竜魔族ってムカつくやつしかいないの?〔中編〕
インゴット作りを始めてから1時間。
アイシャさんも骨を掴んできたみたい。
全部じゃないんだけど、3個に1個は成功するようになってきたの。
最初に成功した時のはしゃぎようは子供みたいだったんだよ。
『いゃったぁー!上手く出来たー!あはははは、あたしもやれば出来るじゃないかー!』
って飛び跳ねてたもん。
やっぱり、アイシャさんって可愛いよね。
「しかしよ、これ全部をインゴットにする必要あるのか?」
「無いかも知れないけど、必要になって作るのがメンドクサイから最初に大量生産しちゃうほうが良いかなって」
「催促されたりするのはイラっとするもんな」
「それあるね、催促する人って偉そうに言うもんね」
買ってやるんだから有り難く思え的な感じで偉そうに言うらしいんだ。
爺様がそんな事を言ってたんだよね。
それに嫌気がさした爺様は依頼で仕事を今してないんだって。
何で私の依頼は受けてくれたのか、凄い疑問だよね。
「それにしても紐で切るってのは面白いな。これも『拒絶の壁』か」
「そうだよ。名付けて壁ワイヤー!切れ味は保証します!」
「確かに・・・首絞めたら簡単に斬れそうだよな」
「・・・物騒な使い方はしないで欲しいな」
必殺仕事人じゃないんだから、そんな使い方はしてほしくないよ。
頑丈な紐って事で商品にしようかと思ったけど却下だね。
アイシャさんみたいな考え方をする人が居たら大変だもん。
うん?
・・・また何か来たの?
羽ばたきの振動なんだけどシュヴァツ君のとは全然違うから、他の人だよなぁ。
ここんとこ、招かれざる客が多くない?
ふぅ、隠れるかな。
「どうした?」
「誰か来たの、赤っぽい・・・ドラゴンかな?」
「・・・豆粒にしか見えん!良く見えるよな」
「自分でも不思議に思ってるよ」
ホントに凄い遠いんだよ、数キロ・・・7キロ位先かも知んないんだよ。
さらに分からない事があってさ、そんな遠距離は【振動感知】の範囲外なんだよ。
それなのに感知するのは何でなんだろう?
分からない事だらけなんだよ・・・誰か説明してくれないかな?
って、あれ?加速した?
げっ!むっちゃ早いぞ!止まれるのかな?アイシャさんみたいに着地する気?
だとしたら・・・衝撃が物凄くなる?
それ、ヤバいよ!
「アイシャさん!あれ、加速したよ!アイシャさんみたいに着地するなら、ここ危ないよ!どっかに隠れないと!」
「加速した?・・・あぁ、誰だか分かったわ。大丈夫だ、ここに誰か居るって分かって格好をつけたいだけだから」
「格好を?」
「あいつは格好つけのバカだからな」
・・・アイシャさんがここまで呆れてるの初めて見たな。
「その人ってそこまで残念なの?失敗しまくる私より残念なのかな?」
「かなり残念だな。それとだ、シズネの失敗は失敗じゃない」
「ふぇ?」
「お前は失敗を失敗のままにしておかないだろ?成功に結び付けるだろ?そうゆう失敗いくらでもやれ。私にも見えてきたな。やっぱりあいつだ」
今のって誉めてくれたの?
えへへ。
やっぱり誉めてもらうと嬉しいな♪
おっ?おぉっ?
振動が凄くなってきた・・・あの速度で逃げなくてホントに大丈夫なの?
アイシャさんは動く気が全くないみたいだけど・・・大丈夫なのかなぁ?
・・・いや!アイシャさんを信じよう!
アイシャさんは嘘は吐かないもん。
大丈夫って言うんだから大丈夫だよ!
うあぁっ!
近っ!頭から突っ込んで来てるよ!ホントに止まれるの!激突必至にしか思えない・・・
えっ!?おぉっ!
凄ーい!急停止したっ!
何かで見たのと同じだよ!
あれだっ!
FFの何作目か忘れたけど、バハムートの登場シーンと同じだっ!
リアルで見ると凄いの一言だよ!
そのバハムート擬き・・・上空30メートル位でホバリングしながら辺りを見渡してるけど・・・
「俺がこんな辺境に来ないといけないとはな」
まぁ辺境だよね。
町どころか人気すらないもんね。
「バカ娘はどこだ?そこの洞穴の中か、バカな上に気でも狂ったか。洞穴生活なぞ畜生のやる事だ」
・・・私、こいつキライ!
「ヴラド、そうゆう感想は口にしないのが礼儀だぞ」
「アイシャか、貴様もここに住んでるのか?」
「お前に貴様呼ばわりされる筋合いはねぇな。ぺーぺーらしくしたらどうだ?」
「それこそ筋合いの無い事だ。しかしここはなんだ?小屋に洞穴?それと、幼児の作った物?廃棄場か何かなのか?」
ビシッ!
廃棄場?
幼児の作った物って・・・玄関の雨除けの事か!?
「廃棄場なら俺が焼却して手伝ってやる」
なっ!
