お務めご苦労様です〔前編〕
うん、これくらいで良いと思うよ。
それで、これからどうやれば良いんだろう?
熟練度が上がらなくなるまでセイバー・オブ・デットリーシンで切れ込みを入れて。
シュヴァツ君に借りた鍬で掘り起こして集めた土・・・
掘った所の横に山になってるんだけど、高さを揃えて均すだけで良いのかな?
なんか違う気がするんだけど・・・どうすれば良いのかな?
「ティファ嬢ちゃん」
「スナフキン爺様?シュヴァツ君より珍しい人が話し掛けてきたよ、なんだろ?」
「かっかっかっ、ティファ嬢ちゃんは素直じゃの」
「嘘は良くないよ?」
「その通りじゃの」
スナフキン爺様はこの後どうすれば良いか知ってるかな?
「随分掘ったの、後は均して固めたら下地の完成じゃの」
「固める?・・・魔法で?」
「嬢ちゃんは、重石を置いて固めておったの。ほれ、嬢ちゃんの作った庭の隅に置いて有るじゃろ」
あぁ、『拒絶の壁』の塊で潰すのか。
何個か持ってこよう。
「ティファ嬢ちゃん、今日来たのはの嬢ちゃんが移動を始めたのを伝えるためじゃの」
「えっ!かあさまが!?」
「うむ、様子を見に行ったら居らんかったでの。ここに向かって来ておるの」
「ホント!じゃあ、もう直ぐ帰って来る?」
かあさまが、かあさまが帰って来るよ!
「直ぐでは無いかも知れんの。嬢ちゃんの進む先には間違い無く嬢ちゃんの興味を引く物が、いや、人が居るでの」
「・・・排除するよ!どっち?」
かあさまの帰りが遅くなるのはイヤだよ。
邪魔は無くすよ!
「まてまて、ティファ嬢ちゃんは庭を見せてビックリさせるのじゃろ?直ぐ帰って来ても見せれる程になるのかの?」
・・・無理。
まだまだ時間がかかるよ。
誉めてくれるかも知れないけど、ビックリはしないよ。
「ならば少し位は寄り道をしてもらう方が良くないかの?嬢ちゃんは、ここへ戻るのは間違い無いのじゃからの」
早く会いたい・・・
でも、ビックリさせたいよ。
どうしよう?
・・・
・・
・
あれ?
様子を見に行るの?
それとも、見れるだけなの?
「スナフキン爺様、かあさまの所に行けるの?」
「今は無理じゃの、居場所を特定出来れば行けるがの」
「かあさまを連れて帰らないのは何で?連れて帰れるるでしょ?」
「嬢ちゃんに断られての、自力でなんとかするっての」
「自力で?」
「うむ、どんな思惑が有るのかは知らんがの、一度言い出したら嬢ちゃんは覆さんじゃろ?」
「うん・・・頑固だから」
「かっかっかっ、その通りじゃの。じゃが、どうしてもダメな時は頼むと言っておったでの」
・・・頑固にならないで楽しても良いと思うよ。
何で頑固になっちゃうかな?
これじゃ、私が行ってもヤダって言われちゃうだけだよ。
でも、かあさまと一緒に帰って来るのも楽しそうだよ。
でも、かあさまをビックリもさせたいよ。
「ティファ嬢ちゃん、儂は工房に戻るでの。他の連中にも嬢ちゃんが移動を始めたのを伝えてくれるかの」
「うん、分かったよ」
うん、みんなと待つよ。
それで、かあさまをビックリさせるよ。
なんかその方が良い気がするよ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
やっ!
鬼畜で外道なシズネちゃんだよ!
名実共にスカージュちゃんには悪魔王に認定されたみたいだよ・・・
何が有ったのかって?
実はね。
・・・
・・
・
うーん・・・
仲介役を当てにしていたアイシャさんは、その事を忘れてノスフラト君の所に行っちゃったし。
スカージュちゃんはテンションゲージが上がりすぎで薄ら怖い笑みを浮かべてブレスを撃ちまくってるし。
シュヴァツ君は図面を書くのに集中しちゃってるし。
竜魔王に貸しを作るのはイヤだし。
やっぱり自分で何とかするしかないのか・・・
と言ってもなぁ、逃げ回ってちゃ何ともならないよなぁ。
私からも攻撃するしかないかな。
ならば・・・
「ふっふっふ、スカージュちゃん!この短時間で、って、あぶなっ!こらぁ!ちっとは聞け!」
「問答無用っす!」
はいはい、そうですか、わかりました!
「んじゃ、私も本気で行くよっ!」
あれ?攻撃が止んだ?なんで?
スカージュちゃん?
顔色が悪くないかい?いったい何が?
急に座り込んで・・・そこで泣くのかっ!?
なんでっ!
「あたしも・・・あたしも父上達みたいに粉々になっちゃう?うぇーん」
私にはそんな芸当は出来ません!
キレた私のオリジナルだからね。
「鱗も・・・鱗も剥がれて素っ裸にされちゃうぅ。うぇーん」
それは、出来るかなぁ。
でもやらないからっ!
つか、鱗は服なのか?
違うだろ?
水竜君も、竜魔王も鱗を粉々にしてから人型になっても服を着ていたよ。
「うぇーん」
「あぁ!もう!スカージュちゃん?そんな事まではしないからね、泣き止んでね」
むんず!
何事!?
