第一異世界人発見!接触を試みてみます[後編]
本編で初めてシズネちゃん以外が出てきました。
顔の見えない謎の多い人・・・っぽくなったらいいなぁ。
こちらはシズネ隊員。
対象に接近致しました。
対象は猫の野郎なんか目じゃない位にデカいです。
正直、怖いです。
泣きそうです。
しかしっ!
頑張って接触を試みます。
さってと、遊びはこの辺までにして。
「もしもし?」
「・・・・・」
「もっしもーしっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
読書に集中してるから無視してる訳じゃないんだろうけど・・・
なんかイラっとする。
・・・・・・
いっそ噛みついてやろうかしら?
それとも覚えたての【破砕】を使ってやろうかしら?
はっ!
いかんいかん。
攻撃しちゃダメだって。
会話がしたいんだからさ。
それに勝てる訳ないじゃん、こんなデカい奴に。
でも・・・どうやったらこっちに気が付いてくれるのかな?
結構大きい声で呼んでみたんだけどダメだったしな。
・・・
・・
・
よじ登って耳元で叫んでみる?
うん・・・そうしよう。
登ってる時に気が付くかも知れないしね。
もしダメだったら・・・最後の手段だっ!
噛みつく!!
よっし登るずぇい。
「えっちら、おっちら」ヨジヨジヨジ
「えっちら、おっちら」ヨジヨジヨジ
「えっちら、おっちら」ちょっと休憩
「えっちら、おっちら」ヨジヨジヨジ
「えっちら、おっちら」ヨジヨジヨジ
凄い集中力ね、微動だにしないわね。
私も爪が刺さらない様に気を付けて登ってはいるんだけど、私の重さで引っ張られて違和感みたいのが有ると思うんだけどな。
全く気が付かないって・・・恐い位だね。
到着ぅ。
絶景かなぁ~
絶景かなぁ~
つか、これ・・・高いよ、ガクブルものだよ。
ハムスター飼ってた友達が言ってたけど。
ハムスターって2m位から落ちても何事も無かった様に毛繕いをしてるって・・・
ゴクリ。
・・・・・・・・
いやいやいやいや。
一瞬、やってみようかな?って思っちゃったけど。
絶対に痛いから止める。
ノリと空気とか無視する!
やって痛いのは私だっ!
はっ!
こっちに来て初めて少し高い所に来たから、ちょっとテンション上がっちゃった。
ほら、なんとかと煙は高い所が好きって言うじゃない。
ん?
・・・
・・
・
私はなんとかなのかっ!?
断じて違うっ!
・・・って言えないのが悲しい。
だって自分の事を、なんとかじゃないって言ってる人ほどなんとかじゃない?
それに私は利口ではない・・・断言出来ちゃうのが哀しいけど。
むっ!
またしんみりするところだったわよ!
危ない危ない。
んじゃま、ちゃっちゃっと話しかけますかね。
今は微妙な人とのコミュニケーションを成立させないと。
では。コホン
「もっしもーしっ!」
「・・・ん?」
「あっ、反応有ったっ!言葉も通じた?」
「・・・ネズミ・・・であるか?」
あれ?何でだろう?こんなに近いのにフードの中にある顔が見えないんだけど。
もしかして魔法ってやつ?魔法で見えなくしてるとかなの?魔法ってすげー!
あ・・・でも。
ハムスターって滅茶苦茶視力が低いって聞いた事もあるんだよね。
どっちなんだろうねぇ。
「おしいー!ネズミの仲間だけどハムスターって言う種類なのよ」
「ふむ・・・その話すハムスターが我輩に話掛けているとは、なかなかに理解に苦しむ状況であるな」
「え?・・・ごんめなさい。でもちょっと用があって話掛けたって訳なの」
「ほう、用とはなにであるか?」
「あのね、あなたのお尻の下に私の巣穴の入り口が有るのよ、だからちょっとだけ横にずれて欲しいんだよね」
「そうなのであるか?これは失礼をしたのである」
あら?
結構良い人なのかな。
ハムスターの話をちゃんと聞いてくれるなんて思わなかったよ。
色々と聞いてみても大丈夫なのかな?
でも、取り合えず巣穴が有る事を証明しないとね。
「普段は塞いでる出入り口だから分からないんだけどね。ほら、あるでしょ?」
「おお、誠であるな。しかし、何故に塞いでおるのであるか?」
「ん?この木の周りってドングリがいっぱい落ちてるでしょ?ご飯を取る時だけ開けてるの。開けっ放しだとさ私を食べようとする奴に待ち伏せされちゃったり、入られたりしたらダメじゃない?」
「ドングリ?ふむ・・・しかし出入りする度に空けると言うのも面倒ではないのではないか?」
「別に出入り口あるから平気だよ、ほらあそこって言っても見えないね、それにね外は恐いからドングリを取る時位しか出ないんだよね」
「ふむ・・・なら別の出入り口も塞げば良いのではないのか?」
「両方塞いじゃったらさ窒息しそうな気がしない?だからねあっちの入り口から入ると順路を知らないと迷う様になってるの」
こっち来てずっと掘ってたから何気に自慢したいんだよね。
掘った私自身が把握出来てない位の規模になっちゃったしね。
きっと迷ったら泣く!
