裏口入学面接?〔後編〕
いゃあ、思い付きで言った事が魔王3人の賛同を得るなんて思いもよらなかったよ。
大概にして存外で論外って言われても文句が言えない位に途方もない事を言ったからなぁ。
我ながら天晴れ!だよ。
だって普通に有り得ないでしょ?
学校の雰囲気を始めとした問題点を解消するのに街を造っちゃえば良いなんて事は。
うん、マジで有り得ないって。
それを有りだと思って承諾した方も方だと思うけどね。
「シズネ、貴女の案を全て受け入れます。生徒の衣服の統一化、街の建造など全てです。他にも何かしらの案があるのなら仰って下さい」
他の案?
んー・・・
あっ!
「ユグスちゃんはさ模型とフィギュアとアクセサリーを作るのを学校でって言ってたじゃない、あれって材料と道具はどうするつもりだったの?」
「妾の私財で購入して貸し出すつもりですが」
「材料は『拒絶の壁』?」
「えぇ、『拒絶の壁』ならばスキルでどうにかなるものではないので、スキル至上と思って居る者に思い知らす事が出来ると思いますので」
・・・どうだろう?
材料になる位に柔らかくしてるのはスキルなんだけどな。
しかも、実用的にするにはスキルで固くしないといけないんだよね。
スキルをバンバン使ってるんだよね。
「誠に申し上げ難いんだけど・・・斯く斯く然々だよ」
「・・・だとしてもです、【軟化】【硬化】共に販売価格は最安値です」
えっ?
最安値?
ワゴンセール物なの?
おっちゃんに聞いてみよう!
って、まだ意識が戻って無いのか。
「おっちゃん!(ペチペチ)おっちゃん!(ペチペチ)」
「うーん・・・嬢ちゃん勘弁してくれー、物理的に潰さないでくれー」
失敬なっ!
なんもしてない人を物理的に潰したりしませんっ!
でも、使えるワードだな♪
「おっちゃん?起きないと・・・潰れるよ?」
「はっ!・・・潰れてない・・・良かった・・・って嬢ちゃん?」
「なにー?」
「いや・・・何でもない・・・」
「そう?あのさ、おっちゃん【軟化】【硬化】のマテリアルって安いの?」
「あぁ安いぞ、銀貨5枚だ」
マジっすか!
それなら誰でも『拒絶の壁』を材料とする事が出来るじゃないか。
「でもなぁ」
「ん?」
「嬢ちゃんみたいに『拒絶の壁』を弄る事は出来ねぇぞ」
「何で?私は【物質操作】で覚えた【軟化】【硬化】だけど同じスキルでしょ?」
「多分だけどな、嬢ちゃんが『拒絶の壁』を弄る事が出来るのは、他のスキルが関わってるんだと思うぜ」
他のスキル?
『拒絶の壁』を何とか出来るスキルって言うと【破砕】【穿つ】だよね。
このどっちかの特性みたいなののお陰で『拒絶の壁』を弄れてるって言うの?
「それは有り得るのである、例えば火魔法は風魔法を習得すると威力が上がるのである。その様な事が【軟化】【硬化】に起こっていても不思議では無いのである」
「じゃあ私しか『拒絶の壁』を材料に作り替える事が出来ないの?・・・だとしたら面倒だなぁ」
何がって?
ストックを絶やさない様にしないといけなくなるでしょう。
少なくなる度に作るって面倒だよ。
・・・後でプレスに使ってるのを1個全部【軟化】しておこうっと。
それが無くなったら放置だっ!
気か向かないと作らない、それで良いよね。
だって独占市場だもん、私が正義って事だもん。
ん?
独占市場って事はだよ・・・新街で販売店を出すってのも有りじゃないかな?
うん、有りだと思います!
「ユグスちゃんユグスちゃん、また思い付いたの」
「何をですか?」
「新しく造る街にね、お店を出したい」
「「「「「「はぁ?」」」」」」
「何の店をであるか?」
「『断崖荘』の皆が作る物をだよ、ミランダさんなら安価な薬とか、アイシャさんなら冷めても美味しく食べれる焼き物でしょ、スカージュちゃんは自作した鍛冶物を、シュヴァツ君も小物を作るんでしょ?全部がスカージュちゃん専用じゃないなら商品にしてみようよ。ノスフラト君は本だね」
「我輩のコレクションから出品しろと言うのであるか?」
「違うよ?活版印刷、あれどんな感じ?」
文字の原盤を渡してから結構経つけど経過を知らないんだよね。
「模倣品の製作には成功したのである。今は素材をどれにすれば効率が良いかを試験中である」
「早いね!試作品が出来上がるのも早そうだね?」
「うむ、予想を上回るはずなのである」
「ならさ、それを売ろう。学生でも手が出せる値段になりそうなんでしょ?」
そうだったら、新街は宣伝するにはもってこいの場所になるんだよ。
あの学校は魔族界中から生徒が集まってる場所、即ち魔族界中に情報を持ち帰る人が居るって事だよ。
新商品の御披露目をするなら新街以外にないと思うんだ。
「なるほど、確かに宣伝効果は多大であるな」
「な、なぁ嬢ちゃん、俺には話が見えねぇんだが」
おっちゃん気絶してて聞いてなかったんだった。
「あのね、斯く斯く然々なの」
「寝ている間にそんな話が進んでいたのか」
いや、気絶だから。
しかも悪夢を見ていた気絶だから。
またまたしかも、私が潰してる悪夢ってなによ!
