享楽家の野望?〔中編〕
ふむふむ、ブレスってのは魔法の仲間だったんだね。
よくよく考えたら体内から何かを吐き出すって仕組がまるで分からないしね。
分からない上に原料みたいな物を体内に保管してたとしたって、どこに?って感じだし。
あっ!
そうか、私の【頬袋】みたいに【ブレス袋】なんてのが有ったら十分可能なのか。
自分の事を棚上げしちゃってたよ。
でも、ま、この世界のブレスは魔法の類みたいだから、それで良しって事だね。
それを踏まえて分からない事が1つ。
「力有る言葉ってなに?」
「力有る言葉ってのは、使う魔法の名称っす。名称を言葉にすると威力や範囲が増加するっす」
ほむほむ、あれだね。
『ファイアアロー』とか『サンダーボトル』って叫ぶ系のやつだね。
叫ぶ系・・・私には恥ずかしくて出来ないよ。
そうゆうのは厨二心満載の人か、この世界の人に任せるよ。
力有る言葉の事は分かったよ。
って事は呪文の詠唱みたいな物も有ったりするのかな?
イメージだと力有る言葉とセットって感じなんだよね。
「詠唱?って何すか?全く分からないっすけど、魔法はスキルで獲得するものっす」
「獲得しないと絶対に使えないの?」
「んー・・・その辺りはノスフラトさんに聞いて欲しいっす」
ノスフラト君は魔法の専門家だったのを忘れてたや。
「んじゃ、聞いて来る!」
「はーい」
猛烈ダッシュ!
例の瞬間移動を使えば良いだろうって?
あれ、結構疲れるんだよ?
しょっちゅう使うもんじゃないんだよ。
「ノスフラト君!斯く斯く然々ってどうなってるのかな?」
「ふむ、使えなくはないが、精霊にどれだけ好かれているかが鍵になるのである」
「精霊に?」
「魔法と言うのは、精霊の力を圧縮具現する事なのである。よって精霊に好かれていればスキル無しでも発動出来るのである」
なるほど、精霊にね。
私は好かれてるのかな?
好かれているか調べる方法って無いのかな?
使ってみたいのか?って。
そりゃさぁ、せっかくファンタジーの世界で魔法があって可能性が零じゃ無いなら使ってみたくなるのが普通だって。
「シズネ殿がであるか?・・・残念ながら好かれていても魔法は使えんのである」
「何で!?」
「魔力の数値が低すぎるのである。初歩魔法であっても、魔力を200程消費するのである」
「ガーン!」
私・・・魔力21・・・10倍っすか!
今のペースで増加しても、えーと・・・4ヶ月で8上がったから・・・90ヶ月位?
9年先じゃないか・・・
しかもだよ、増加率が上がる可能性も有るけど、止まる可能性だって有る、下手すりゃ下がる可能性だって・・・諦めるしか無いのかな・・・いや!
私もブレスを吐ける様になれば!
「残念ながら無理である、ブレスは生まれながらに属性を持っている竜魔族の固有の能力である」
「さらに、ガーン!」
魔法・・・この世界には無い!
有ると思ったのは気のせいだっ!
「シズネ殿、諦めるにはまだ早いのである。魔力も訓練で上昇するのである」
「ホント!」
「うむ、シズネ殿は既にやっているのである。何かを集中して取り組むのである、それで上昇するのである」
「なるほど!じゃあじゃあ、いつか使える様になるかも知れないんだね?」
「うむ、可能性は高いと考えるのである」
そっか、そっか、やったね!
私、ガンバる!
「ノスフラト君!ありがとう!」
またまた猛烈ダッシュ!
体力は有り余る程有るから息切れしないんだよね。
「スカージュちゃん!あのね!私もいつか魔法が使えるかも知れないって!」
「マジっすか!良かったっすね」
「うん♪・・・で、限界はまだ遠い?」
「もう少しっすね」
「そっかガンバ!」
限界が来てからが本日のメイン課題なんだよ。
さぁ、早よ来い限界!
・・・
・・
・
「無理っす!もうダメっす!」
意外と待ったな。
10分位は待った気がする。
「お疲れさまー。どんな感じ?」
「んー・・・魔力が残り少ないっす、1発分も残ってないっす」
「そっか・・・んじゃラス1いってみようか♪」
「うぇぇー!マジっすか無理っすよダメっすよ!」
「何で?1発分って言うけどさ、残ってるならちょっとはいけるでしょ?」
「えっ?いや・・・どうっすかね?」
「分からないなら尚更やったみよう♪」
限界を知るってのは、そういう事なのさ。
残ってるなら限界じゃないのさ。
私は体力の方で何回も限界を超えてるもん。
だからスカージュちゃんも魔力で限界を超えよう!
「魔力0になったらどうなるだろうね?楽しみだよ♪」
「ふ・・・不安しかないっす・・・」
「因みにねぇ、体力が零になると即睡眠。気が付くのは翌朝だよ」
「魔力0になったら・・・」
「でもね、体力が残り少ないくなったらね、フラフラして眠かったよ。今、何かいつもと違う所はある?」
「これと言ってないっす」
「そか・・・」
昏倒とか脱力とかはしないのかもなぁ。
なんとなくだけど、身体に変調を起こすステータスは生命力、体力、精神力だけなのかもね。
おっ!撃った・・・いつもと変わり無い様に見え、あれっ?もう終わり?早くない?
