事後処理〔前編〕
長らく黙ってるが・・・
答えが出ないのか?
「そうでございます・・・変わるの待つんじゃなくて変えて行こうとしないとダメでございますね」
何を言っているんだ?
「私、挑戦してみるのでございます!やっぱり出来る気はしないのでありますが、1回でも挑戦しないと、いつまでも出来る気がしないまんまだと思うのでございます」
「そうであるか。ならば我輩から、乾スラを贈呈するのである。『拒絶の壁』と言いたい所ではあるが、さすがに練習には向いておらんのである」
「いいのでありますか?乾スラでも凄く嬉しいのでございます!ありがとうこざいます」
「ところでよう。変わる変わらないってどうゆう意味だ?差し支えないなら話さねぇか?」
この辺に『断崖荘』に来たい理由が有るんじゃないかと思うんだよな。
大きな意味で言えば、新たに挑戦するのは変化出来るか出来ないかって言っても良いんだが。
こいつの言ってた変化ってのは、意味合いが違う気がする。
「あの、私、ノスフラト様とアイシャ様はこのが街が初対面でありますが、他の店番をやってる人達とは以前にお会いした事があるのでございます」
「他ってぇとミランダ達か?全員にか?」
「はい、私の生まれ故郷ででございます」
「生まれ故郷?」
ミランダ、スカージュ、シュヴァツ、サイリ、カイエン。
『断崖荘』全員で出かけた所って言うと・・・海とあの町だな。
「私の生まれ故郷は灰燼になりましたが、幸にも大多数の住人は皆様と魔王様達のおかげで生き残る事が出来ました。あの時はありがとうこざいます」
「そうか・・・お前はあの町の出身なのか」
まだ2ヶ月しか経ってない、もっと長い時間が経っていても忘れる事の出来ねぇ事だったな。
「あの時に町を破壊した人はどうなったのでありますか?」
「あつなら、悪魔の親玉がキッチリ蹴りを着けてくれたぜ」
あの時のシズネ。
半ばキレてたよな。
『誰かの幸せで楽しい空間を壊して良い権利なんて誰も持ってない!』
確かにな、普通の田舎町だったからな。
平凡で変化は少ないかも知れないが、日常にある幸せと平和はふんだんに合ったはずだよな・・・
本来なら、それを守るのは魔王の役目なんだが・・・
シズネに甘えちまった。
恥ずかしい限りだ。
・・・もっと強くならないとな。
シズネが矢面に立たなくても良いくらいに強くならないと・・・あたしは胸を張って友人を名乗れねぇ!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ホイッと。
ボキッ!
ホホイッと。
ボキッ!
角折り完了。
んじゃこんな奴は放置してスカージュちゃんと所に行かないと!
用意ドン!
「スカージュちゃん!大丈夫?どっか痛いの?苦しいの?大丈夫?」
「うぇぇぇぇぇん」
「大丈夫だよ!今ミランダさんに薬を貰って来るからね!」
「痛くないですぅぅぅ苦しくないですぅぅぅ」
「じゃあ何があったの?私に治せる?」
「うぇっく・・・あたし、うぇっく、あたし、シズネさんがずっとあのまんまだったらイヤだなって、うぇっく、そう思ったら悲しくて涙が出て来ちゃったんですぅ、うぇぇぇぇぇん」
私が原因かい!
ホント、ダメダメだな私は。
こんな可愛い娘に心配かけちゃって。
「スカージュちゃん?ほら、いつもの私だよーもう怒ってないでしょ?」
「うん・・・うん」
「ほら、これあげるからさ、泣き止んで?」
「そんなの要らない、うぇっく。アイシャさん馬鹿にした奴の角なんて要らない!」
「どうしよっか?・・・爺様にあげたら喜ぶかな?」
「師匠に?うぇっく」
「角って市場に出たりするの?」
「出ないよ」
「なら稀少でしょ?喜ぶかも知れないから持って行ってみようよ」
「・・・うん」
少しは落ち着いてくれたかな?
「シュヴァツ君、ゴメンナサイ。スカージュちゃんを泣かせちゃったよ」
「いえ、シズネさんが普段通りに戻ってスカージュも落ち着いて来ましたし大丈夫です。・・・スカージュは普段のシズネさんが大好きですから、ああなって少なからずショックだった所もあったので」
えぇっ!
そうだったの?
大好きって、なんか照れちゃうな。
「お姉ちゃんみたい何て事も言ってましたよ」
「お姉ちゃん?・・・妹じゃなくて?」
「はい、お姉ちゃんがいたらあんな感じなのかな?って」
「えぇーお姉ちゃんはヤダーッ!スカージュちゃんより年上になっちゃうじゃん!学校行けないじゃん!
「お姉ちゃんじゃなきゃヤダ」
スカージュちゃんが初めてワガママ言った。
しかしなんだ?
