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だんだん  作者: 武上渓
2/17

だんだん1話



ー1話


黄色いベストを着た人々が走っている。

シャンゼリゼ通りでは、お洒落な店のガラスが叩き割られ、ルノーが燃えている。その中で警官とデモ参加者が殴りあっている。

ライブは中止になり、小林も春菜もホテルから出られない。

20才になり、日本で大学に通っている真由子から、動画メッセージがパソコンに届いている。


!ハッシーくん前で初路上ライブです!

平穏な池上商店街で歌う真由子が笑っている。


「どっちも現実?」

春菜はホテルのテレビとパソコンを見比べて言った。

「あぁ。今、光治おとうさんが、画面を横切った。悪い夢を見てるようだ」

「えっどこ?」

殴られて倒れている人が映り、画面に光治が現れた。抱き起こして画面から消える。

「お父さん……」


小林はツアーで、こうした光景に出会うたびに、表情をなくして行く。

インタビューに政治的発言が増え、稲沢さんに注意される。

「中立を保ってください」

今朝も念を押された。 


海外のファンからは、苦しみが訴えられる。

スタッフが翻訳してくれるメッセージには、人はここまで無慈悲になれるのかと…事実が伝えられる。

記者や編集者のフィルターを通っていない言葉は、あまりにも生々しい。 

もし、ホテルを飛び出し、光治の所に行ったなら。そこから戻らないであろう自分を怖れた。


「小林くん」

自分の想いに入り込んでいた小林は、ビクッとした。

「もうさ。ハルトモのコンセプトだと、限界じゃない?」

政治的な物にかかわらない。夢を歌う。小林と春菜アコギ2本のみでプレイする。それがハルトモのコンセプトだ。

「どうしたい?」

春菜は思いつきで言わない。決意してから小林に言う。

「ピアノをさ。本格的に勉強してハルトモに入れたい」

「もう、先生も決めてるんだろ」

「どうして知ってるの?」

「春菜は言う前に決める。付き合う時も、結婚する時も、ハルトモを始める時も。それを汲み取って現実にするのが、僕の役割らしい」

「ご免なさい。なんか上手く言えなくて。言えない内に、小林くんがやってくれる。いつも。頼りすぎだね」

「頼られなくなったら、寂しいから気にしない」

「うん」

「もう。ツアーもほとんど中止になるし、日本に帰ろう。稲沢さんに相談する」

稲沢さんは、黙ってツアー中止の大惨事を強行してくれた。稲沢さんは、すでに予測して打てる手は打ってあった。

ハルトモは、日本に帰国した。




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