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そのハムスター、享楽家につき ~色々な称号、熨斗付けて返却したいんだけど?~  作者: ウメルヴァ
ハムスターに転生 3章 千客万来

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時は満ちたっ!〔スカージュの場合〕

 やった・・・

 やったー!

 ブレスの小範囲化に成功したっ!

 まぁ、ちょこっと射程は伸びちゃったけどね。


 それでも、前と違って予想外の所まで被害が及ばなくなって意図した所にだけブレスを使える様になったんだ。

 私!頑張った!凄いよ!偉いっ!


 ふっふっふっ。

 これでシズネさんとの勝負は、あたしの勝ちで決まりだね。

 シズネさんはまだ浴槽がどうとか出水口がどうとかって呟いていたから、あたしの完勝って事で間違いないはず。


 完勝・・・良い響きだぁ。

 ここまで真剣に勝負事に取り組んだのは久し振りだなぁ。

 シュヴァツに出会うまでは勝負事とかね負けた事は無いんだけど・・・全部、父上の機嫌を損ねない様にって勝負相手はわざと負けてたんじゃないかな?


 子供同士の勝負事の結果で機嫌悪くなったりするほど大人気無いって事はないはずだけど、父上は権力者だからなぁ。

 万が一ってのを考えると下手な事は出来ないって事なんだろうな。


 うん?シュヴァツ?

 うん、シュヴァツとはね入学してから知り合ったんだけどね、勝負は負けてくれるなんて事は一切しなかった。

 それまで負け知らずだったから、負けて凄いショックだったよ、と同時に悔しかった。

 逆ギレしてシュヴァツに食って掛かって再戦を申し込んだしね、・・・受けてもらえなかったけど。

 

 その後も何度も色んな事で勝負を挑んだけど、全く勝てなかった・・・属性色がハッキリ出て来るまで勝てなかった・・・


 それで思ったんだ、他の人はわざと負けてるんじゃないか?って。

 あたしじゃなく父上に気を使ってるんだって。

 そんなふうに思えちゃったんだよね。


 その当時仲の良かった人達も、あたしじゃなくて、あたしの背後にある父上の影を見ているんであって、あたしを・・・あたし個人を見てるんじゃない。

 そう思ったんだよね。


 そしたらね・・・あたしって独りぼっちなのかなぁ?

 そう感じちゃってね、涙が出て来ちゃったんだ。


 丁度良く学校の庭園の隅っこで1人でノンビリして居たから、誰にも見られてないって思った所にタイミング悪くシュヴァツやって来たんだよね。

 そん時はシュヴァツに茶化されると思ったんだけど・・・気を使われちゃった。


『どうしたんだ?』

『何でもないわよ』

『・・・何か有ったからこんな所で泣いてんだろ、オレで力になれるなら手を貸すぞ』

『な、なんであんたにっ!』

『・・・調子が狂うんだよ、いつものお前じゃないと』

『あたしはいつも通りだよっ!』

『そんな事はない、いつもより・・・そんな事より、誰かに話すだけでも楽になる事ってあると思うぞ。オレで良かったら聞くけど・・・オレには言えない事か?』


 あたしはシュヴァツがこんなに優しくしてくれるなんて思って無かったから、また泣いちゃったんだよね。

 シュヴァツはね、あたしが泣き止むまで何も言わないで待っててくれた。


『少しは落ち着いたか?』

『・・・うん』

『で、どうしたんだ?オレに話しても平気な事なら話してくれ、もちろん誰かに話したりはしない』


 それを聞いてね、また泣きそうになっちゃったんだけど、グッと堪えて泣いた理由を話した。


『そうか、そういう事か・・・1つだけ確かな事があるぞ』

『・・・なに?』

『オレは、お前の親父の事なんて見てないし気にもしてない。お前だけを見て勝負してるんだ、これは間違い無い』


 今、考えればその通りなのは分かるんだよね、でなかったら本気で勝負してくれて無かったはずだもん。

 だからね、それを聞いた時は凄く嬉しかった。


 あたしの事を、あたしを父上抜きで見てくれている人が居るってのが分かって凄く嬉しかった。

 それからだな、シュヴァツの見方が変わったのは。

 きっとね、あたしを見てるって台詞でコロリとまでは行ってないけど、大きな存在にはなったなぁ。


 それからシュヴァツはね。


『オレは喋らないけど・・・オレの秘密をお前に教える』

『何?あたしがあんたを信じてないって思ってるの?』

『そうじゃない、相子じゃないだろ?オレだけが知ってるってのは』

『そうかも知れないけど・・・いいの?』

『オレの知ってるお前はペラペラ喋ったりしないはずだから構わないぞ』


 なーんか妙チクリンな会話だなぁって思ったんだよね。

 信じてるを信じてないのか?って、普通は逆だよね。


 んま、元々妙な関係だったから仕方ないのかな。

 そんでシュヴァツの秘密ってのは、かなりビックリだった。


『オレが親無しなのは知ってるだろう?』


 シュヴァツは最近じゃ珍しい卵から生まれた個体だって聞いた事が有ったの。

 卵から孵化するのって決まった期間が無いの。

 早ければ半年位で孵化するのも有るけど、長いと数十年孵化しないのも有るんだ。

 シュヴァツはその数十年の方だったらしくて、卵の頃に養父母の畑に放置されてたって話を聞いていたの。


『その養父母なんだけどな、バルムンドとジークリンデって名前なんだ』

『・・・バルムンド?・・・ジークリンデ?・・・それって!』

『やっぱり気が付くよな・・・5代前の竜魔王夫妻だ』


 2人共、今の竜魔族の礎を構築した人なんだ。

 バルムンド様は竜魔族共通の法を制定し領主や有力者が勝手決めていた法を廃棄させた。

 ジークリンデ様は子の成し方を卵でなく人型でするのを主流にする為に尽力した。

 どっちも今でも信奉者が居る存在だよ。


『もう一つ、これは父さん母さんとオレしか知ってない秘密なんだけど・・・』

『っ!!!そ、それはホントなの?』

『ホントだ、たった1枚だから気付かれてないけど間違い無い』


 もう一つ秘密は、あたしの悩み事なんて小さくて笑っちゃう位に重大な事だったの。

 その後の勝負なんかで、あたしも確認したから間違い無いの。


 あの時に、そんな重大な事をあたしなんかに話て良かったのかは今でも疑問なんだけど、今のあたしは奥さんだから問題は無いんだ。


 って・・・あれ?

 何でこんな事を思い出してるんだろう。

 あれ?・・・


 まぁいっか。

 小範囲ブレスが出来る様になったってシズネさんに報告して勝ち誇ってやるぅ!

 あははははは♪


 ・・・

 ・・

 ・

 あるぇー?

 なんでだろう?

 勝って嬉しいはずなのに・・・なんか妙な違和感みたいのがあるなぁ。

 うーん・・・


 訳が分からん!

 この違和感は気のせいだ!

 きっとそうだ、間違い無い!


 んじゃ。

 帰ろうっと。

 

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