仕上げに向けて〔前編〕
こいつ等・・・重い!
成人間近の妖魔族男子4人は重い!
・・・その辺りに捨ててっちゃダメかな?
学園長には報告だけしてさ、こいつ等には自力で帰ってもらうってのはダメかな?
シズネさんみたいな脅し方をすればさ、バレたりはしないと思うんだよね。
あ・・・
あたしにはシズネさんみたいな、どうやったか分からないスキルって無かったや・・・
ティファみたいに圧倒する実力も無いしなぁ。
あたしも戦闘訓練をしようかな。
いざって時にきっと役立つよなぁ。
でもなぁ、鍛冶の方も思った通りの形に加工できる様になってきて面白いし。
戦闘訓練をやってる余裕が有ったら叩いていたいってのが本音だしなぁ。
そうだー!
「ねぇ君達、ここで捨てて行って良い?重くって疲れちゃったよ」
素直に聞いてみたら案外オッケー出るかも知れないし。
「ここでって・・・この高さでって事ですか?」
「その方が手っ取り早いねー」
大丈夫!
『拒絶の壁』のてっぺんから飛び降りて着地出来る人だって居るんだから、この程度の高さなら、100メートル位なら死にはしないって。
それに、妖魔族じゃない、飛んで見せろ!
「スカージュ・・・」
「あっ!シュヴァツ?なんでここに?」
「スカージュ、だんだんシズネさんに似てきたな。そこは似ない方が良いところだぞ」
えっ!?
似てきた?あたしが?
そんな事はない・・・んじゃ・・・いや、言いそうだなぁ。
『メンドクサクなっちゃった、捨ててくね♪』
ニコやかに言い放つシズネさんを想像出来ちゃったよ。
うわぁー
言われたら絶対に引くか焦る台詞だよ。
あたしがそれを言ってたのかぁ。
気を付けなきゃなぁ。
あ、いや。
シズネさんに似るのが嫌な訳じゃないんだけどね。
似ない方が良いところも結構ある人だからさ。
それを気を付けようって事なんだよ。
「スカージュ、半分持つから行こう」
「えぇー全部持ってくれないの?」
「オレじゃ4人は無理だ・・・もう少し鍛えないと駄目だな」
シュヴァツはあたしより筋力低いんだったよ。
すっかり忘れてた。
「あたしもね、ちょっと鍛えようかなって思ったんだ。シズネさんが帰ったらトレーニング用に岩を貰おうか?」
「あぁ、アイシャさんも使ってるあれか・・・そうしよう」
「じゃあさ、どっちがたくさん上がるか競争ね♪」
「受けて立とうじゃないか」
「うん、あたしが勝ったらねー・・・そろそろ子供が欲しいかなぁ」
「分かった、作ろう。で、オレが勝ったら?」
「あたしがシュヴァツの子供を産んであげる♡」
「・・・ふふっ、ははははっ!全く、シズネさんみたいだな。了解だ、それで行こう」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
幸せはー歩いて来ない♪
来ないなら奪うのみっ!
ひゃっはーっ!
・・・この歌の歌詞ってホントにこれで合ってるの?
マッドマックス臭がプンプンなんだけど。
脳内に教えてもらったんだけど・・・
やっぱり変だよね?
あいつの言う事は話半分で聞いた方が良いのかな?
ふぅ・・・騙された。
気を取り直して、と。
幸せについてなんだけどね、『断崖荘』の皆は何かしらやる事が有って、日がな一日ボーッと過ごす人って居ないの。
そのやる事も嫌々やってる訳じゃないから楽しそうなんだよね。
だからね。
きっと皆は幸せなんだと思うんだ。
私?
もちろん私も幸せなんだと思うよ。
部屋を完成させると嬉しいし。
ダメな所を改善して喜んでもらえたら嬉しいし。
中学生やってるより楽しいもん。
それにだよ。
後、ノスフラト君の書庫とミランダさんの作業場とお風呂を作ったら一応『断崖荘』は完成なのだ!
だから今からお風呂と作業場について相談にミランダさんの所に行くんだ。
朝ご飯の時に。
『今日は休みにしようかなー』
って言ってたから、部屋に居るはず。
コンッコンッ。
入室前のノックはマナーです!
「ミランダさーん」
「・・・・・・・」
あれ?
コンッコンッ。
「ミランダさん居るー?」
「・・・・・・・・・・」
留守?
どこ行ったのかな?
気が変わって仕事でもしてるのかな?
「シズネさん、どうしたんですか?」
「スカージュちゃんミランダさんを知らない?用事が有ったんだけど留守みたいなんだよね」
「ミランダさんなら食後の運動って言ってましたよ。散歩じゃないですかね」
散歩かぁ。
材料集めをやらないなら帰りは早いだろうけども・・・
いつ戻るか予測できないなー
とりあえず、玄関で待ってみようかな。
「そうそう、爺様の所に行く通路なんだけどね、そのうちに場所を変えるから」
「そうなんですか?あたしはあそこからでも構わないですけど」
「うーん、あそこから台所に熱気が入って来るのがイヤなんだよね。これから暑くなるんでしょ?」
「あぁ、なるほど、台所はただでさえ暑くなりますもんね」
「そゆ事なんだ。でもね、熱抜きが出来ると助かるって爺様が言ってたから、別の所へ繋ぐつもりなんだよね。あの熱を使ってお湯が作れないかな?って考えてるの」
「お湯?お湯なんてなんに使うんですか?」
「洗い物とかお風呂とかにだよ」
「お風呂っ!お風呂のお湯作りに鍛冶の熱を使うっすか?」
っす、になった。
ビックリするとなるのかなぁ?
