げげげのげ!妖魔王参上?〔後編〕
「これはね・・・この石材からノスフラト君が作り上げた物なんだよ」
ノスフラト君に渡した石材と同じ位の大きさの『拒絶の壁』を出して説明を開始しまーす。
「これがこうなったのか?」
「うむ、細部に致まで削ったのである、内部も着手したかったのであるが、手法が見出せ無かったので断念したのである」
内部・・・そこまで出来ていたら恐ろしいクオリティになってたろうな。
「ポイントはね材料と道具が有れば誰でも作れるって所なの。材料も、これは『拒絶の壁』を使ってるけど基本的に何でも良いの。木でも石でも鉄でも」
「乾スラも有りであるな」
乾スラ?
分かんなかったから聞いてみた所、スライムを煮詰めて水分を飛ばした物を更に乾燥させた物らしい。
それってどうなるの?
水分が飛んで固めのブヨブヨした物体とかになるの?
それってゴムみたいな感じになるの?
分からん、次回おっちゃんに持って来て貰おう。
「しかしだな嬢ちゃん、こういうのを作るのが好きな奴も居るだろうが万人向けじゃねぇぞ」
「その反論は予測済みだよ、そこで2個目が出て来るんだよ」
ノスフラト君ヨロシク。
「まだ未完成なのだが、形にはなっているので披露するのである」
おぉ!
これが獣化版アイシャ想像バージョンか!
格好いい!
今のアイシャさんをとは似ても似付かないな。
全身を一回り大きくして全身が毛皮に覆われている。
手足の爪は肉食獣のと同様に太く鋭くなっている。
似ても似付かない最大の原因の頭部は虎っぽくなってるの。
っぽいってのはね虎と人を足して2で割った様な感じだからだよ。
あっ!
耳は人型の時と同じになってる♪そこだけ何か可愛い♪
ん?・・・まてよ・・・煮詰めたスライムってのがゴムみたいだったらだよ、ポリキャップみたいな使い方が出来るんじゃないかな?
そしたら、関節を稼動させる事ができるよね。よりリアリティを追求出来るよね?
煮詰めたスライム、早期ゲットせねば!
「シズネー大量だったぜー♪おっ!やっぱりユグスだったか」
アイシャさんが帰って来たよ、1メートル位の魚を両手に1匹づつ持ってるな。
2匹で大量?って思ったら後ろに居たスカージュちゃんとシュヴァツ君も両手に1匹づつ持ってたよ、全部で6匹か。
食べきるのに何日か掛かりそうだねぇ。
「ん?・・・んん?・・・これはもしかして、あたしか?」
やっぱり分かる?
「実物を見た事が無いので、伝え聞いた事を元に作ったのである」
「これはアイシャがモデルなのですね、妾もアイシャが獣化した所は見た事が有りませんので何とも言えませんが・・・」
「微妙に違う所が多いな、何よりダメなのは・・・何で裸なんだ?」
はい?
「獣化したって衣類は身に着けてるからな」
「そうなのであるか?我輩は文献でしか獣化の事は知らんので衣類を着用しているとは思わなかったのである、申し訳無い」
「分かってくれれば良いよ。しかし、何であたしなんだ?こういうのにするなら竜化したスカージュとかのが良くないか?」
「アイシャさんがモデルなのはね、見た事がないからなの」
「・・・意味が分からないのですが、作るのであれば正確に作れる物の方が良くありませんか?」
チッチッチッ。
見た事が無い物を作ったのはね、過去の魔王なんかもモデルにするためなんだよね。
伝承なんかは残ってるだろうから、それを元に想像して作り上げる事が出来るでしょ。
それ以外でも自分の空想を形にする事だって可能になるんだよ。
それは即ち、何でも有りなのだ!
「とするとだ、誰も見た事が無い代表みたいな存在の精霊の八属性王とかも作れるって事か?」
「その通り!それどころか存在しない生き物や場所なんかも作れるのよ。ほら髪飾りを見たでしょ?あれだって私の記憶だけにある物だもん」
「髪飾り?妾は見ていないですね、見せて貰えますか」
ユグスちゃんの飛行ユニットが見えた時に仕舞っちゃったんだった。
「これだよ」
「・・・これは良いですね、妾も自ら作る事は可能なのですか?」
「さっきも言った通り材料と道具が有れば誰でも作れるよ、【彫金】のマテリアルが有ればより上手に作れるだろうけど無くたって問題無いよ」
髪飾りは【物質変化】を使って大部分を作ったけど、大まかなサイズにするのは手作業だったしね。
人化したら彫刻刀を作って全部手作業で作りたいんだよね。
「すると、妾が作り出した世界に1つだけのアクセサリーが作れるという事ですね」
「ほう、そういうのも有りって事なんだな」
「何でも有りだよ。それでね教えて欲しいんだけど、煮詰めたスライムって色を塗ったり出来る?」
「どうだろうな?あれは隙間を埋めたりするのに使う物だからな」
「色ならー、塗れるよー」
ずっとシゲシゲと人魔王の城を見ていたミランダさんが教えてくれた。
「煮詰めるとどんな感じになるの?」
「煮詰め具合とスライムの色にもよるのであるが、多少弾力性のある蝋石の様になるのである」
弾力性の有る蝋石?
