お務めご苦労様です〔中編〕
我ながら子供っぽい捨て台詞を吐いた後は、森の中に逃げたんだ。
揃ってポカーンとしてたけど知ったこっちゃない。
だって、そこに居たくなかったんだもん。
今?
今はね、ミラクルナッツを拾いながら散歩してるよ。
このミラクルナッツも、どんだけ落ちてるのかな?
幾ら拾っても無くならないんだよ。
もう今は、普通のご飯を食べてるから、要らないって言えば要らない。
でも何か拾っちゃうんだよね。
非常食は大いのが良いと思うけど、今ストックが800個になりました。
・・・有り過ぎだね。
何か使い道ないかな?
うーん・・・一応ナッツなんだし、お菓子とか?
ミラクルナッツのクッキー♪
・・・ミラクルナッツって火を通したら美味しいのかな?
帰ったら試してみようっと♪
そうだ!
クッキーを作るならオーブンみたいのも造らないとダメか。
・・・なんか造る物が増えちゃったな。
「あっ! キノコだっ! いっぱいある!・・・食べれるのかな?」
・・・
・・
・
とりあえず採って帰ろう。
ミランダさんなら食べるか知ってそうだしね。
あぁーあ、とうとう限界超えちゃったかー
ここ何日か色んな事が有ったから、仕方ないのかもね。
さてさて、甘えん坊さん達に説教しに行かないとねー
私もシズネちゃん同様、説教は好きじゃないんだけどな。
「あれは・・・なんだったんだ?」
「分からないっす。あんなの初めて見たっす」
ふぅ・・・ダメだこりゃ。
「なんか面白かったっす」
「そうだな、あははははは」
「あなた達」
「うぉっ!ミランダ!どっから湧いた?」
「人を虫みたいに言わないでくれるかなー?」
「すまん・・・」
こうゆうのはシズネちゃんも嫌いじゃないし、自分でも言ったりするから良いんだけどね。
「あなた達、あんまりシズネちゃんに甘えたらダメだよ?」
「?・・・いつ甘えた」
「あたしも今日は甘えてないっす」
それもそうか。
自覚してたら、もう少し違う態度だろうし。
「シュヴァツ君は?・・・スカージュちゃん、最小火力でブレスを撃って!」
「えぇっ!なんでですか!」
「じゃあいいわ、ノスフラト君お願い」
「うむ・・・!!」
「うわっ!」
力有る言葉を無しか、それなら威力も弱いね。
「ノスフラト君?シャドウバイント?」
「いや、ダークネスバイントである。シャドウでは、ミランダ殿は弱いと思うのではないか?」
「そうだねー」
「いきなり何ですか!」
「説教の時間である」
「説教?・・・話が見えないのですが」
「見えなくて良い。直ぐに分かるのである」
単刀直入に聞くからね。
「シュヴァツ君、君はシズネちゃんに甘えてる?」
「・・・甘えてますね。住む所にしろ食べる物にしろ全てに甘えていると思います」
シュヴァツ君は分かってるんだ。
「そこのお二人さんも分かったかな?」
「あたしだって料理はしてるぞ」
「アイシャちゃん?シズネちゃんが火の近くが怖いって言ったの本気にしてる?」
「違うのか?」
火が怖いなら発熱石で焼けば良いんだし、やりようは幾らでもあるのよ。
「アイシャちゃんは狩りも料理もしなかったら、1日何をして過ごすの?暇を持て余すんじゃないの?」
「それは・・・」
シズネちゃん自身が気が付いているとは思えないけど、凄い気を使ってるのよね。
他に居場所を作れるアイシャちゃん、スカージュちゃん、シュヴァツ君はもちろん。
他に行く当ての無い私やノスフラト君にまで使ってる。
そこまで使わなくても大丈夫だと思うんだけど、これは性分だろうから何も言わなかったんだけど。
裏目に出ちゃったかも。
これを機会に3人にも知ってもらうのが良いね。
「スカージュちゃんはシズネちゃんをお姉ちゃんみたいに思ってるみたいだけど、あれはお姉ちゃんってのとは違うからね」
「えっ?」
そう、あれは違う。
あれはまるで。
「母親のする事に近いね」
「母親?」
「そうよ。こう言っちゃ悪いんだけどね、幼児に接するのとあんまり変わらないわね」
「・・・幼児」
「スカージュちゃんは年齢の割に幼い所が有るからね、シズネちゃんは本能的に気付いて接してるのかもね。ほら、スカージュちゃんが泣くと何を置いても構いに来るでしょー?」
「・・・はい」
「スカージュちゃんの事を馬鹿にしてる訳じゃないんだよ。シズネちゃんはスカージュちゃんが可愛くてしょうがないだけなの」
スカージュちゃんの持つ人懐っこさで可愛さも倍増してるんだけどね。
可愛さって言えばさ、アイシャちゃんもだよ。
「アイシャちゃん?シズネちゃんが怒られても可愛いって言ってるのは何でだと思う?」
「・・・分からない」
「ふぅ・・・心底思ってるってのもあるけど、アイシャちゃんが認めないからってのもあるの。これも少し親心みたいのが含まれてるの」
「・・・親心?」
「そ、私から見たってアイシャちゃんは可愛い所は有るもの。スカージュちゃんから見て、可愛い所はある?」
「え・・・と・・・」
「正直に言って良いよ」
「有ります」
「分かった?可愛い言われて否定するのが駄目って思ってるの。可愛いんだから自信を持ってって言ってるのと同じなんだよ」
気遣いが親心に変化するってのも変な話なんだけど、本気で嫌みたいだからね。
自分が好きな人に嫌われるってのが。
その割に手加減無しにからかったりするってのも変だけどね。
そう言えば、3人は知ってるのかな?
