竜魔族ってムカつくやつしかいないの?〔後編〕
キレた私、おつかれ!
こいつ、水竜君と違って反撃して来て大変だったでしょ?
冷静な私だったらテンパって何をしてたか分かんなかったよ。
キレた私がやってくれて助かったよ。
さてと、キレた私も大人しくなったし・・・
スカージュちゃん大丈夫!?
うん、泣いてはいないね。
でも・・・
やった相手は父上だしな、無理してるよね?
スカージュちゃんは根っこから優しいから、みんなの事をバカにした事を言った相手でも多分許しちゃうんだよな。
私は許したくないから、そこの所は合わないって事なんだけど・・・
今度ちゃんと話さないとダメだよね?
要らぬ誤解を生んじゃうかも知れないしさ。
「スカージュちゃん大丈夫?」
「えっ?な、何がです?」
「父上をボコボコにしちゃったから、大丈夫かなって・・・」
「仕方ないっす・・・父上が悪いっす・・・壊した上にみんなをバカにしたっす。シズネさんは、あたしの願いを聞いてくれたし、大丈夫っす」
「そっか、でも無理はしないでね?」
「ホントに・・・大丈夫っす」
涙目なんだよなぁ。
無理はしてるよね。
本人が大丈夫って言ってるから追求はしないけど。
やり過ぎだったかなぁ?
あっ!・・・あいつ全然反省とかをしてない。
私を睨みつけてる。
もっと何かしないとダメなの?
うーん
・・・
・・
・
あの手しかないかな?
あれかぁ・・・あれなぁ、鬼畜で極悪非道だから真似するのはイヤなんだよな。
でも他に浮かばないしな。
はぁ、気が重い・・・
「スカージュちゃん、あれ全然反省してないから、さらにやんないとダメみたい」
「えっ?えぇっ!」
「凄く酷い事をするけど、私の本意じゃないからね。本で読んだ鬼畜なシーンの真似だからね、それだけで良いから覚えておいてね」
「・・・っす」
「アイシャさん、一応見といてくれるかな?ちょっと壁ワイヤーを取って来るから」
「見とく必要は無いと思うけどな」
気は重いけど、やるなら徹底してやるよ!
絶対に考え方を変えさせないとダメな事が有るの。
人を物の様に扱う事だけはダメ。
『俺の言う事を聞いていれは良いんだ』
って、なにそれ?
スカージュちゃんにはスカージュちゃんの意思がちゃんと有るんだよ、それを無視した台詞・・・許せる訳が無い。
それだけは変えさせないと、スカージュちゃんがどんな扱いをされるか分からない。
「ただいま、アイシャさんにもちょこっとだけ手伝ってもらうね」
「おう、任しとけ」
スカージュちゃんを見ると、凄く不安そうな顔してるなぁ。
まだまだ若いし、鬼畜宣言されて平然としてる方が難しいよね。
ホント気が重い・・・
ん?この声は・・・
「タラリラッタルッタラッタルンタッタ~♪ただいまぁーマンドラゴラが大量に採れたよー♪ってヴラド君?奇抜なイメチェンだねー?って・・・あぁっ!わ・・・私のプリティーなシズネちゃんが壊れてる!」
その言い方だと私が壊れてるみたいでイヤだよ!
壊れたのは雨除けでしょ。
「まさかスカージュちゃんが?」
「違うっす!」
全力で横に首振ってない?
「じゃあ、このボロ雑巾って事ね!」
イメチェンがボロ雑巾に変わった・・・この人が一番怖い気がするのは私だけなんだろうか?
「ミランダさん、それ全く反省してないから、続きをやるところなの」
「そっかー、んじゃー、任せちゃうねー」
あれま、あっさりと任せられちゃた。
これは、信頼されてるって事?
苛める事について信頼って・・・やな感じだな。
でも、やるしかないんだよね。
「ねぇ、人型になってくんない?」
「・・・・・・・」
「そう、ならないなら私にも考えがあるから」
「シズネさん!それは・・・
「黙って見てろ。あいつはお前の恨みを買うような事はしない」
「・・・はい」
スカージュちゃんの恨み・・・
うん!絶対ヤダ!
