プレゼントでっす〔中編〕
女泣かせな事をしでかした私は裁判を受けるべく護送中って訳では無くてぇ。
泣かしちゃったスカージュちゃんと先生みたいなシュヴァツ君にプレゼントをするために街に買い物に向かっているのだよ。
「もう直ぐ着くっす、発着場まで一直線っす」
んー・・・
「スカージュちゃん、ちょっと待った」
「なんすか?」
「2人は駆け落ちしたんだよね?なら、人目に付く所に降りちゃダメなんじゃない?」
「大丈夫じゃないっすか?ここいらには竜魔はあんまり来ないっすよ」
「いや、報告するのは竜魔だけとは限らないから着陸場に降りるのはよそう」
「シュヴァツ君の言う通りだと思うよ。それに、竜魔がいないなら逆に目立っちゃうんじゃない?」
「そうっすか?まぁ2人が言うならそうするっす」
駆け落ちして直ぐなんだし、捜索してる人はどこに居てもおかしくないって思って行動する方が良いよね。
まぁ。
コソコソし過ぎると逆に目立つからスカージュちゃんの警戒心の薄さってのも大事なのかも知れないけどね。
「んじゃ、この辺りで降りるっす」
「りょうかーい」
あるぇ、ここってこないだ来た時と同じ辺りだ。
って事は・・・実はここいらって秘密裏に降りるに最適な所だったりするのかな?
うーん・・・考え過ぎかな。
それはさて置き。
「スカージュちゃん!竜魔って凄く早く飛べるんだね!」
「え?・・・あれでもゆっくり飛んだっすよ。最速の3割位っす」
な、何ですと!
あれより3倍以上速くなるの?
竜魔ってすっげー!
「あたしは火竜の系統だからあんまり速くないっす。シュヴァツは風竜の系統だから、あたしより速いっすよ」
系統で速度が違うのか!
竜魔族・・・奥が深いな。
「シズネさん、先ずはどこに行くっすか?」
「とりあえず、おっちゃんの店に行こうと思うの。・・・その前に、ちょっとじっとしててね」
なんとなーく、隠れた方が良いと思うんだ。
前に来た時に派手な事をやらかしたしさ。
「なっ!ちょっ!シズネさんどこに!」
私が隠れるって言ったら1箇所だけだよ。
そう!
おっぱいの間です。
「前に来た時にね語り種になる事をやっちゃってね、隠れて移動したいの」
「だからって胸に挟まらなくても!」
「ここが一番なんだよ?女性の胸を凝視する変態なんて街中にはそんなに居ないだろうしね」
「でも・・・あたしの胸なんて凝視する程の大きさじゃないっす。ミランダさんやアイシャさんとは違うっす・・・チッパイっす」
あーこらこら。
自分で言っておいて泣きそうにならないの。
スカージュちゃんのおっぱいは小さくないよ、デカパイじゃないけどチッパイでもないよ。
正におっぱいって大きさだと思うよ。
「おっぱいに貴賤なし!大きいのには大きい良さが、小さいのには小さい良さが、並には並の良さが、どれも甲乙点け難い!って言った人が居るよ。それにスカージュちゃんのはチッパイじゃない!私が保証する!」
冷静に考えるとさ。
逆に凄い馬鹿にしてると思うんだよ。
おっぱいなら何でも良いって事だもの。
何でも良いなら大小なんてどうでもいい事になるんだね。
って事はさ、ファットな野郎の乳でもいいんじゃないの?
そう思わない?
絵面は汚なさそうだけどね。
「ホントっすか?ホントにチッパイじゃないっすか?」
「うむ!断じて違う!絶対違う!これがチッパイならホントのチッパイは胸無しだっ!だよね?シュヴァツ君」
「うぇっ?オレに振らないでくれませんか?女性のおっぱいなんて養母とスカージュのしか知りませんから」
むっふふ、ちこっと揶揄っちゃおうかな。
「へぇー・・・スカージュちゃんのは知ってるんだぁ、へぇー」
「なっ!シ、シズネさんっ!」
あははははは。
いつも冷静なシュヴァツ君が慌ててる。
・・・もう一押しだけしとこうかな。
「で・・・シュヴァツ君的にスカージュちゃんのおっぱいはどうなの?」
「えっ!なっ何がですか!?」
「満足なの?好きなの?言う事無しなの?」
「あ、当たり前じゃないですか」
「だってよスカージュちゃん。旦那さんが文句無いって言うなら最高のおっぱいって事だよ♪」
あっはっはっはっは。
スカージュちゃん真っ赤だぁ。
両手を頬に当ててるし、目がのの字になってるし、心なしか頭から湯気まで出てるみたいに見えるし。
うーん・・・
言葉使いはアレだけど、見た目はお嬢様って感じの綺麗な顔立ちしてるし、細身で背も高い方じゃないしウェストがメッチャ細いからおっぱいもこのサイズで自己主張している、ないすばでーわがままばでーしてるんだよね。
羨ましいぞ!シュヴァツ君!
そんな人がさ真っ赤になって湯気が出てると可愛いんだよなぁ。
更に羨ましいぞ!