「えへへ、捕まえた♪」
「なっ!嘘泣き!騙されたっ!」
騙された上に後ろ首を掴まれてる、そこはイヤなの!
「大暴れモード・・・
「シズネさん!暴れれる立場ですか?」
「・・・違います」
「今から離しますけど、逃げたらいつか不意打ちしますからね」
「・・・はい」
無理!
今のスカージュちゃんの命中精度なら不意打ちされたら当たる・・・間違い無く黒焦げだよ。
「シズネさん!正座!」
「無理っす!身体の構造上出来ません!」
「じゃあ、気を付け!」
「はいっ!」
スカージュちゃんの説教タイムの始まり始まりー
・・・
・・
・
「ふむ、珍しいものが見れたのである」
「ノスフラト・・・俺に用か?」
「いや、材料を取りに来たのである」
「そうか・・・1つ聞きたい」
「何であるか?」
「ここはいつもこんななのか?」
「ふむ・・・」
いつもこんなでーす。
でも、スカージュちゃんに説教されるのは初めてでーす。
スカージュちゃんの説教・・・お母さんにされてるみたいで怖いんですけど?
「あれだけの力を持ちながら、スカージュに説教されているのはなぜなんだ?」
「シズネ殿は強さや力を嫌うのである。そして、自分が強いとは思っていないのである」
「・・・あれで弱いだと?勘違いも甚だしくないか?」
「自身がどう思うかは自由である。それに、我輩もシズネ殿は強者ではないと思うのである」
「なぜだ?俺には分からん」
「ふむ・・・確かに腕っ節は強者であるが、心根は弱者そのものである。共に備わってこその強者である」
うんうん!
さすがはノスフラト君!
私を分かってくれてるね。
そうです、私は心が弱い!
よく凹みます・・・今も凹んでます。
スカージュちゃん厳しいんだよ。
反論しようとしても、する前に潰されちゃうから何も言えずに直立不動です。
「気付いておるか?ここでは我輩やアイシャ殿の敬称が『さん』なのを」
「それは気が付いている」
「これもシズネ殿の考えである。『他に人が居ないんだし、上下なんか作っても楽しくないでしょ』との事である」
「・・・物真似・・・上手いな」
「ほっとくのである!」
自分じゃ分からないんだよねー
そんなに似てるのかな?
「あぁ、スマン。・・・アイシャの言った享楽家と言うのはそこも含めてか」
「享楽家であるか、くっくっく、正にその通りである」
「ノスフラトー!こんな所に居やがったかっ!」
あっ!
約束破った人だっ!
仲介役やってくれたら説教されてなかったかも知れないのに!
この怨みどうしてくれようか!
「シズネさん!聞いてるんですか!」
「もちろん聞いてますとも」
あうー
スカージュちゃん怖いぃ。
「何であれをシズネに渡したんだっ!」
「あれ、とは?」
「えっ?・・・あれっつったらあれだよ」
「ふむ?」
「はだ・・・あたしの素っ裸の石像・・・」
ぷっ!
凄い照れてるよ。
やっぱり・・・
「アイシャさんって可愛いな」
「やっぱり聞いてませんね!アイシャさーん!シズネさんが可愛いって言ってますよ!」
なにぃ!
チクっただと!
確かに説教は半分も聞いてなかったけどさ、チクルってどうなのよ?
「可愛いって言うなっ!」
ほら、怒られちゃったじゃないか!
あっ・・・スカージュちゃんがドヤ顔してる・・・
自力じゃないのにドヤ顔って・・・
「アイシャ?口だけで済ますのか?」
「あいつは捕まえるのか骨だっ!」
「・・・随分と丸くなったものだな」
うんうん!
アイシャさんみたいにスカージュちゃんも丸くなれ!
丸いって言えば。
「アイシャさんの丸耳はいつ見ても可愛いよね」
「アイシャさーん!耳が丸くて可愛いだってー!」
またチクった!
徒名をつけちゃる!
「スカージュちゃんの事はこれからチクリンと呼ぼう」
「な、なんすかその卑猥な呼び名は!」
卑猥?チクリンが?
・・・あぁ!
乳首に似てるからか?
それを連想する脳の方が卑猥なんじゃ?
「シーズーネー!可愛い言うなって言ってるよな?」
ピャーッ!
いつの間に近付いたんだ?
「可愛いものは可愛いんだもん!これからも言う!」
そう言って直ぐに距離を取ったよ。
アイシャさんは普段なら何かするとか無いけど、今日はフィギュアの事と2回連続で可愛いって言ったから、お仕置きが有るかも知れないって思ったんだ。
「甘い!」
「えっ?」
「あたしもな、使える様になったのさ」
マジっすか!
筋トレの成果が出たんだ、アイシャさんすげー!
あうっ!
デコピンされたー
「これで勘弁してやる」
あうー痛いよ?痛いよー
何で可愛いって言っただけでデコピンされなきゃいけないの!
スカージュちゃんは誤解を解かせてくれないし!
「いいもん・・・もういいもん!全部私が悪いんでいいもん!アイシャさんがいつまで経っても獣化を見せてくれないのも、スカージュちゃんがチクリンなのも、ノスフラト君の顔が見えないのも、竜魔王が唯我独尊なのも、シュヴァツ君が集中するとガン無視なのも、空が青いのも、雲が白いのも、世の中で起こってる事全~部、私が悪いんだもん!あっかんべぇ!おしーりペーンペン!」