「これ綺麗な色をしてるでしょ?『拒絶の壁』を材料に使ってるの。そんでね、多分斬れない物はない!」
この『アオヒカネ』のシャベル、ヤバいのは斬れ味だけじゃなかったの。
一定以上の速度で振ると衝撃波が発生したの、10メートル位しか届かないけど・・・斬れ味はシャベルで斬るのと変わらなかったんだよ。
角材を作るのがとっても簡単で便利なんだけど・・・今は、こいつに恐怖心を生ませる為に使う。
「どう?あんたの角、簡単に斬れたでしょ?」
「俺を殺す気か?」
「物騒な事を言うね。その気があるなら最初の一撃で終わってるけど。それにね、ゴミを作り出したくないんだよね」
我ながら酷い事を言ったなぁ。
「何?丁重に葬ってもらえるとでも思ってたの?スカージュちゃんならするだろうけどね。私はしない。で、まだ人型にならない?」
「・・・・・・・」
「結構強情だね」
素直に人型になって欲しかったな・・・
やっばりイヤなんだよね。
痛いのってさ。
自分が痛いのはもちろんだけど、痛いと分かってる事を誰かにするのもイヤなんだよ。
重い気が更に重くなったよ。
「ぐあっ!」
「はい、これ。言うまでもなく、あんたの尻尾」
根元付近からスッパリ斬りました・・・痛そう、じゃないな、間違いなく痛い。
「トカゲの尻尾みたいだね。斬ったのに動いてるね。それはいいか、さてこのゴミどうしようか?」
「・・・・・・・」
「返事無しかぁ、一応肉だし、あんたこれを食っちゃって」
「シズネさん!それは!」
言ったでしょ?
酷い事をするって・・・でも、マジでもう勘弁してほしいんだよ。
これで人型にならなかったら・・・鬼畜人外外道って言われても言い返せないもん。
「尻尾を食ったら次は手と足もゴミになるから食べてね。食べないなら無理やり食わせるから。私の筋力があれば口をこじ開ける位は出来るよね?アイシャさん」
「余裕だろ」
「だって、あんたに拒否権は無いの」
うへぇ。
ヤダヤダ、マジでそんな事をしたくないんですけど・・・
でも・・・あっ!
人型になった!良かったぁ。
「アイシャさん、壁ワイヤーを巻き付けてくれるかな?首に巻いて、右肩から左脇に巻いて、胴に巻いて左肩から右脇にやったら結んじゃって。うん、それでオッケー」
仕上げは【物質操作】で結び目を無くす。
これで完了だね。
「ミランダさん、再生薬を使ってくれるかな?」
「えぇー、なんでー、私のシズネちゃんを壊したんだよー」
「・・・それさぁ。私が壊れてるみたいでイヤなんだけど・・・」
「確かにー、そう聞こえるかもー、あはははは。でもー、使ってもホントに良いのー?」
「いいよ。その壁ワイヤーね、外せるの私だけだから」
「それと薬とどんな関係があるのー?」
「んー・・・まず、ドラゴンになったら壁ワイヤーの掛かってる所は切れるよね?死ななくても致命傷だよね?」
「うんうんー」
「怪我無く外せるのは私だけ、私の言う事を聞くしかないよね?逃げたいなら逃げても良いし」
「そうなのー?」
「どこに逃げるの?こいつは壁を登れるの?それとも200キロ位泳げるの?」
「どっちも出来たら凄いねー」
「だから、治しても構わないんだよ」
壁ワイヤーってかなり凶悪な物になるんだよ?
そんな物を取り付けたって事なんだよ。
なんでこんな事をって?
・・・自分がさ、物扱いされたら分かるんじゃないかなって思ったんだけど。
どうなるのかな?
「貴様、こんな事をしてただで済むと思ってるのか」
「それなら今直ぐ仕返ししてくれないかな?私、暇じゃないから。あぁそうだ、スカージュちゃん!確認しとくよ?」
「なんすか?」
「スカージュちゃんさ、敵だったらブレスを誰だろうと撃てる?」
「・・・分かんないっす」
「そっか、分かった。と言うより、分かってた」
「ゴメンナサイ」
「あはははは、謝らないでよ。そこがスカージュちゃんの良いところでもあるんだからさ」
「・・・うん」
おっ!
ナイスなタイミングでシュヴァツ君が帰って来た。
最近、ノスフラト君の乗り物と化してるよなぁ。
それで良いのか?シュヴァツ君。
「スカージュ!何が有ったんだ?大丈夫か?」
「ふむ・・・ヴラドか」
「ノスフラトか・・・なぜ貴様が?」
「我が家に居て何が悪い」
ノスフラト君・・・機嫌悪いの丸分かりだよ。
近寄り難いオーラが、つか、魔力の霧が出てきてないかい?
退避だ退避!
「シュヴァツ君」
「はい」
「雨除け作るの手伝ってくれる?」
「もちろんです」
「ありがとう」
「シズネちゃん!また同じのを作ってねー」
「それは無理!」
「何で!」
「2度目は1度目より良い物に仕上がるからだよ」
ノウハウは有る。
1度目みたいにグダグダな作り方はしない。
上手く作るのが物作りをする者の務めだ!
・・・多分。
「シズネ殿、こやつを如何する?」
「こやつって・・・だれ?」
別にすっとぼけてるんじゃないよ。
「ヴラドの事である」
「誰それ?ここには、ノスフラト君、シュヴァツ君、スカージュちゃん、アイシャさん、ミランダさん、それに私。それしか居ないでしょ?」
「む?」
「もしかして、それの事を言ってるのかな?それは道具だよ。物だよ物体だよ」
「むむっ?ヴラド・・・シズネ殿に何をしたのだ?あそこまで怒るのは初めて見たのである」
「・・・・・・」




