軍が駐留出来る」

「じゃぁ…今の戦死者は?」

「テスト用のモルモットだ。けっこう粘ってくれた。良いデータが採れてる」

「狩られているのは?駐留軍?」

「違うね。各国の軍事予算だがや」

「戦場って?」

「テストサイト。実験場だがや」

ザーっ

ジャマルの姿が砂の雨の中に消える。

その中から揉み合うジャマルと迷彩服が出てきた。

迷彩服はジャマルのアゴを左手で押さえつけ、右手でナイフを振り上げている。

小林は、転がっているジャマルのライフルを拾って、先に装着されている銃剣で迷彩服の背中を突いた。偶然指が掛かっていた引き金が弾みで引かれた。

ドンッ

ジャマルは、貫通した銃弾を避ける為に体をひねった。

反動で銃剣が抜ける。

後ろ向きにしりもちをつく小林に返り血が吹き掛かる。

ナイフを振り上げたまま、迷彩服が小林の上に倒れ込んだ。



 

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