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そのハムスター、享楽家につき ~色々な称号、熨斗付けて返却したいんだけど?~  作者: ウメルヴァ
ハムスターに転生 3章 千客万来

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ハムスター剥いちゃいました〔前編〕

「お前はどこまで付いて来る気だ」

「学園から去るまでです、何かヒントが見付かるかも知れないので」


 ヒント・・・ねぇ。

 そんなもんは山ほどくれてやってるんだけどな。

 こいつの押しの弱さと退け腰のせいで、住まいを見付けれてないってのに、気が付いているのかね。


 ・・・まぁいいか。

 卒業したら獣魔王就任決定、性格に難有りだから・・・そこを何とかしないとな。

 どうしてくれようか。

 ・・・

 ・・

 ・

 ぷっ、これは良いかも知れねぇな、振り回されてゲッソリしてる絵が浮かぶぞ。

 さすがはシズネとティファだな、あの2人と行動を共にさせる事にするか。

 シズネもティファも、精神的にも物理的にも、フェルムを振り回せるからな。


 うん、これしかないな。

 決定だな!

 シズネとティファの周りに居れば間違い無く心身共に強くなる、フェルムに必要な物を身に着けさせるには適役だな。


「あの・・・何をニヤニヤしてるんですか?怖いのですが」

「なに、お前が獣魔王就任した後の修行内容を思い付いただけだ」

「・・・やはり怖いイメージしか沸かないのですが気のせいでしょうか?」

「クックックッ、そいつはお楽しみってやつだ」


 恐怖と楽しさは半々ってところだろうな。


 まだブツブツ言ってるがフェルムの事はひとまずこれで良いとして、本来の用事を済まさないとな。


「アイシャ様は今日は何をしに来たのですか?」


 立ち直りが早いな。

 いや、脇に置いて仕切り直す気なのか?

 こういう所は見事だな。


「今日はユグスに用が有って来たんだ」

「学園長に?」

「あぁ、ティファがな今年数えで10歳なんだ」

「なるほど・・・ってティファさんが入学して来るって事ですか?」

「それが可能か聞きに来た」


 一筋縄じゃいかないかも知れねぇが、シズネがいたら間違い無く学校に行かせるだろうからな。

 あいつの意を汲んでやる位の事はしないとな。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「シズネ!腹空かないか?そろそろ昼飯にしようぜ」

「もうそんな時間?んじゃ作ろうか、早速その魚をやっちゃう?」

「言わずもがな!ってやつだな」

「サーイェッサー!ユグスちゃんとおっちゃんも食べて行ってね♪」

「おぅ!馳走になるぜ」

「アイシャの料理を早速頂けるのですね、楽しみですね」


 アイシャさんの焼き物・・・ビックリするよ!

 すっごい絶妙な焼き加減で仕上げるんだから、塩加減だって文句無しなんだよ。

 最初は不安がってたけど、いざ蓋を開けたらとんでもないレベルだったんだよね。

 皆もビックリしてたからね。


 最初に出したのは炙り肉だったんだけど、アイシャさんが炙ったって皆知ってたから、かなり恐る恐る食べたし、悪い事に一口食べたら皆黙っちゃった上に固まっちゃったんだよね。


『そんなに不味かったか?ゴメン今すぐやり直してくる』


 って言った後に皿を下げようとしたら。


『美味い!こんな丁度良い焼き加減の肉は初めて食べたのである』

『これはホント美味しいよー』

『なんっすかこれ!信じらんない完成度っす!』

『アイシャ様・・・さんに、こんなに凄い特技があるなんて知りませんでした!』

『ホントか?ホントに美味いのか?』


 瞳をウルウルさせて聞き返していたからなぁ。

 心底嬉しかったんだね。


 そんなアイシャさんは今じゃ他の料理にも挑戦してるんだよ。

 スープとか作ってるんだけど、まだまだだね。

 スープは私の方が美味しいって悔しがってたもん。

 私とアイシャさんじゃ作り方が違うから仕方無いんだよね。


 アイシャさんは具材を茹でて、茹で上がると具材を取り出して、水洗いして、再び煮て、味付けをして仕上げるの。

 その時にね茹で汁を全部捨てちゃうんだよ、出汁の出た茹で汁を。

 出汁を全部捨てちゃうから、いまいちな味にしかならないんだよね。


 でね、アイシャさんの作り方が変わってるのかスタンダードなのか聞いたの。

 そしたら、茹でて水荒いするのが普通なんだって。

 なんでも、茹でた時に出る灰汁を嫌って水荒いするし、茹で汁も捨てちゃうんだって。

 出汁の存在を知ってる私からすると勿体無いの一言だよ。


 そんな私はアイシャさんの狩ってきた獲物から出汁をとって弱火で火の通り難い物から順番に入れていって、丁寧に灰汁を取って味見をしてから味付けしてるから出来は良い方だと思うんだ。

 

 作り方の秘訣を教えても良いんだけど、アイシャさんはやり方を盗むつもりみたいなの。

 焼き場から私のやってる事をチラチラ見てる事が多いんだよ。

 時間と予算の無い現代社会では、見て盗むやり方は廃れて行っていたけど、『断崖荘』には時間はたっぷりあるし予算は・・・無いけど材料ならそれなりに有るからね。

 聞きに来るまで放置する事にしたんだ。


 さて、お昼は何を作ろうかな?

