なるようになるさ!〔中編〕
クックックッ。
ちょっとしたイタズラを思い付いちゃった。
やり過ぎ注意でスカージュちゃんとシュヴァツ君をからかっちゃおう。
「スカージュちゃん・・・ここにはある物を置いておく専用の場所なんだよ」
「ゴクリ・・・あ、ある物って何ですか?」
「オレも見当付かないです」
「ある物って言うのはね・・・」
こういう時ノスフラト君ってネタバレしないから助かるわー
何だかんだでノスフラト君も人をからかうのが好きみたいなんだよね。
「ネタバラシする前に・・・ここって涼しいよね?」
「「そうですね・・・」」
「こうゆう涼しい所ってさ物が腐りにくいんだよね」
「「ゴクリ」」
「そうゆう腐りにくい所に置くの物ってのはね・・・骸、死体だよ」
「「!!!!」っす!」
「ほら良く見て、落ちて来ないように棚が奥下がりになってるでしょー」
「あぁっ!ホントだ少し下がってる!」
「な、何で死体置き場なんてものを・・・」
「我輩の魔力増加の為である」
いいねっ!
ノスフラト君が言うと説得力有るよ。
「死体で魔力増加っすか?」
「ね、どうやるのか知りたいよね」
「我が一族の秘匿技術なのである。教える事は出来ないのである」
「秘匿技術ですか・・・オレは筋力が無いから魔力増加したかったんですけど・・・秘匿じゃ諦めるしかないですね」
「スカージュちゃんはもしかしたら見る事が出来るかもよ」
「えっ?・・・えぇっ?何でっすか?」
「ほら、賭けで負けたら倒れるまで照れさせるって言ったでしょ?」
「・・・っす」
「倒れたら気が付くまでここに置く予定なんだよね。火照った身体を休めるには丁度良い涼しさでしょ?」
「っ!!!!!」
「そうだったのであるか?・・・ふむ、上座を開けておくのである」
「い・・・イヤッすー!!ここには置かないで欲しいっす!あたし・・・あたし・・・」
ちょっとやり過ぎかなぁ・・・
ノスフラト君を見ると、同じ様に私を見てたよ。
頃合だね、ネタバラシと行きますか。
「スカージュちゃーん・・・・」
「な、なんすかっ!」
「よっく見てみて、この棚はスカージュちゃんが横になれる程の奥行きは有るかな?」
「えっ?・・・無いっす・・・えっ?じゃあ」
「ピンポーン♪死体なんてバッチイ物は置きません!ノスフラト君!正解を見せてあげて下さい」
正解を見せる為に棚に近寄って2人からは見えないように本を置いて行ってるね。
ノスフラト君は分かってる!
正解が見えたら『あっ』っと言わせられないからね。
「2人共、これが正解である」
「「あっ!」」
ありゃ、マジで『あっ』って言ったよ。
「本を置くための棚だったんですか!」
「これ全部が本を置くための棚っすか?」
2人共ビックリしてる、誉められてるみたいで嬉しいなぁ。
「でも、何で奥に向かって下がってるんですか?」
「下の方ってさ、水平だと背表紙が見難くない?あとね、地震・・・ってこっちでは有るの?」
「地震っすか?ここらへんには火山は無いから起きないと思うっす」
地殻変動が原因の地震は無い世界なのかな?
でも、頻繁にないだけで起こるかも知れないしね。
「そっかー無いならあんまり関係ないけど、揺れても落下し難い対策なんだよ」
「それだけでは無いのである、この傾斜と下敷きの木の滑り具合で本の重さで奥まで滑って行くのである」
そんな効果も有ったんだ。
こっちの本は大きいからね、重さも有って当然か。
しかも、全部手書きみたいなんだよね。
あっ!・・・でも複製とか複写の魔法が有って、それで量産してるとかも可能性有りだな。
でもでも、学校に図書室が無いって事は本自体が高い?
全部手書きだったら高そうだよなぁ、掛かる手間暇は膨大になるだろうし値段が上がるのは必然なのかも。
せっかく紙は庶民まで普通に流通してるんだから、本も一般化すれば良いのに。
あっ!・・・版画・・・版画ってこっちにも有るのかな?
もし有るなら・・・活版印刷って言ったっけ?