この無性に可愛いって思っちゃう気持ちは・・・
「分かった!分かったから、お姉ちゃんで良いよ」
「ホントに?やったぁー♪」
「んじゃ・・・お姉ちゃんのワガママ発動!」
「えっ?」
「シュヴァツ君諦めなさい!こんな可愛い妹を嫁になんてやらない!私が嫁にします!」
ふ・・・どうよ。
このスカージュちゃんを独り占めする作戦は、完璧じゃない?
「シズネさん、オレはスカージュを諦めたりも譲ったりもしません、嫁の事は他を当たって下さい」
「な、なんだと!」
「諦めたりも譲ったりもしません、他を当たって下さい」
な、なぜだ?なぜ通らないんだ・・・
んっ?
ありゃまー
「シュヴァツ君、実は女誑しだったんだねー」
「な、何を言ってるんですか!」
「だってほらースカージュちゃんを赤くして遊んでるじゃない」
「遊んでません!本気です!」
「おぉっ!火を吹き始めたぞ・・・やっぱり遊んでるとしか・・・」
「遊んでるのはシズネさんじゃないですか!」
「あはははは、そうかも♪スカージュちゃん、その火照りはブレスで解消しよっか」
「は、はい」
ん?んんん?
良いかも♪
「んじゃ撃っちゃえー!おぉっ!やっぱり凄いなぁ。スカージュちゃんスカージュちゃん!それ小刻みに出せたりしない?」
「こんな・・・感じかな?」
「そうそう!そんな感じ上手だよー」
「えへへ」
「力場キープして一旦止めて」
「はい」
「それってさ、小さい穴を空けてるイメージって言ってたよね?」
「はい」
「小さい穴をいっぱい空けるイメージって出来る?取り合えずば3個かな」
「えっと・・・はい出来るよ」
「よっし、それで発射だー!あっ!小刻みにね」
あは♪
出来た出来た出来た!
凄い凄い、何だよやれば出来るんじゃない。
「ぷっ、スカージュ、まんまとシズネにはめられたな」
「えっ?」
「それってーシズネちゃんが言ってたブレスの変化系だよー」
「えっ?・・・えっ?」
「やりゃあ出来んじゃねぇかよ」
「えっ?えっ?」
「後は空ける穴の数を増やすだけだよ」
いゃあ、スカージュちゃんが素直で良かった良かった。
でなかったら、こうも簡単に策略に嵌まらなかったろうな。
「あぁぁぁぁ、嵌められたぁ、騙されたぁ」
「スカージュちゃん最強伝説第二幕の始まりだね♪」
「いやいやいやいや、あたしが最強って無いです!アイシャさんやシズネさんを差し置いて最強なんて有り得ないです!だいたいブレスに変化を付けた位で最強になれたら誰も苦労しないですし、2人には当たる気すらしないです」
そっかなぁ?
あれは穴を極限まで増やして、両手で連射したらショットガンより恐ろしいものに仕上がるかも知れないんだけどな。
そうなったら避けれる自信有りません。
「そうか?あたしは逆に避けれるイメージが出来ないがな。今はまだ3本だけど10本20本ってなった上に両手で連続発射されたら、手も足も出せないぞ」
「その通りじゃぞ。精進なされい若人よ」
「どこの年寄りですか?どこの」
あはははは。
こっから先はスカージュちゃんのやる気次第だね。
「シュヴァツ君もスカージュちゃんに置いてかれないようにね。シュヴァツ君はすでに2発同時にブレスを撃てるんだから大丈夫だと思うんだ」
「・・・やっぱり自信は有りません。でも、やってみます」
「自信なんて要らないよ?有ったら逆に胡散臭いよ。最初の1歩を踏み出す事が大事なの」
「はい、それは分かる様になりました」
「うん♪やってみたらアイデアが浮かぶかも知れないし、浮かばなかったら誰かに相談すれば良いし、可能性は無限大なんだよ」
「シズネさんは、オレのブレスは無敵に近くなれるって言ってましたけど」
「それはね、シュヴァツのブレスの欠点を消すか補う様にすれば良いの」
「欠点ですか?」
「うん、ブレスの後を付いて行く白い筋を消すの、そしたら見えないブレスだよ?当たるしかないよ?」
マジで見えない物を避けろって無理ゲーでしかないって。
それでも、見えないブレス完成で避ける奴に出会うってフラグが立つだろうから、その先も考えないとダメだろうけどね。
「あれを消すのは昔からやってるんです。アイデアも底を突いて悩んでる所なんです」
「ふむ・・・私には見えないから分かんないんだけど、ブレスの形って球形?」
「はい、そうで・・・す・・・そうか!形を変えるってのはまだやってなかった!」
「あはははは、ヒントになって良かったよ♪」
「ありがとうこざいます」
「形状変化をするならさ、色んなのも試してみなよ。1発で全ての方向に広がるブレスとかさ、一瞬の足止めとかにはなるんじゃないかな?」
「全方位にか・・・」
「それが出来たら、あらゆる範囲のブレスが出来る様になったりしてね」
あはははは。
シュヴァツ君もノスフラト君と同じかな?
考え出すと黙っちゃうのね。
「さって、将来の魔王様(仮)をどうするか決めないとね」