以降も検証しよう。
「あんだけ熱いんだもん何かに利用出来そうじゃない?」
「そうっすね。ここに来るまでお湯を沸かすのがあんなに大変だって知らなかったっす」
「だよねーだからさ、予め用意出来てたら楽だし直ぐに入れるしね」
これも簡単には行かないんだろうけどな。
『拒絶の壁』って熱くなるまでかなりの時間が掛かるから、熱気の温度が下がらない工夫が必要だろうしさ。
まぁ完成するまでは別のもので沸かすけどね。
「完成するまでに時間かかると思うけどね。それまでは別の高火力燃料で沸かすんで良いよね?」
「ここにそんなのが有るんですか?」
「有るよっ!とっても凄いのが!それは自立歩行が出来る上に飛行も出来ると言う優れものだよ!」
「・・・シズネさん・・・それってもしかして・・・
「そう!その名もスカージュ!高火力の燃料だよ!」
「やっぱりあたしっすか!・・・いや、まぁ、確かに高火力かも知れないっすけど・・・あたしのブレスは広範囲過ぎて無理だと思うっす」
「その点も大丈夫!ふっふっふっ」
「な、なんすか?その不気味な笑いは」
「あのね、皆で寄ってたかってスカージュちゃんを照れて倒れさせちゃえば丁度良い火力になると踏んでるの」
「えっ!?なんなんすか!それじゃあたしはお湯を沸かす度に倒れるって事っすか?いゃいゃいゃいゃ!無いっす!却下っす!」
「でも・・・皆に話したら興味持ってたよ?」
「なっ!?・・・こ、ここは鬼か悪魔の巣窟っすか?あたし泣いちゃいますよ」
「あはははは!スカージュちゃんは皆に好かれてるんだよー」
「どこがっすか!寄ってたかって苛めようとしてるじゃないっすか!」
「それは違う!少なくとも私とノスフラト君はキライな奴とは言葉を交わさない!と言うか、存在すら否定する!存在しない奴を苛めるなんてのは不可能でっす!」
「あ、いや、そんな事を力説されても・・・色々とされる事に変わりはないんですよね?」
「うん!無い!」
「やっぱり苛めじゃないっすか!」
「だから違うっ!愛情表現ってやつ?」
「そんな愛情表現はヤダーッ!もっと優しい愛情表現が良いっす!」
もう、ワガママなんだからぁ。
可愛いから、ついつい弄りたくなるって有るじゃない?
そゆ事なんだけどなぁ。
「苛められるのはイヤっす!でも・・・お風呂は入りたいから小範囲高火力のブレスが出来るように練習しまっす!」
「そうなの?・・・むぅ・・・つまんないぃ」
「あぁっ!やっぱりオモチャにしようとしただけっすね!」
「違うよぁ!お湯を作るのがメイン!でも・・・楽しく作れたら良いなぁって」
ただ沸かすよりは楽しいはずなんだぁ。
何事も楽しめたら人生勝ちじゃん♪
「あたしはあんまり楽しくなさそうなんですけど?」
「うーん・・・スカージュちゃん以外は楽しいかも?」
「あたしだけ仲間外れ?それもイヤーッ!」
スカージュちゃん・・・以外と子供な所が有るんだなぁ。
少ーしづつだけどスカージュちゃんが分かって来たぞ。
ドラゴン形態の見た目より人型の見た目の方の印象の方が性格的には近いみたいだなぁ。
寂しがり屋って言うか、かまってちゃんって言うか、孤立するみたいな感じが心底イヤって感じなのかな。
んー・・・
わざと仲間外れにしなければ問題無いかな?
ほら。
わざと仲間外れってあざとくなるじゃない。
悪意しか感じれなくなるだろうしさ。
「とにかく、小範囲の練習をするっす!シズネさんが湯沸を完成させる前に出来るようになるっす!」
「ほっほー!んじゃ勝負だね!私が早く作るか、スカージュちゃんが早く出来るようになるか」
「負けませんからね!」
「私が勝ったら言った通り照れまくりにする!スカージュちゃんが勝ったら・・・一番最初にお風呂に入る権利・・・これでどう?」
「それいいっすね♪受けて立つっす」
両者合意の上で勝負だ!
でもなー
私の方が不利なんだよね。
予定通りに進めるとなると、湯沸施設は一番最後・・・書庫・作業場・浴室を作ってから作り始めるから早くても1ヶ月後位に取り掛かる事になるはず。
下手したらもっと後になるかもしれないんだよ。
作業場がね時間掛かる可能性大なんだよ。
『拒絶の壁』に造る訳じゃなくて外に造るから初めての作業になるんだよ、だから予測が丸っ切り出来ないのだ。
スカージュちゃんは、これから爺様の所で修業だからって行っちゃったから勝負に勝つ為の算段をしながらミランダさんが帰って来るのを待つとしますかねー
ブックマークが増えてる!?
仕事が忙しく2週間振りにログインしたら増えてる・・・正直ビックリしたよ(笑)
ブックマークしてくれた方々、興味を持ってもらえて嬉しいです。
のらりくらり進むお話ですので、気長に読んでやって下さい。