蝋石って結構簡単に削れる石だよね、それに多少の弾力性が追加される・・・固いシリコンみたいな感じ?
だとしたら、加工とか簡単に出来そうだね。
「それって値段は高いの?」
「1キロで銀貨1枚位だな、決して高いもんじゃねぇな」
なら決まりだね、煮詰めたスライムでフィギュアを作れるね。
「おっちゃん、この想像版獣化アイシャさんに着色してあったら商品になるかな?」
「うーん・・・アイシャ様には悪いが万人向けじゃねぇな、だがアイシャ様を信奉してる奴には売れると思う」
「だったら、魔王全員とか過去の魔王とかも有ったら?」
「そんなら話は別だな、そんだけ種類が有れば十分商品になる」
「それならさ、沢山の人にこういうのを作って貰う事は出来る?」
「同じ物をか?」
「同じじゃないのを、その人が思うポーズ・デザインでいいの」
「時間は掛かるが可能だと思うぞ」
くっそー
表情が作れたらニヤリと笑うところなんだけどな。
「それなら出来そうだね」
「何をだ?」
「コンテスト、誰の作った物が一番人気が有るかを決めるの。それで1番になった人のを量産化して売るの」
「なっ!・・・嬢ちゃんそいつは、面白れぇな!」
初回は部門なんて作れる程の出品は無いだろうけど、回を重ねればそれも可能になっていくと思うの。
まぁ定着したらって大前提があるんだけどね。
「それは、この様な人型のみを対象とするのですか?」
それまでテーブルの上に置いてある髪飾りを見ながらブツブツ言っていたユグスちゃんだったんだけど、コンテストって聞いて注意がこっちに戻ってきたみたいだよ。
「おっちゃん次第かな、私は建物・風景・アクセサリーなんかのコンテストも有りだと思ってるよ」
「それならは妾も出してみたいですね。もちろんアクセサリーでです」
「おっちゃん、魔王も出品するコンテストになるかも知れないよ、ノスフラト君は既存の物を作るのが得意みたいだしさ」
「一大イベントじゃないか!それをやらない商人は只の馬鹿じゃねぇか!」
ユグスちゃんナイスアシスト!
おっちゃんがノリノリになってきたよ。
こんなにノリノリなら私は提案だけでも良さそうだね。
色々と細かいセッティングは、おっちゃんに丸投しちゃおう。
つかね、私じゃ何も出来ないのだよ。
でもね、根本的な疑問は有るんだよね。
何で今まで作る人が居なかったのかって事なんだよ。
フィギュアとか模型とか簡単に思い付きそうな感じがするんだよね。
ホント何でなんだろう?
「ノスフラト君、こういうのを思い付く人って今まで居なかったの?居なかったなら何でだろう?」
「ふむ・・・仮説ではあるがスキルのせいだと思うのである。こういった物は普通複数のスキルを使い作る物である。その複数を持った者など稀な存在なのである」
そういう事か。
スキルがないと出来ないって決め付けちゃっていたから、例え思い付いても実行しなかったって事なんだ。
ぞれじゃスキル無しでも出来るってなれば、他の事柄でもスキルは無いけどやってみようとする人が出て来たりするのかな?
ちょっとトラブルが起きそうな予感はするけど、そんなもんは直接関係しなければ知ったこっちゃ無いで良いよね。
どんな?って。
スキル持ちの人がいちゃもん付けて来るって感じかな。
でもさぁ、文句言って来る暇があるならあんたも作ってみろや!って思うしね、やっぱり無視で間違ってないね。
「・・・スキルは関係ない・・・家柄も関係ない・・・年齢も関係ない・・・必要なのは材料と道具と・・・自分の技量のみ・・・」ボソ
ん?・・・何を考えいるのかな?
ボソッと言っていた通り脳内に浮かんだ物を再現するだけだよ、それさえ出来るなら難しい事は何もないよ。
「・・・学園の特別授業にこれを採用してみるのは・・・」ボソ
学園?上に有る学園の事かな?
「ユグス殿は学園に永く務めているのである」
「マジで?だからあんな事を呟いてるんだ。でもさ、これの制作を授業にしてどうなるの?」
「妾はですね、長年に渡り学園の問題点を解消できないか色々と試しているのです。これらの事ももしかしたら解消に繋がるのではないかと思いましてね」
問題点って言うと差別の事かな?
それとも他にも何か有るとか?
つか学園に務めてるの?
特例で私の入学を認めてくれる推薦してくれないかな?
もししてくれるなら『拒絶の壁』の石材を格安で・・・いやタダで回しちゃうんだけど。
「シズネ殿?何やら悪巧みをしている時の雰囲気なっておるが、何を思い付いたのであるか?」
えっ?
雰囲気で分かっちゃうの?
つか、そんなあからさまに変わるの?
なんか・・・私って色々とバレバレなんだな・・・軽くショック。