・・・そうか!スカージュちゃんのブレスは力場からエネルギーを小出しにするから、魔力が残り少ないと早くおわっちゃうんだ。
なるほどね、で・・・スカージュちゃんは大丈夫かな?
「身体がおかしいとか気分が悪いとか無い?」
「無いっす」
「魔力の上限はどうなってる?」
「上限?・・・凄い! 200も上がってる!」
ステータスは使えば使うほど上昇するって事で間違い無いみたいだね。
でも、200って少し少ない気もするな。
体力は500位は余裕で上がったからね。
何が違うんだろう?
「シズネさん! 200っすよ200! 凄過ぎっす!」
「200ってそんなに凄いの?」
「当然っす! 普通1とか2しか上がらないんす。頑張ったって10位っす」
「それは、今みたいに使い切ってって事?」
「違うっす、零になるまで使う人は居ないっす」
「・・・なら、凄くないかもよ?」
「えっ?」
使い切れば上昇の度合いが大きいのは普通なんだと思う。
それが知られてないのは、やる人が居ないから。
とすりゃ、誰でも使い切れば200位は上がるって事なんだと思うんだよ。
別段、凄い事じゃないと思う。
「シュヴァツ君が同じ事をやって、同じ位上がったら当然の事かも知れないじゃない」
「前例が無いだけって事か」
「まぁ、上がるのは分かったし特に体調にも変化は無いし、魔力の底上げ頑張ろうか!スカージュちゃんの最強伝説が本格的に始動だよ!」
「まだ諦めてなかったっすか・・・」
「諦める理由がない!先ずは追い付け追い越せノスフラト君とユグスちゃん!だよ」
「は、はいっ?何を言ってるっすか!現役魔王を追い越すって・・・夢物語っす」
また気弱な事を言い始めたよ。
高々20000ちょい上げれば追い付くんだよ?
1日200なら100日で追い付くんだよ。
2ヶ月かからないんだよ?
夢物語でも無理難題でもないよ。
「最短で100日だけど、毎日できるとは限らないから、もう少し掛かるだろうけどスカージュちゃんなら出来る!やってくれなきゃ困る!」
「・・・困るってなんすか?」
「えっ?・・・」
私の計画だと名実共に最強になってもらうからさぁ。
どんな計画かって?
それはね・・・
「スカージュちゃんには世界の魔王になってもらうのだよ。手始めに、そこに居る竜魔王をその座から引きずり下ろしスカージュちゃんが竜魔王になる。この時『ふんぞり返って威張り散らすだけの現竜魔王には竜魔族の未来は任せておけない!志を共にする者よあたしに続け!』って感じで扇動すれば同士は見付かるでしょ」
「ちょっと待って下さい!・・・
「待たない。竜魔王になったらノスフラト君に人魔王の位を譲ってもらうでしょ」
「だから、ちょっと・・・
「その後はユグスちゃんと新獣魔王を説得して、魔王位4つゲットだよ!その後は配下にしたノスフラト君、ユグスちゃん、アイシャさんを従えて他の魔王を撃破だっ!」
「それこそ夢物語・・・
「魔族界を統一したら人間界も統一して完了。どう?完璧でしょ?」
「どこがですか!穴だらけっす!」
おもわず首を傾げちゃったよ。
だって穴なんて無いと思うもん。
「まず、あたしが父上を討伐するって無いです!」
「なんで!あんなのに竜魔王やらせとくよりスカージュちゃんがやる方が絶対に良い!」
「そういう問題じゃなくて、娘が親を討伐するなんて有り得ないです!」
「私の居た世界じゃ過去に親子とか兄弟で争ったって事例はたくさん有るけど?」
「それは他の世界じゃないっすか!」
「えぇーじゃあ、この世界の人は親子喧嘩とかしないの?」
「しますけど・・・」
「なら討伐しよう!」
「親子喧嘩のレベルを逸脱してるっす!それに絶対上手く行かないっす!」
「大丈夫だよー。ノスフラト君、アイシャさん、シュヴァツ君、後方支援でミランダさん、これだけでも上手く行くって」
「シズネさんは?」
「私が表立ったらスカージュちゃんは私の方が強いとか言うでしょ?だから影の指示者って事で」
「あたしは傀儡っすか?道具っすか?」
「道具なんて人聞きが悪いなぁ、操り人形と言って。裏で色々と画策して成し遂げる!なんか憧れるじゃない」
「いやいやいや、あたしの意志はどこに・・・
「画策するのは世界征服だけだよ?統治とかは全部スカージュちゃんが考えてね」
「メンドクサイ所は丸投げっすか!」
「あっ!そうだ、くっくっくっ・・・反スカージュ勢力を纏める役を私がやろう」
「なっ!それって・・・
「そして、いざ決戦って時に罠に掛けて一網打尽だよ!」
うーん、我ながら名案だね。
裏方に徹すれば私の正体はバレない訳だし、必ず上手く行く作戦だよ。
「悪魔だ・・・やっぱり悪魔だーっ!」