一文字一文字、版を並べてスタンプする印刷方法を広められるかもなぁ。
版画が無いなら無いで版画から広めるって手もあるね。
芸術とか美術のリサーチが必要だね、本の製造法についてもリサーチしないと。
ノスフラト君ならそゆの詳しいかな?
後で聞いてみようっと。
「・・・シズネさん・・・シズネさん・・・シズネさんっ!」
「えっ?なっ!なに?」
「どうしたんですか?気が付いたら固まって動かなかったんですが」
「ちょっと考え事をね」
「あたしはてっきり発条が切れたのかと思いましたよ」
なっ!・・・爺様と同じ事を言うのか。
「シズネ殿が考え事をしてると悪巧みな気がしてしまうのである」
ノスフラト君まで!
くっそぉ!
悪巧み・・・披露しようじゃないか!
「悪巧みなんて酷いなぁ、私はただスカージュちゃんの安直場所は決まったから、どうやったら最大限に照れるかを考えてただけだよー」
「やっぱりやるんですか?」
「もちろん!勝負だもん」
「小範囲・・・あともう少しで出来るんだけど・・・」
「次は、おっちゃんが来るまではお風呂に取り掛かるからね、お風呂が完成したら・・・クックックッ」
「ううう・・・シズネさんのいけずぅ!あたし負けませんから」
「イメージはだいたい出来てるから1週間位で出来ちゃうからね♪」
「1週間・・・あと1週間だけっすか・・・倒れるまで頑張るっす!」
「クックックッ・・・今から楽しみだなぁ、4人で寄って集って照れさせるの。クックックッ」
「こ、やっぱりここは鬼か悪魔の巣窟っす!」
「ふむ、その通りである。悪魔は知らんが鬼なら居るのである」
「あっ!・・・う、うう・・・うわぁーん」
ノスフラト君・・・止め刺したね。
追い詰めたのは私だけどさ。
こりゃ謝っておかないとな。
「・・・スカージュをからかいたいのは良く分かりますが、もう少し手加減をしてもらえませんか?」
「ノスフラト君が止めに来るとは思わなかった・・・」
「我輩もあそこまで効果が出るとは思わなかったのである・・・」
「オレも泣き出すとは思わなかったです」
今、謝りに行っても取り合ってくれなさそうだし・・・
どうするかなぁ。
・・・
・・
・
そうだっ!
「シュヴァツ君、これをスカージュちゃんに渡しといて欲しいんだ」
おっちゃんに見せるために試作した百合の花の模った髪留めなんだけどね。
『拒絶の壁』の色そのまんまだから蒼いんだ。
スカージュちゃんの赤い髪には似合うと思うんだけど・・・
受け取ってくれるかな?
作っておいて何だけど・・・シンプル過ぎて地味なんだよね。
「これをあげても良いんですか?これ、買ったらとんでもない値段になると思いますけども・・・」
「値段なんて知らない。それよりも受け取ってくれるか心配だよ?それ地味な上に試作品だし・・・スカージュちゃんの為に作った訳じゃないもの」
スカージュちゃんの為に作った物も有るけど、謝罪を込めて渡す物じゃないし。
「タイミングさえ間違えなければ大丈夫です。鍛冶仕事をやってる時に前髪が邪魔だって言ってたので、髪留めは欲しいと思います」
「ふむ、ならば少々待つのである。我輩が守護の術を込めるのである。鬼族の守護・・・あまり知られてはおらぬのであるが、それなりに効果は有るのである」
「有り難う御座います!それとシズネさん、オレもこうゆうのを作ってみたいです」
「おっ!そうなんだ!んじゃ私の手持ちの材料をあげるよ。何で作りたいの?」
「材料は特に・・・初めてやる事なので安価な物でお願いします」
安価?・・・安価かぁ。
んじゃインゴットは除外だね。
あと材料って言ったら『拒絶の壁』位だなぁ。
「んじゃ、これだね」
「いやっ・・・これは安価じゃ無いでしょう!」
「安価である。周りを見るのである。ここの部屋に詰まっていた物は極論してしまえばゴミとなったのである」
ホントに極論だね。
ゴミとまではいかないって。
でも、今の所は利用価値が工作位なのは確かだね。
「いっぱい余ってるからね」
「そ、そうですか・・・では遠慮無く使わせてもらいます」
「そうそう、形になったら私の所に持って来てね。固くして変形しないようにしてあげるからさ」
「はい、それじゃスカージュの所に行って来ます」