失礼しちゃうよね!
「ユグス様、俺も出店したいのですが宜しいでしょうか?」
ピコーン!
クックックッ。
また思い付いたよ。
「ユグスちゃん、出店を希望する人から援助金を取ろう」
「なっ!嬢ちゃんそれはキツいぞ」
「おっちゃんの分は私が出すから気にしないで」
「それはそれでだな・・・
「おっちゃん、交換条件が有るから気にしないでね」
「援助金などを徴収しては出店する者が居なくなるのではないのですか?」
「目先しか見えない商人なんか要らないよ。でさ、家を1軒建てるのに幾らかかるんだろう?」
その値段によって援助金って名の出店料を決めるんだよ。
私って・・・性格悪いね、自己嫌悪だよー
「私の今の作業場は街中に作れば金貨2枚位かな」
「石造りだったら?」
「その倍位かな」
ふむふむ、それならば・・・
「援助金は1軒につき金貨50枚、建物はこっちで用意する、勝手に建てるのは許さない。店舗が狭って言うなら2軒目を契約する。ってのはどう?」
「「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」
あっるぇ?
何で沈黙してるの?
50枚って高すぎたかな?
「シズネよぉ、ちと高すぎないか?」
「そう?1回払えば2度目は無いんだよ?しかも自費で店を建てなくて良いんだよ?」
「こっちで建てるってのも何でなのか分からないっす」
ふむふむ、そこからなのか。
「あのね、こっちで建てれば建物のデザインを統一化出来るし建物の広さや高さなんかも統一できるの。道路と景観を優先で作れるってのは零から造る街にしか出来ない芸当なんだよ」
「それをする意味合いが分からないのですが」
「簡単に言っちゃえば外観で勝負が出来ない上に奇抜な事が出来なくなる抑止だね、そうなると接客態度とか商品が良くないと生き残れないの。あれ?そうすっと、撤退する商店が増えるかな?それなら撤退する時に半額は返す位の事はしていいかもね」
撤退したら最後、二度と新街に出店はさせないけどね。
「ですが、街の外に建てたりしたら援助金は取れないのではないですか」
「そゆのは、私とスカージュちゃんで建物を破壊する」
「うぇぇぇっ!あたしっすか?」
「うん、スカージュちゃんのブレスなら楽勝でしょ」
「あぁ、それなら」
遠距離からのゴ〇ラブレス!
クックックッ
見応え有りそうだよねー
「で、嬢ちゃん、交換条件ってなんだ?」
「おっちゃんの店は委託販売専門にしてもらう」
「それは・・・」
「おっちゃんの店の品ってさ専門的な物が多いでしょ?だから撤退しそうな気がするの。だったら最初から委託販売専門にすれば、最初は間違い無く独占だよ。そんで真摯な商売をしていけば、余所が真似しても常連の委託者は付くはずだよ」
「うーん・・・嬢ちゃんの言う通り、うちは半ば鍛冶職専門だからな・・・最初から委託か・・・でもよう誰が持って来るんだ?」
「学校の生徒。ユグスちゃんは模型・フィギュア・アクセサリー作り授業に取り入れるって言ってるから持って来る生徒は必ず居る。しかも、卒業後も委託者になる可能性も大きい」
「なんだ?話だけなら利点しかないじゃないか」
「デメリットも有ると思うけど・・・それを恐れてたら何も出来ないと思う」
「確かにな」
それにさ、もし失敗したっておっちゃんは殆ど損はしないんだよ。
損をするとしたら雇うバイトの賃金位だもん。
私はね上手く行きそうな気がするの。
学校の悪癖が直るかは半々だけど、街の方は大丈夫だと思うんだよね。
街造りをゲームですら破産するド素人の勘だから当てには出来ないんだけどね。
「ユグスちゃん、おっちゃんの確約を取ったから材料について何だけどね。私の知らない人に『拒絶の壁』を渡すなら代金の請求をする」
「ただでくれるつもりだったのですか?」
「そうだよ?元手はただなんだもん、個人的に渡すなら代金なんて取れないよ」
「では授業に使う物はいくらならば譲って頂けるのでしょうか?」
私は相場はもちろん値段設定とかは得意じゃないのですよ。
そういった事はプロに任せるのですよ。
「おっちゃん・・・インゴットサイズならいくらかな?」
「そうだな・・・加工可能な『拒絶の壁』・・・金貨1枚・・・最低でもこの値段だな」
「分かった、おっちゃんありがとう♪」
さて、金貨1枚。
学生には手が出ない値段だね。
学校側としても高額過ぎると思う。
だってさ、ユグスちゃんの左の頬が引き吊ってるもん。
んー
・・・
・・
・
小売りかな。
予め切り分けたのを売るって形でなら良いかな。
「んとね、材料は最初だけ用意するんで良いと思うよ。2回目以降は自費で調達すれば良いんだよ。私はお店で素材を売るよ『拒絶の壁』・煮詰めたスライムとかね」