「3人はシズネちゃんの部屋がどこにあるのか知ってる?」
「シズネの部屋?」
「そう言えば知らないっす」
「どこにあるんですか?」
「無いよ」
「「「えっ?」」」
「シズネちゃんの部屋は無いよ。アイシャちゃんが来る前は有ったのよ。本が2冊も入れば良い位の小さい部屋だったけどね。私もこないだ食堂で寝てたのを見るまでは失念してたけどね」
「我輩も書庫で寝ているのを見掛けるまでは気が付きもしなかったのである」
「なんで無いんだ?」
「そうっす!何で?」
「まず、自分で考えて」
答えはシズネちゃんを知ってれば簡単なんだよ?
私はね、あの子ほど分かり易い子は知らない。
「何となくでも分かる?」
「「「・・・・・」」」
「そ、ノスフラト君は分かるよね?」
「うむ、恐怖からと推測するのである。シズネ殿は自分の造った物や提案した事の反応を頻りに気にしているのである。我輩の部屋の完成時などは『狭くないかな?天井はもうちょっと高い方が良いかな?ゴメンナサイ、床に滑り止めの加工してなかったや、直ぐやるね』などと気にして居たのである」
やっぱりシズネちゃん真似が上手いよなぁ。
「何故に気にするのか。拒否されるのが愛想を尽かされる、嫌われると思っているからである。なので、皆が喜び快適になるようにと自分の事は一番後回しにしているのである」
「追加するならね、嫌われたりしたら出て行っちゃって会えなくなるのがホントに嫌みたいだよ。まぁシズネちゃんの事だから、どこに造れば良いのか分かんないってのも有るかもね」
出て行ったら次にまた来るかも怪しい辺鄙な所だしね。
来ない確率の方が高いって私でも思うからね。
享楽家なのは根っからだと思うけど・・・最近のはホントに楽しんでるのか疑問に思う事も有ったくらいだから。
悪い予感が当たって素が出ちゃったんだろうな。
そうだった忘れてた。
「そうそう、さっきの去り際のシズネちゃんが素だから。7歳のシズネちゃんだからね」
「なに!あれは7歳なのか?」
「ボロ雑巾は黙ってる!ボロ雑巾には別個で説教するから!」
「・・・すまん」
ヴラド君も上限を超えた原因の一端だからね。
それ以外にも説教しなきゃいけない事もあるし。
「3人に素を見せないのも自覚してないだろうね。元々我が儘を言ったり駄々をこねたりする子じゃ無いみたいだから素を隠すのが当たり前になってるのかも知れないけど」
「あたしの獣化を見たいってのは我が儘じゃないのか?」
「違うねーそれはアイシャちゃんから言い出した事でしょ。約束を守ってくれないから言ってるだけだよ。まさか、あれは嘘だから、冗談だから、って言って無かった事にするの?」
「そんな事はしない!」
「だよねーそんな事をしたら、私もノスフラト君も黙ってないからね」
「うむ」
これ以上長々と言っても仕方ないから結論としようかな。
「シズネちゃんが3人に絶対にしない事って何だか分かる?何個か有るけど分かり易いのは2つだね」
それくらいは分かるよね?
私やノスフラト君にもしないんだから。
「「「・・・・・」」」
分からないのか・・・
まだまだ若いって事なのかな?
アイシャちゃんは歳は重ねてるけど、我が儘を通して生きて来たから幼い部分が多いしね。
「ノスフラト君?」
「ふむ、シズネ殿は命令や強要はしないのである」
「それと自分から手を出す事もないわ。アイシャちゃんの時も、水竜君、ボロ雑巾もそう。使い魔の時はノスフラト君が煽ったしね」
それに乗るだけの事は言われてたしね。
「でも、様で呼んだらダメって、後、仕事も・・・」
「仕事をしてなかったらスカージュちゃんは今どうしてた?私は様で呼ばれるの嫌いだよ」
「我輩も様で呼ばれたくはないのである」
「あたしも様はイヤな、あれ鬱陶しいんだよな」
「・・・・・」
自覚が無いにしろ、今までシズネちゃんは間違いって呼べる事は最初の猫に引っ掻かれた時だけ。
それ以外は一切していないって断言したって良い。
ふざけが過ぎるのは玉に瑕だけど、それは愛嬌って事にして。
「長々と話したけどね、シズネちゃんの考えてそうな事をもう少し考えてあげて欲しいの。自覚してないから、良い方に考えて欲しいのよね」
「でも、今日はシュヴァツを誘惑したって言ってました」
「誘惑?・・・されてないぞ?勧誘ならされたけど、ちゃんと聞いたのか?」
「聞いたよ!誘惑って言ったもん!」
「全部聞いたのか?」
「え?えっと・・・」
「やっぱり問答無用だったのか。それは直した方が良いって言ってるだろう?」
「でも・・・でも・・・」
「スカージュを責めてる訳じゃない。ちゃんと聞かないと・・・
スカージュちゃんはシュヴァツ君に任せよう。
聞いてたら私がイラッとしそうだ。
次はボロ雑巾だね。




