事後処理〔後編〕
「ありゃ・・・首も半分治っちゃったー」
「良いんじゃない?アイシャさんも居るしさ」
私がやるよりずっと穏便にやってくれると思うんだ。
だってさぁ。
力加減の仕方が難しいんだもん。
ステータスの上がり方が急激過ぎたのと。
普段、力を奮っているのが『拒絶の壁』だから加減の必要がないんだよね。
これから力加減の修業をしないと、いざって時に困りそうだね。
私、頑張る!
今後の目標も決まったし、ちゃっちゃと済ますかねぇ。
「あ、あの・・・
「あれぇ?私は喋って良いって言ったかな?」
何か殊勝な感じだから大丈夫かな?
「で?君はどうしたい?」
はっはっは、何を聞いていたのか忘れちゃった、テヘッ♪
「俺様は死にたくは無い。だから、ここの事は1人にしか喋らない」
「1人?」
「スカージュ様が居ると報告する時にだけ」
「ふぅーん、それを信じろって言うの?」
こいつは往生際が悪いと言うか、現実が見えてないと言うか、信じたら馬鹿を見そうな気がしちゃうんだよね。
「俺様の言う事が信じれないって言うのか!」
ゴゲィン!
おっほぉ♪
アイシャさんの拳骨炸裂ぅ!
痛そう。
「負けたって思って無いみたいだね。ユグスちゃん?やっぱり樹海行きだけど、仕方ないよね?」
「・・・そうですね」
「待ってくれ!いや、待って下さい」
「何で?現状を理解しないで上からものを言う奴を助けると思うの?」
「ゴメンナサイ、二度としません」
「残念ながら信じれないので、私ね君は世の中に必要とされてないって思うの。居ない方が上手く行くんじゃないかと思うんだよね。魔王だってさ、君より強いスカージュちゃんがなった方が良いって思うしね」
「なっ!スカージュ様が俺様より強いだと?」
見た目が華奢で可愛いから分かんないよね。
でも、こいつは何も出来ないで負けるね。
「バルムンドって名前は聞いた事ある?」
「歴代魔王の中でも特筆する人物だ」
「そのバルムンドと同じブレスが出来るんだけど。でもね、あのブレスは強力だけど効率悪いし穴だらけだから改良中なんだよねー」
しかもだよ、すでに第二段階に入っているから凄いんだよね。
このまま行ったらスカージュちゃんは最強になる!
「あのぉ、また嵌めるんですか?」
「いんや、スカージュちゃんなら自らやると信じてる!」
「うっ・・・やれって言ってるのと同じですよ、それ」
あはははは。
だってさぁ、私はブレス出来ないし、どんな事が出来るのか自分じゃ試せないんだもん。
手伝って欲しいな。
「良いですけどね。あたしもどこまで変化させる事が出来るのか知りたくなったし」
「そかそか、形状のアイデアはまだ何個か有るから1個づつ試してみようね」
「うん♪」
「シュヴァツ君もオッケー?」
「はい、父さんを超えてみせます」
うんうん、頑張ろう!
とまぁ、建て前はそんなだけどさ。
本音は2人が強くなってくれれば私が霞むと思うの。
要らぬ注目を集めなくて良くなれば化物扱いされなくなるんじゃないかな?
2人を利用してるけど、許してくれるかな?
・・・いつか、ちゃんと話さないとな。
「と言う訳で君なんか要らないのは分かったかな?」
「・・・」
「追い打ち掛けるけとさぁ。君の今の状況を知って助けに来たり、一緒に命乞いしたりしてくれる人って居る?逆に君が助けに行ったり、命乞いしても助けたい人って居る」
「・・・」
「黙り込むんだ、居ないって事かな?・・・君さ、学校で何をやってた訳?学校は勉強する所だけど、そういう友達を作る場所でもあるんだよ。君の事だから、学生の頃から俺様節を炸裂して御満悦だったんだろうけど、そのお陰で独りぼっちだね。釈明できない位に負けたって直さないんだから、一生独りぼっちだね!おめでとう!そんなのは私なら御免だね」
寂しくて発狂する自信あります!
独りの方が気楽?
そんなのは周りにかまってくれる人が居るとか、孤独になった事の無い人の戯れ言だよ。
独りになってみれば分かる、他に誰か居る有り難みがね。
「さってと、ユグスちゃん丸投げする。私はもういいや、こんだけ言って何も分からない考えもしないってなら、ミランダさんの新薬の実験体にでもする方が良いと思うよ」
「それ良いわねー未実験の薬、何個か有るのよねー」
有るんかい・・・冗談のつもりだったんだけど。
この人、本気で怖いよ。
「妾が預かるので良いのでしょうか?」
「私は構わない、ここの事を言いたいなら言い触らせば良い。興味本位で来る奴は行方不明になってもらう事にしたから」
「ほうほう、実験体が沢山手にはいるのねー♪」
・・・マジで怖いから。
「では預かります。それにしても・・・シズネ、貴女は生徒としてでなく教師として学校に来ませんか?」
「・・・はい?」
「ですから、教師としてです」
ユグスちゃん?
何を言っているのかな?
気は確かかい?
私が教師なんてなったら・・・
きっと怪我人続出だよ?
だってハムスターだよ?
生徒が馬鹿にするのが目に見えてるよ?
馬鹿にされて我慢出来たって少しだけだよ。
いつか必ず爆発するよ。
そんな危険分子が教師?