そして、きっと元の所にも出れないと思う。
全容を立体地図にしても迷いそうなんだよね。
「ほう、どれ見せて貰うのである・・・・・こ、これは・・・・・これを1人で作ったのであるか?」
「え?・・・見えるの?」
「うむ【透視】して見ておるのである、これは凄い規模であるな・・・相当時間を掛けたのであろう」
「え?・・・どうだろう?この怪我してからだから・・・どれくらい掛かったんだろう?」
「む?・・・その怪我・・・大丈夫なのであるか?まだ完治しておらぬのである?・・・それに、その怪我をしてからなのであるか?ほんの数日ではないのではないか?それだけの時間でこの規模の物をであるか?」
「うん、そうだけど?」
「ふむ・・・これは中々に異常な出来事なのである」
「えっ!?」
そうなの?
頑張れば、命が掛かってるって思えば誰もが出来るんじゃないの?
私は頑張ったよ、でも無理とか無茶はしてないよ?
お腹減ったらドングリ食べたし。
疲れたら休憩したし。
眠くなったら寝たしね。
でもまぁそれ以外はずっと掘ってたけどね。
「うむ、何年も掛けて掘ったかの如き規模なのである、しかもこの様に入り組んでいるとは・・・うむ、恐ろしいレベルで作られておるのである」
「えへへ、なんか褒められてるみたいで嬉しいね」
「褒めておるのである、これは素晴らしい出来であるし作った期間なども考えると・・・素晴らしいの一言である」
「えっ?えっ?・・・えへへへ」
「そうである。我輩サイズの部屋と書庫を作れるのであれば作って貰いたい位である」
「うーん・・・人間サイズか、うーん・・・出来なくは無いだろうけど時間がかかりそうだね。あっ!もしかしたら岩場だったら結構早く出来るかも知れない」
【破砕】これ使ったら一気に広範囲を掘れるんじゃないかな?
1撃で私サイズ以上を砕けるみたいだし、1撃でどれくらい砕けるか知りたいってのもあるわね。
あは、ちょっとやってみたくなってきちゃった。
「岩場であるか、ちょっと行った所に『拒絶の壁』と呼ばれる人間と魔族の住む地を分ける境界の絶壁が有るのである」
「へぇそんなのが近くに有るんだぁ、私こっちに来て少ししか経ってないから知らなかったなぁ」
「む?・・・こっちに来て?元は何処に居ったのであるか?」
「あぁ、私元々は違う世界に住んでたのよ、人間としてね」
「なんと!?誠であるか!?・・・他の世界よりやって来た元人間が喋るハムスターになったのであるか。これまた珍妙な出来事である。お主は誠に希少な存在である」
希少?
希少なの私は?
あれ~チヤホヤされる要素有りって事?
いや・・・
私に優しくない異世界だから・・・
隔離監禁して観察されたり、解剖されてホルマリン漬けにされたり・・・
逃げようかな?
「ふむ・・・暫くの間お主と共に行動してもよいであるか?」
げっ!
まさかマジで隔離監禁?
「えっと・・・なんで?」
「単なる興味・・・であるな。それと説得であるな」
「説得?」
「うむ、お主に本気で我輩の住まいと書庫を作って貰いたくなったのである。どの様に作るのか興味が出来たのである」
「時間掛かってもいいなら作ったげるよ。私も貴方と居れば狩られる心配が激減しそうだしさ」
お家造りかぁ。
しかも洞窟型の人間サイズのかぁ。
なんか面白そうだね、ついでに私の部屋も作っちゃって今の生活からおさらばするってのも良いかもね。
自分の部屋かぁ。
どんな感じにしようかな?
くぁ~悩むぅ~
家具を全部ハムスターサイズで自作しなきゃいけないってのはネックだけど・・・
うん、それ込みでもやっぱり楽しそうだな。
「おぉ!では頼むのである・・・だが報酬は無いのである、それでも良いのであるか?」
う~ん
報酬と言われても身の安全以外に今欲しいい物なんて無いからなぁ。
どうしよっかな?
「今は、お金とか欲しい物とか無いから、そゆのが出来たらくれるんで良い?」
「うむ、それで良いのである、契約成立で良いのであるかな?」
「うん、成立って事で」
いろいろと楽しみだよ。
『拒絶の壁』ってどんなんだか見たいし。
木が邪魔でこっからはまるっきり見えないんだけど、拒絶って位だから凄そうだよね。
やっぱ数百メートルはある崖とかなのかな?
いや!
ここは異世界だから・・・私の想像なんて追い付かない位に凄い物かもしれないよね。
なーんか楽しくなって来たよ。
目標〈其の2〉は自分の部屋造りでっす。