「シズネさーん♪アイシャさーん♪手伝いに来たっす♪」
「走って!」
「えっ?」
ドゴーン!
「えっ?・・・えっ?えぇっ!」
良かった・・・無事だったよ。
人ってのは『危ない』とか『逃げて』みたいな何事か確認してしまう様な事を言うより、取るべき行動を言った方が助かる率が高いってホントなんだな。
『えっ』とは言ったけど、即座に走ってたからね。
でも・・・ウソでしょ・・・みんなで作った雨除けが・・・燃えてる・・・瓦擬きは『拒絶の壁』製だから燃えたりしないだろうけど。
骨組みは燃えちゃってる・・・
「何が?あっ!父上!今のは父上のブレスですか!何で壊すんですか!」
「ゴミを燃やして何が悪い?」
ビシッ!
・・・ゴミ?
確かに統一感とか無かったけどさ・・・ゴミ?
「スカージュ、今生の別れを言っといた方が良いかもな」
「えっ?あっ!・・・シズネさん」
「これはミランダじゃなくても分かる。結構来てるな」
「この前みたいに?」
「あたしでも分かるんだから下手したらあれ以上かもな」
・・・・・・・
「父上!長い様で短い間でしたがお世話になりました。迷わず成仏して下さい!・・・シズネさん、出来れば生かして欲しいっす、あんなんでも一応親なんです・・・」
「何を訳の分からん事を言ってるんだ。帰るぞスカージュ!」
「帰りません!」
「バカ娘!お前は俺の言う事を聞いていれば良いんだ!」
ビシッ!
スカージュちゃんは自分で考えて行動できる1人の人だぞ。
物じゃないんだぞ。
「さっさと行くぞ!こんな畜生小屋に長居させるんじゃない!」
ブチッ!
「あれ?シズネさんは?」
「上だ」
「えっ?一瞬で?」
「ほう!あれにはあんな使い方も有るのか!届きさえすれば飛行出来る奴とも有利に戦えるな」
「えっ?えっ?」
「シズネの見えない移動だよ。今のはあの反動でヴラドを蹴り落としたんだ」
「そんな事が?」
「やって見せたからな。あれはスキルじゃないんだ、筋力が20000前後で出来る様になる技だ」
「20000!、誰でも出来るけど出来る様になる人は極少数って事っすか・・・」
「そうなるな、シズネはなスキルを頻りに隠したがるけど、あの移動法の方が余程隠す方が良いと思うんだがな」
「アイシャさんは知ってるんっすか?秘密のスキルを」
「いや、知らん。だけど、推測はしてある。人に使ったのは、あたしが初めてだったそうだ。2人目はヴラドだけどな」
「えっ!」
「翼とか手足が千切れかけてるだろ?」
「・・・はい」
「見るのは辛いかも知れんけど、見ておくのが良いぞ。話が逸れたな、あの千切れかかってるのは、スキルを使ってるんだ。それでも手加減はしてるみたいだぞ」
「あ、あれで・・・」
「スキルを使えば1撃だろ?ほらまた使った」
「消えた・・・尻尾の一部が・・・消えた?」
「あたしの推測は当たってるはずだ。あれしか思い当たらないからな」
「それって・・・
「聞くな。推測なんだ、間違ってる可能性も高いし本人が言いたくない事を他人のあたしが言って良い事じゃないからな」
「・・・そうっすね」
をっ!
出番か?
いゃあー、真面目な話をしてるみたいだったから、私が出て良いのか迷っちゃってさ。
結局、区切りの良いところまで待っちゃった。
意外と私って空気読めるでしょ。
ん?私?
冷静な方のシズネちゃんだよー♪
キレた方にも話を聞きたい?
答えてくれると思うけど・・・
ウガーッ!とかフンガー!とかガンスとかザマスじゃないかな?
えっ?
妖怪ランドのプリンスのお供だって、やっばり分かるか、あはははは。
私は個人的にはプリンスのお供より、砂の嵐とコンピューターに守られた塔に住んでいる人のお供がいいな。
変身能力の高い普段は黒豹姿のスライムみたいなのと、海の神様の名前の巨大ロボットと、実はロボットだった巨大怪鳥。
こんなのに守られてたら絶対安全ってきがしちゃうよね。
話が逸れ過ぎ?
すんまへん。
んじゃもどすね。
こいつはダメだわ、言う事全てがムカつく。
一から十まで全部が人を見下してる、どんな脳ミソしてたらこうなれるのか不思議でならないよ。
冷静担当の私もイライラしてるもの。
だから今回は【穿つ】を解禁しました。
もちろん水竜君同様に鱗と骨は全損させるよ。
だって【穿つ】だけだと前回キレた時と結果が違い過ぎておかしな事になりそうだしさ。
だから所々に織り交ぜる感じで【穿つ】は使ってるの。
翼、手足、尻尾って感じでね。
ん?
キレた私?
そろそろ全部終わりそうかな?
スカージュちゃんが生かして欲しいって言ってたから、その願いは聞いてあげるんでしょ?
主導権が戻ってきたかな?
うんうん、分かるよキレた私。
スカージュちゃんには弱いんだよね。