無いと思うけどなぁ。
「本日の事を振り返り鑑みるに、貴女の様な人物を妾は知りません。学校の雰囲気を一新させる要となる気がするのです」
「えぇーヤダー教師として学校に行ったらさぁ。生徒として入学できなくなるんじゃないの?」
「そうなりますね」
「えぇーヤダーさっき言ったじゃない。学校は友達を作る所でもあるって。私は同年代の友達が欲しいんだけど」
ここみんなは友達だと私は勝手に思ってるよ。
だけど同年代じゃないんだよ。
一番若いスカージュちゃんとシュヴァツ君ですら10年以上年上だしね。
「同年代の友人ですか・・・100年を越すとどうでも良くなるのですが」
100年って、私はまだ後90年以上あるよ!
つか、ユグスちゃんって見た目に反してかなり年上だったんだね。
魔族って凄いな!
「分かりました、ではこうしましょう。生徒としての入学を拒否します。なので教師として来て下さい」
「えっ?・・・えーと?・・・えぇー!」
入学を完全拒否!
制服とか街造りで雰囲気が変わったら入学オッケーってのは?
提案がダメだったら諦めもつくけど・・・
教師以外は完全拒否?
ヤダー!
こうなったら、手っ取り早い改善案の提示だっ!
「分かった、今度学校に行って一番手っ取り早い改善案を実行する!」
「まだそのような案があるのですか?それはいったい・・・
「全部ぶっ壊す!何から何まで全部!更地から作り直せば、生徒も建物も全部零からやり直せば良い!」
「それも有りだなぁ」
「ふむ・・・根本的に作り直せるのである」
「シュヴァツの事以外に良い思い出ってそんなにないしなぁ」
「オレもスカージュとの事以外は・・・無いな。無くなっても何とも思いそうにないな」
意外だったなぁ。
みんな賛成したよ。
そんなになんだな、あの学校は。
「簡単に破壊出来る程に狭くはありませんよ」
「簡単だよ、学校の敷地の広さで『拒絶の壁』が100メートル無くなったらどうなる?」
地中に入っちゃえば誰かに止められる事は無い。
『拒絶の壁』の中なら尚更有り得ない。
「お姉ちゃんって怒ると悪魔になる・・・」ボソッ
「スカージュちゃん?悪魔王とでも呼んでね♪独りぼっちの悪魔族だよー」ボソッ
「怒ってない?」ボソッ
「怒ってるよ?ユグスちゃんにね」ボソッ
「でも・・・昼間とちょっと違う?」ボソッ
「八つ当たりは格好悪いからね」ボソッ
「そっか♪さすがお姉ちゃん♪」ボソッ
いぇーい♪
スカージュちゃんに誉めてもらっちゃったー
「もし、そのような事をすれば魔族を敵にしますよ」
「ふんっ!そんときゃ秘密にしてるスキルを公開して向かって来る奴は全部返り討ちにしてやる」
「・・・分かりました、貴女がそこまでの覚悟が有るのなら教師の件は諦めます。しかし、入学前に一度学校へいらしてください」
「そんくらいは構わないよ?どの道、制服の試作品が出来たら持ってくつもりだったし」
制服のデザイン・・・どんなのにしようかな?
・・・
・・
・
ブレザーを羽織るけど脱ぐとワンピースになってる仕様にしようかな?
スカート丈は長めと短めを用意したりしてさ。
良いかも♪
ワンピースは可愛い感じで、ブレザー羽織ったら格好良い感じにしてさ。
ん?男子の?
んなのは適当だよ適当。
ズボン、シャツ、ネクタイ、ブレザーでオッケーでしょ?
デザインはブレザー羽織った女子のに似せれば良いんだし。
後は色だなぁ。
うーん・・・エンジとか結構好きなんだよなぁ、黒とかも良いかなぁ。
ベタに青系とかも良いし、あんまり見た事が無いけど緑とか、紫なんてのも奇抜で良いかも。
ダメだ、色は決めらんない。
なら、どんな色でも合いそうなデザインを考えよう!
「妾が改善に必死なのは学校に来れば分かると思います」
しまった!
制服の事に意識が行ってしまった。
「ふーん、そんなに悪いんだ」
「悪いなんて言い方は優しいんじゃないかな?纏め上げる人が居ないから起こって無いだけで、そんな人が居たら抗争勃発してもおかしくないかも」
無法地帯じゃないかっ!
何でそんなになるまで放置したんだ?
しかも、それを私が教師になって改善しろだと?
私の得意技の丸投げをするなぁ!
「スカージュは御輿にされそうだったけどな」
「いい迷惑だから、八方美人やってたんだよ」
八方美人?
金持ちと貧乏、どっちが嫌々だったんだろう?
何か・・・聞くのが怖いな。
「へぇー、仮面を付けて相手してたのは貧乏ー?金持ちー?」
「そうゆう分け方はしてないっす、嫌な人はどっちにもいたっす」
人柄で決めてたんだ、安心したよ。
んじゃ、もし。
「私が居たら仮面付けてかな?」
「えっ?えぇーと・・・良く知らない間は付いてたかも、でも知ったら付けてないなぁ」
妥当なところだね。
私はスカージュちゃんは近寄り難いって思っちゃうだろうなぁ。
可愛い過ぎるんだもん、別世界の住人認定しちゃう。
「シズネさんが居たら・・・きっと滅茶苦茶で面白い学校生活だったろうなぁ」
「確かに!毎日が騒々しくて何かが起こって楽しそうだ」
「何それ!それじゃまるでトラブルメーカーじゃないの!」
「「そのとおり!」」
「ミ・・・ミランダさーん!2人が苛めるよ!新薬を使っちゃって!」
「えぇー私もそう思うけどなー」
「なっ!」
まさか・・・他の人も?
マジッすか、みんな同意見かいっ!
しかも水竜君まで同意見なのかっ!
「分かったわよ!こうなったら問題児になってやる!」
「ですから、最初からそう申し上げてます」
3章はこれにて終了です。
4章も、これまで同様にノラリクラリと進んで行きます。
生暖かい目でシズネちゃんを見守ってあげて下さい。




