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そのハムスター、享楽家につき ~色々な称号、熨斗付けて返却したいんだけど?~  作者: ウメルヴァ
ハムスターに転生 4章 着地点

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竜魔族ってムカつくやつしかいないの?〔前編〕

「ティファちゃん」

「あっ!シュヴァツ君だよ・・・私に声を掛けるって珍しいよ。なんだろ?」


 確かにそうだけど、ハッキリ言われると少し戸惑うな。


「スカージュから庭を造ってるって聞いて、見に来てみたんだ」

「そっか、まだ土を掘ってるから何も出来てないよ」

「そうみたいだね」


 思い出すな、シズネさんもいきなり大量の土を持って来て山を作ってたからな。

 それで、『やっちまったぁぁぁ』って何度叫んでた事か。


「どうしたの?ニヤニヤしてるよ?」

「シズネさんが庭を造ってた時の事を思い出してね」

「それがニヤニヤしちゃう事なの?」

「まぁね、1日1回は『やっちまったぁぁぁ』って叫んでたからね」

「かあさまが?やっちまったぁぁぁ?・・・失敗してたの?かあさまが?」

「知らなかった?シズネさんは『失敗しないと出来るようにならない』って自分で言ってたよ」

「かあさまが・・・信じられないけど、ホントなの?」

「もちろん、自分の事を最初は『失敗の達人』って言ってたし、その後は『失敗大王』『失敗と言う字を形にしたのが私です』なんて言ってたからね」


 正直なところ、自虐的過ぎると思うんだよな。

 シズネさんは失敗を失敗のまんま放置したりしないから。

 何度失敗しても、必ず出来る様になるから。


「私、かあさまが失敗してるの見た事ないよ?」

「最近は新しい事は始めてなかったからじゃないかな?」

「新しい事?」

「そう、やった事が無いと見ていて清々しい程に失敗してた。でも、シズネさんは諦めないから。出来る様になるまで何度失敗しても諦めないからね」

「諦めない・・・」

「そう、あの時だってティファちゃんの事を諦めなかったろ」


 それで死んでしまうってのはどうかと思うけども。

 生き返ったから結果オーライなのか?


「あの時・・・私は、かあさまが諦めてたら、また何にも無い所で独りぼっちだったよ・・・かあさまに助けてもらったよ」

「あの時だって何度も失敗してたろ?」

「ううん。私が、うんって言わなかっただけだよ」

「うんって言わせるだけの事が中々言えなかったって言ってた。でも、諦めなかったろ」

「うん・・・そっか、ちょっとだけ失敗したらどうしようって思ってたよ。かあさまみたいに上手に出来るかなって」


 淡々とした感じはするのは変わってないけど、内心は色々と感じてるんだな。


「でも、安心したよ。私もかあさまみたいにいっぱい失敗するよ!」

「・・・まぁ、程々にな」


 失敗宣言って初めて聞いた。

 シズネさんをリスペクトするにしても・・・そっちはどうなんだろう?

 ・・・ある意味、シズネさんと同類って言えるのか?


 まぁ、諦めないなら良いか。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 どっすぇいっ!

 これで完成だっ!

 どうだ!

 ・・・滅茶苦茶だろっ!

 統一感なんて皆無だろっ!

 ふっふっふ、そこが良いんだよ!

 行き当たりばったりな私が主導だったんだから、こうなって当然なんだ。


 ん?何がって?

 玄関の雨除けだよ。

 完成したのだよ。


 薄くした『拒絶の壁』を雨が内部浸透しないように瓦の様な形にして、1枚1枚を下から順に壁ワイヤー(そう命名したのだ)で固定しながら敷き詰めて、一番上を筒を半分に切った物で覆って、たった今、鬼瓦の代わりを設置したのだ!


 それなら普通じゃないのかって?

 ふっふっふ、ふふふのふ。

 瓦をね、『断崖荘』のみんなで色塗りしたんだよ。

 瓦を1人2枚、半筒を1枚づつね。


 好きな様に塗って良いって事にしたから、凄い事になったんだよ。


 ミランダさんはピンクで私を書いて『シズネちゃんのラブリーさは表現できないわねー』って言ってたし。

 ノスフラト君は黒で塗り潰して、『くっくっくっ』って笑ってたし。

 スカージュちゃんは赤で塗り潰したし上に黒線を3本引いて自分の柄と同じにしたし。

 シュヴァツ君なんて赤と黒と緑で巴紋を書いたんだよ!

 アイシャさんはさ、塗るのを最後まで渋ったし、渋った上で自分が魔王の時に使ってたシンボルマークを書いたんだけど・・・猫だったよ。

 本人は猫じゃないって言い張ってたけど、猫にしか見えないし。


 もう滅茶苦茶さっ!

 好きな様にして良いとは言ったけど、想像以上で呆気に取られたさ。

 その後は大笑いしたけどね。


 その大笑いの瓦もどきを知り合った順に奥から並べて完成させたって訳だよ。


 私?

