嫌われ役って・・・〔前編〕
よっしゃあー!
とうとう獲得したぞ!
【精霊力行使】
これで精霊を召喚しなくても自力で飛べるはず。
・・・ホントに?
失敗の申し子とも権化とも呼ばれる私は早とちりも多いから、ちゃんと試してみないと不安過ぎる。
えっと・・・どうやるんだろ?
むぅ・・・分からん。
・・・ダメじゃん!
私ってホントにダメじゃん!
風の属性王に聞くかな。
ん?
熟練度500で【属性王歓待】ってのを獲得してるんだよ。
それで属性王とも顔見知りになったんだ。
属性王は良いよ。
下位精霊と違って会話が出来るんだもん!
たまーに、自分の世界に入っちゃったりもするけど、下位精霊より数十倍ましだもん。
会話って大事だよ!
では早速呼んでみよう!
「セントく~ん、ちこっと聞きたい事が有るんだ、来てもらえるかな?」
おっ!
来た来た来たー!
ちょっと強めに風が吹いたと思ったら、旋風になって大きくなったら・・・出たー
私が命名した風の属性王の旋風ウサギの旋兎君♪
どっかのユルキャラみたいな名前だけど・・・当人は知らないからオッケーって事で。
「おっ!シズネじゃーん、どうしたぁ?」
風の属性王はフランクで親しみ易いんだよね。
「あのね【精霊力行使】の使い方を教えて欲しいの」
「知らないよぉ?」
「えっ?」
「だってさぁ、おいらってオギャー!、とは産まれてないけど産まれた時から普通に使えるからぁ、知らないよぉ?」
言われてみればその通りだよ・・・私も【頬袋】っどうやって身に着けるのって聞かれても。
『ハムスターに生まれ変わろう』
位しか言えないもんな。
獲得スキルのチョイスを間違えたかな?
やっちまったぁぁぁ!
「お、おいおいぃ。そんなに落ち込むなよぉ、おいらも手伝うからさぁ、なぁっ」
「うん、ありがとう」
―3日後―
「やった!やったぁぁぁ!飛べたよ!」
「やったな!なかなか上手いぞ!」
「見事也」
「じょーずー」
「シズネなら出来ると信じてたわよ」
「アキラメノワルサ二カンプク」
「何言ってんだ、決めた事をやり遂げるって言う意志が強いっていうんじゃねえか」
「・・・・・」
「これで旅立てるねぇ」
・・・いつの間にかね、属性王が勢揃いしてたんだよね。
みんな暇なの?
「みんな、ありがとう!これでやっと帰れるよ。でもなんで、みんな来てくれたの?」
「シズネが困ってるって知ってな」
「何かの役にたてるかと思ったのよ」
みんな良い精霊だ!
泣きそうだぜっ!
「でもまぁ、シズネだからってのが一番だな」
「同意」
「私だから?」
「そうだよ、シズネはさ私達を使役しようとしないでしょう?そんな人は中々居ないのよ」
「そうだぜ!大概の奴は何かさせようとしやがる!」
「・・・それ楽しくないよ」
「全く持ってその通り、我等は在るのであって使われるに非ず」
「だよねぇそれを理解してない奴ばっかりなんだよなぁ」
使われるのか・・・楽しく無いよな。
私もそんなんはイヤだもん。
「だからぁ、そうゆう事をしないシズネが困ってたらぁ手伝ってあげたくなっちゃうんだよねぇ」
「そっか、みんなホントにありがとう♪」
さすが日頃の行いが良いシズネちゃんだね!
・・・
・・
・
ゴメンナサイ、ウソです。
日頃の行いが良かったら、こんな絶海の孤島には居ません。
「あはははは、何かまたシズネが凹んでるぞ」
「今の会話のどこに凹むところがあったのかしら?」
「不知」
「ホント面白い子だなぁ!シズネはぁ。あはははは」
「・・・・・笑」
ぐぬぬぬぬ。
好き放題言いおってからにぃ!
いつかきっと私も同じ事してやるんだからねっ!
「ソロソロカエル」
「そうだな帰るか。シズネ!またな」
「再会期待」
「何かあったら呼ぶんだよ。またね」
「うん、みんなまたねー」
旋兎君以外は帰っちゃった。
賑やかだったからちょっと寂しいな。
「シズネ!アドバイスだよぉ」
「ん?」
「寝るときは風の力で足場を作って寝なねぇ。今のシズネなら水中で呼吸ができるはずだけどぉ、水中は危ないのがいっぱい居るからねぇ」
「そんな事まで出来るの!私すっげぇー!」
「あはははは、おいら達八つの王が味方なんだから出来るさぁ」
「そっか、みんなに感謝だね!」
「だねぇ、じゃぁ、おいらも帰るけどぉ・・・
「いつもそこ居るからね、でしょ?」
「そのとおりぃ!じゃまたねぇ」
「うん、またねー」
みんな帰っちゃった・・・やっぱり寂しいかな。
でも、私はやらないと、帰らないといけない場所があるし。
寂しがってなんていられないんだよ!
ティファ!
今から帰るからね!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
うぁぁぁぁぁぁぁっ!
不安だぁぁぁぁぁっ!