・・・ここは一つダメ押ししておくかな。
「シュヴァツ君!スカージュちゃんを頂戴っ!大事にするからさ♪」
「はい、どうぞ。何て言う訳無いでしょう!スカージュを大事するのはオレですっ!」
「だってよー、スカージュちゃんは愛されてるねー♪」
って・・・やっべー!
やり過ぎたかな?
スカージュちゃんの口の端からチロチロ火が出てる。
極限に照れたりすると竜魔族って口から火が出るの?
しかも体温も急上昇してるみたいだし。
シュヴァツ君の大事にする宣言してから熱いんだよ。
真夏の陽向にあるマンホールまではいかないけど、このまま上昇したらそれ位にはなりそうな・・・
「シズネさん・・・もう勘弁して欲しいっす・・・あたし恥ずかしくって倒れそうっす」
「うん、分かった!ちょっとやり過ぎちゃったね。でもさ良かったね♪」
「・・・はい♡」
ふぅ・・・体温が下がって来たよ。
あのまんま上がってたら焼きハムスターの出来上がりだったよなぁ。
腹の足しにもならない焼きハムスター・・・ポイ捨てされそうだね。
「シズネさんって下世話なおばさんみたいっす」
なっ!
おばっ!おばさんっ!
失敬なっ!
まだまだ私はピチピチだよ!
「確かにそうだよな、話し好きのおばさんみたいだった」
シュヴァツ君までっ!
泣くぞ・・・私は泣くぞ!
「おばさんはヤダー、まだまだピチピチだもん!おばさんなんて言うなら泣くぞ!私が泣いたら大変なんだぞ・・・多分。それにそもそも2人は私がいくつだと思ってるの?」
なんかさぁ、ミランダさんとアイシャさんと仲良くしてるから、それ位の年寄りって思ってる気がするんだよね。
それはとっても心外だよ。
「いくつって、アイシャさんと同い年位じゃないんすか?」
「うん、仲良いしそれ位だとじゃないかと」
やっぱりだったよ。
私ってそんなに年寄りっぽいかなぁ?
前世?・・・人間だった頃と同じ様にしてるんだけどなぁ。
「シズネさん、どうしたっすか?」
「あ、いや、私ってそんなに年寄りっぽいかなぁってさ」
「年寄りっぽくはないっす」
「ホントにホント?」
「っす」
「そっかなら良いかぁ、私ね・・・2人の半分も生きてないよ」
「っす?」
「えっ?」
スカージュちゃん・・・すって何?すって・・・
それは万能な言葉なの?
・・・なのかもなぁ。
実際、私も理解しちゃってるからなぁ。
「シズネさんっていくつなんですか?」
「7歳だよ」
「「!!!!!」っす!」
今のは『マジっすか?』って意味なんだろうなぁ。
っすって便利だねぇ。
「だからね、2人共普通に話して欲しいんだよね。特にスカージュちゃんっ!その敬語なのか丁寧語なのか良く分からない後輩語を使わないで普通に、ね♪」
「スカージュ、ちょっといいか?」
「・・・シズネさん少しここで待っててっす」
ヒソヒソ話かぁ。
しかもその距離かぁ。
バッチリ聞こえます。
「年齢の話・・・ホントだと思うか?」
「だと思うよ、シズネさんは嘘吐くと視線が明後日に行ったり、挙動不審になるそうだから」
「じゃあホントに7歳・・・」
「うん・・・7歳とは思えないよね。あたしなんかよりもずっとシッカリしてるし、ずっと強いはずだよ」
「武闘派で名を馳せた獣魔王が認める位だもの、オレ達2人掛かりでも太刀打ち出来ないだろうな。シッカリって面もだな、オレは住む所の事ばっかり考えてた、仕事までは頭が回らなかったし」
「うん、あたしもだよ。ホント7歳とは思えないよ」
「子供っぽいところは有るけどな、でも・・・その子供っぽさで御三方と仲良くなった訳だろうし」
「うん、アイシャさんがあんな穏やかな顔するの想像も出来なかなったし、茶目っ気があんなに有るなんてのも知らなかったよ」
「年は下だけど、見習う所はたくさん有る人って事・・・だよな?」
「あたしもそう思うよ、でも・・・シズネさんの気持ちも分かるの。年上に下から来られるのってイヤなんだよね」
うーん・・・悩ませちゃってるなぁ。
年齢を公開するのを止めようかな。
2人はどうするか悩んでくれてるけど、年下ってだけで態度が180度変わる人も居るだろうし、それはそれでイヤなんだよね。
私のお願いを聞いてくれたら嬉しいけど、変わらないなら変わらないでもいいや。
2人判断に任せちゃおう。
ミランダさん、アイシャさん、2人が優しく接してる2人だし。
ノスフラト君は・・・いつも通り我関せず、読書と私が秘密裏に提案してみた資金作りの方法に没頭してる事が多いけど、邪険にしたりはしてないから、間違った判断みたいな事はしないと思うんだ。
とすると・・・
聞き耳立ててる必要はないって事だね。
・・・
・・
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いい天気だし。
流れる雲でも眺めて待ってようかな。