 うーん・・・アイシャさんは魚を炙るから、私は昨日の残りの炙り肉と根菜のスープにしよう。

 肉と魚を両方!

 ちこっと贅沢かも。


 さってっとっ、出汁はアイシャさんの焼く魚の骨を・・・って輪切りで焼くのか!

 しかも香草をまぶしているだと!

 さらに放置しているだと!

 あっ、あれは茸?

 まさか・・・付け合わせに焼くのか?

・・・アイシャさん、スキルアップが凄過ぎないか。

 素人レベルじゃないよね?


 なんだろう・・・料理はアイシャさんに全部任せた方が格段に美味しい物が出来上がりそう。

 私はお手伝いの方が良い様な気がしちゃうんですけど・・・


「ん?どうした?」

「あっ、いや、アイシャさんが凄い事をしてるなぁって見てたの・・・なんかさぁご飯作りはアイシャさん主導でやった方が美味しいのできそうだなぁ」

「あはははは、これはたまたま知ってる茸を見付けて、たまたま焼き魚が出た時に焼いたのが付け合わせで出て来たのを覚えていただけだ。それにな、スープと揚げ物って言うのか?あたしじゃまだまだ難しい。もう暫く観察させろ!」

「教えても良いんだよ?」

「教わるのは最後の手段だ、見て真似してダメそうな所をまた見て真似して、それを繰り返してアイデア尽きたら教わりに行く。あたしはな自分との相違が分からないと覚えねぇんだ」


 なるほど、やり方の違うところがハッキリと分からないと気を付ける事が出来ないのか。

 私も同じタイプだと思うから納得がいくなぁ。


「そう?揚げ物のこつはちょっと難しいかも知れないけどスープは簡単なはずたからね」

「おぅ今に見ていろ!ってとこだな」


 負けん気の強い努力家ってのは凄いね。

 遠くない将来、何でも作れる様になるんだろうなぁ。

 料理のスキルとか持ってたら、もっと凄い物を作ったりするのかなぁ?


 あれ?・・・今ふと思ったんだけどさ。

 料理のスキルって必要なのかな?

 だってほら、家庭の主婦の皆さんは料理のスキルなんて持ってないでしょ。

 それなのに家族が満足する物は作るんだしさ。

 アイシャさんが良い例だよね、スキル無くても焼き物に関しちゃ大絶賛される物に仕上げるんだから。


「何を考えてるんだ?スープの方は大丈夫なのか?」

「えっ?あっ!うん、今は出汁を取ってるからまだ平気だよ。それよりさ、斯く斯く然々でしょう、これってさスキルなんて無くても出来るんだよって証明にならないかな?」


 魚の頭を貰って出汁を取ろうと思ったんだけどね。

 頭って意外と灰汁と臭味が強いから止めてストックしてあった鳥の骨から出汁を取ってる最中なのですよ。


「出汁ってのは気になるが・・・それはそれで混乱をきたすんじゃねぇか?」


 そっか、頑張って熟練度を上げて仕事をしている人からしたら、今までの努力が無駄だって宣告されるのと同じだもんな。

 でもなぁ、模型・フィギュア作りを誰でも出来るって銘打って広めるんだし、余計なトラブルの種は解消しときたいんだよね。


「だがな、お前が提案して店主に広めてもらおうとしてる事が浸透したら、何事も否が応でもでもスキルは無くても出来るって事に繋がるだろうな」

「そうなるまでにトラブルは続出するよね?」

「だろうな」

「何とかならないかな?」

「難しいところだな、お前のやろうとしている事は今までの常識を覆す事だ。一言で完結に言っちまうと革命って事だからな。保守的な奴らの反発は避けられない事柄だよ」


 革命!?

 そ、そんな大それた事柄になっちゃうの?

 今からでも遅くないから広めるのを中止した方が良いのかなって思っちゃうんだけど・・・


 でもなぁ、私としては広めたい。

 だってさぁ、どんな格好良いフィギュアが出来上がって来るのかワクワクするし、見た事無い建物とか風景を見れるかも知れないって思ったら、やっぱりワクワクするもん。


 それにさぁ、ノスフラト君とユグスちゃんが結構気に入ってくれたみたいだしね。

 ユグスちゃんに至ってはコンテストに出品するかも知れない様な事を言っていたしな。


 ・・・あっ!そうかっ!

 魔王の名前を利用すれば良いのかっ!

 魔王も好んで作ってる、コンテストに出品してる、そうなれば反発は少しは減るんじゃないかな?


 うん、これ以上の対策は私の脳ミソじゃ思い付かないや。

 だけと、貸してくれるかな?名前を。

 そこだけ自信ないんだよね。

 魔王だよ、魔王。

 そんな凄い称号をホイホイ貸すもんじゃないと思うところもあるし。

 広く普及させる事に同意してくれるなら、あっさり貸してくれそうな気もするし。

 どっちなのか分からないんだよね。


「おっし!こっちは仕上げの岩塩を散らして完成だ。そっちはどうだ?」

「一煮立ちしたら完成だよ」

「そうか、じゃ先に持って行くからな」


 名前の件はこの後に本人達に直接聞くしかないか。

 当たって玉砕だっ!



 

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