私、私はスカージュちゃんに嫌われちゃったりしてないかな?
もう話してくれないとかないかな!
いーやーだぁぁぁぁぁっ!
何でって?
だって、だってスカージュちゃんの父上を物って言い切ったんだよ。
普通に考えたら・・・うわぁぁぁぁ!
絶対に嫌われるじゃないかっ!
何?
・・・そんな事を出来る訳無いだろう!
脳内みたく厚顔でも無きゃ鋼鉄の心臓を持ってる訳でもないんだからな!
だから直接聞くなんて事は干物にされたって出来ないよ!
えっ?
・・・うん、干物ってのは何となく浮かんだから言っただけだよ。
って!
そんな事はどうだって良いじゃないか!
問題はスカージュちゃんだよ。
私は・・・私はどうすれば良いんだぁ!
「何やってんだ?シズネ」
「あうーあうー」
「うぉっ!・・・ミランダの真似か?」
「あうー」
「あうーじゃ分からん!言葉を喋れ!」
「スカージュちゃん、スカージュちゃん!」
「スカージュがどうかしたか?」
えぇいっ!
ちっとは察してくれぇい!
「スカージュちゃんに嫌われちゃったかなぁ?あうー」
「あぁ、そうゆう事か。大丈夫だろ?ほれ、ミランダがフォローに行ったし、スカージュ自身も何となく察してるだろうしな」
「ホントに?ホントに大丈夫かなぁ?」
「ホントお前は、そうゆうところは臆病だな。後であたしもフォローしといてやるよ。だから・・・獣化は無しって事に・・・
「それとこれは別!絶対に見せてもらう!」
「チッ!やはりダメか!いけると思ったんだけどな」
「ふっ・・・舐めてもらっちゃ困るな、既に交わした約束を反故にするなら、約束以上に価値の有るものじゃないと無理だと知れい!」
「スカージュとの仲・・・割くと言ったらどうする、くっくっくっ」
な・・・なんて卑怯な!
約束以上の価値どころか、脅して来てるぞ。
このままでは獣化を見れなくなってしまう。
どうすれば良いのだ・・・考えるんだ、私!
「シズネはヴラドをこき使って過労死させるつもりだって言って来るぞー」
「なっ!」
考えろ、考えるんだ!
・・・はっ!
くっくっくっ。
「ならば、アイシャさんの裸フィギュアをおっちゃんに渡して来る!本人公認って事にして」
「なっ!ひ、卑怯だぞ!」
「どっちがだ!」
む!
にらめっこなら負けないぞ、何せ表情筋ありませんから。
「あたしの負けだ、裸フィギュアの展示は止めてくれ・・・さすがに恥ずかしい」
「ぷっ、アイシャさん可愛いねぇ♪」
「可愛い言うなっ!」
私の勝ち♪
虚しい勝利だけど、勝ちは勝ちだもん。
「で、あいつはどうすんだ?」
「あれ?どうもしないよ。壊した物を直せって言いたい所たけど、あいつ如きに出来る訳ないからね」
「出来たら相当な驚きだ」
「んー・・・売り物になるインゴットでも作らせるかな」
「出来るのか?あいつに」
「知らない。売り物にならないのは全部やり直しをさせるし、出来ないなら解放しない」
「お前・・・ホントに鬼か悪魔な時あるな」
「ほっといて、クズに対しては鬼でも悪魔でも、人外だろうと鬼畜だろうと、何にだってなってやる!」
性根を叩き直すなら中途半端はダメなんだよ。
徹底的にやらないと分からないからクズなんだよ。
あいつは、そんな奴なんだからね。
「ある程度は手伝ってやるけど、やり過ぎんなよ。あんなんでも一応は魔王だからな」
「ふぇ?」
あれが魔王?
竜魔王なの?
ただ偉そうにしてるだけじゃん。
実力的なもんだってスカージュちゃんに劣るし。
人望があるようにも思えないんだけど。
「竜魔って・・・終わってない?」
「あいつの家系が世襲なんか始める前は、まともだったんだけどな」
「世襲?ノスフラト君も世襲だって言ってたけど?ノスフラト君はまともだと思うけど」
ちょっとばかし変わってるとは思うけど。
理由も無く嫌ったり悪口言ったりはしないし、城で戦闘をしたら住人を巻き込みかねないってんでバカ勇者から退避して来たんだしさ。
世襲のせいには出来ないと思うけどな。
「人魔はな鳩派な奴が多いからな、基本的に知恵が回るんだよ。竜魔は鷹派が多くてな、考えるより先に行動するんだ」
「平たく言っちゃうと、バカって事?」
「バカじゃないんだよ。知恵は一応回るんだが、考えるより先に行動しちまうんだ」
私には、それってバカとしか思えないんだけどな。
知恵が回ったって、考えないならバカじゃん。
違うのかな?
「何にせよ、お前が教育するってなら、ちっとは変わるんじゃないか」
「変わるまで壁ワイヤーは外さないよ。解放したとしてもね」
「・・・ホント、鬼・・・はノスフラトだから。悪魔だな」
「悪魔王と呼んでくれ」
「あはははは、自称魔王か!」
「独りぼっちの悪魔族だっ!」
「・・・・」
「「あはははは」」