 私は瓦擬きに色塗りはしなかったよ。

 その変わりに鬼瓦擬きは私の等身大の石像だい!

 両手にシャベルを上に向けて持って偉そうに立ってる石像だい!


 遠くから見るとね、シャベルが鬼の角みたいに見えるんだよ。

 近くで見るとハムスターっていう情けなさが溢れる物なんだよね。


 鬼瓦本来の役目なんて絶対に果たせないよね。

 だってハムスターなんて弱々じゃん。

 厄除けになんて絶対ならない。

 来た厄に必ず負ける代物さ。


 みんなも、笑ってるし。


「あはははは、シズネが見守ってるんだな」

「シズネちゃん!それもう1個作ってー!私欲しいよー」

「くっくっくっ、中々に雄々しい石像である」

「お姉ちゃん格好良い!双剣使いみたい」

「それ、いきなり動き出したりしませんよね?どっちがシズネさんだか分からなくなりそうです。あはははは」


 結構失礼な事も言われてる気もするけど、まぁ良いや。

 

「みなさーん!完成です!なんか凄いのが出来たけど『断崖荘』って感じで良いよね?」

「あたしは、こうゆうの好きだぞ」

「私もー面白いから好きだなー」

「くっくっくっ、皆で合作するとこうなるのだな」

「あたしは全然有りだと思うけどな」

「正直な所、予想とまるで違う物が出来上がりました。雑多な感じは正に『断崖荘』ですね、あはははは」


 うんうん、みんな喜んでるね。

 またみんなで何か作ってみようかな、楽しいし息抜きにもなるし良いよね。


 さぁて、雨除けも完成したし次の物を作るかな。

 次はお風呂場の完成を目指して頑張るぞ!


 の前に、『拒絶の壁』を【軟化】した物をインゴットサイズにしちゃおうかな。

 ユグスちゃんにも分けてあげる約束してるしね。


 実はね、インゴットを作る為の型は作ってあるんだよね。

 スカージュちゃんがインゴットを作れる様になったらプレゼントしようと思ってずっと前に作っておいたんだ。


 修行は思ってたよりも上手く行ってるみたいで、刃物じゃなければ1人で作る許可が下りたんだって。

 まだ1ヶ月ちょっとしか経ってないのに早いよね!

 爺様も筋が良いって嬉しそうに言ってたもん。

 だからね、この型も思ってるよりも早くプレゼントする事になりそうだよ。


 って事はだ、『拒絶の壁』のインゴットは早いところ作らないと、インゴットの型をまた作らないといけなくなるって事だよ。

 また作るのはメンドクサイから、今のうちに大量に作っておこう!

 地面をプレスするのに使ってる塊を1個分全部インゴットにしちゃおう!


 そうすりゃ当分の間はインゴットを作らなくても大丈夫なはず。

 いっちょやったるかぁ!



 ―1時間経過―



 私は・・・私はまたやっちまったぁぁぁ!

 インゴットってね結構大きいんだよ。

 だいたい2リットルのペットボトル位の大きさなんだ。

 だから100とか200個をインゴットにすればプレス石が無くなるって思ってたんだけど・・・


 まだ15個しか出来てないんだけど・・・1時間位掛けて15個

 例え100個だとしても、後6時間は掛かるのか・・・

 これを、やっちまったと言わずして何と言うのか誰か教えてくれ!



 ―6時間経過―



 あはははは。

 もう、ヘロッヘロだよ。

 穴を掘るより疲れるよ。


 疲れる割には数が出来ない。

 まだ100個を少し超えた位しか出来てないよ。

 しかもだよ!

 プレス石は1割位減ってるかどうかって位なんだよ!

 

 後900個は出来るって事なんだよ。

 なんか目眩がしてきたよ・・・


 やっぱり1人じゃキツいな、人海戦術だっ!

 インゴットの型を何個か作って、手の空いてる人をあの手この手で手伝わせよう。



 ―次の日の午後―



「それじゃぁダメだよー、端っこがちゃんと角になってないよ」

「ん゛ー・・・難しいぞ!」

「うーん・・・こうやって端っこからギュッって詰めてけば角になるはずなんだけどなぁ」

「そうやってるぞ?」

「なんでだろう?やり方が悪い訳じゃないのにね」


 お昼を食べてからアイシャさんに手伝ってもらってるんだけど、アイシャさんがやると角がどうやっても丸くなるんだよね。

 やり方は間違ってないんだよ、しっかり詰めてるんだよね。

 それでダメって・・・理由が分からない。


「じゃあこうしよう、アイシャさんが作るのは『断崖荘』で使う分って事にしよう。売り物じゃないから少なくても問題無いでしょ」

「なんかさ、癪に障るよな」

「うん、悪い所は全然無いのにね」


 アイシャさんの気持ちは、凄い分かるんだよね。

 なんせ私は失敗の達人だから。

 上手く行かなくてイラっとする気持ちは自分の事の様に分かるよ。

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