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そのハムスター、享楽家につき ~色々な称号、熨斗付けて返却したいんだけど?~  作者: ウメルヴァ
ハムスターに転生 2章 下準備

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プレゼントでっす〔前編〕

 今日もまた日が暮れる。

 今日も1日、精神的に来る精霊を相手に熟練度アップにいそしんださ。


 あれはマジできついっすよー

 仏の心と天使の笑顔を持つシズネちゃんにも限界点が見えて来る位にキツイっすよー


 ぬっ!

 久し振りに出たな!脳内っ!

 良いでしょう!

 仏と言おうが、天使と言おうが、誰も本気じゃ聞かないんだからさ。

 本気で聞いて本気でツッコミ入れてくるのは、あんた位よ。

 だーかーらー。

 サラッと受け流すスキルを身に付けてよね。


「嬢ちゃん、久し振りじゃの」

「えっ?誰?あっ!スナフキンの爺様!」

「元気そうじゃの」


 元気は元気だけど、どうやって私を見付たの?


「ガッハッハ、何を不思議そうな顔をしとるんじゃの?ワシは宵時の住人じゃぞ、宵時なら嬢ちゃんの元に来るのは簡単じゃの」


 あぁ、そっか!

 宵時ならどこへでも行けるって言ってたな。


「嬢ちゃん、皆心配しとるぞ、一緒に戻るかの?」


 んー・・・

 早く帰りたいってのは確かに有るんだけど。

 今回はなぁ。

 自分でやった事の結果が絶海の孤島に帰還するってなったんだしな。


 うん。

 自分でやった事の尻拭い位は自分でやらなきゃね。


「爺様、ありがとう。でもね帰る算段はついてるから自力で何とかしてみるよ」

「ガッハッハ、流石はワシの見込んだ嬢ちゃんじゃの」

「あっ!でも、方向を教えて欲しいな」


 多分あっちってのは有るんだけど、確信が持てないんだよね。


「あっちじゃの」


 やっぱりそうなんだ。

 じゃ、あれはホントにティファの声だったのかな・・・私、頑張らないとっ!


「爺様、皆に伝言を頼める?」

「なんじゃの?」

「早くても後2ヶ月位は掛かるから気長に待っててねって」

「ガッハッハ了解じゃの。それでは、またの」

「うん!またねー」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 あっはっはっはっは!

 これ、はっやぁーい!

 のんびり周りを見る事は出来ないけど、このスピード感も良いねー


 今、私はねスカージュちゃんとシュヴァツ君と街に向かってるの。

 2人は竜魔族だから本来の姿に戻れば飛行出来るんだよ。

 だから今回はスカージュちゃんに掴んでもらって運んでもらってるの、手荷物と化してるの。


 最初はね。


「スカージュちゃん!背中に穴を空けて良い?」

「はいぃぃぃぃぃっ?・・・穴なんて空けたら凄い痛いじゃないっすか!却下っす!」

「どうしてもぉ?穴空ければ、私はそこにまってけるんだけど」

「いやいやいやいやいや!痛いから却下っす!シズネさんだって背中に穴空けたくないっすよね?」


 そりゃそうか。

 でも、もしかしてシュヴァツ君ならって思ってチラッとみたらね。


「ダメです。と言うよりも許可する人が居るんですか?」


 無碍も無く即座に断られたよ。

 ちぇっ!

 背中から顔だけ出してたらレシプロ機に乗ってる感じだったかも知れなかったのになぁ。

 残念!


 ってな遣り取りが有ってねー

 穴を空けるのは力一杯却下されちゃったの。


 なら、背中の鱗に掴まればって思ってスカージュちゃんの背中の鱗を力一杯掴んだら・・・抜けちゃってねー

 今度もまた力一杯抗議されたよ。


「痛いじゃないっすかっ!シズネさんはあたしに何か怨みでも有るっすかっ!」

「だって、だって、凄く速いって言ってたから力一杯掴まないとダメかな?って」

「掴むのは良いっす。でも引っ張っちゃダメっす!痛いのはイヤっすからシズネはあたしが掴んで行きます」

「えっ!・・・スカージュちゃん?鱗の怨みってんでギュッと握んないでね?」

「はっ!・・・その手があったっす」

「くらぁ!マジでやめぃ!力がこもって来たら大暴れモード発動だかんね!」


 大暴れしたら大空高くから落下するけど、殺される位なら自殺してやるぅ!

 つか多分、落下しても死なない気がする。

 アイシャさんは『拒絶の壁』でフリーフォールして着地したし、私も出来るんじゃないかな?


「ふっふっふっ、落ちても良いならするっす」

「あー・・・スカージュ」

「なんすか?アイシャさん」

「シズネが大暴れしたらお前も墜落だぞ?あたしは獣化したとしても大暴れするシズネには近付きたくない!」


 獣化!?

 なにそれっ!?

 アイシャさんが獣になるの?

 か、か、格好良いぃぃぃぃぃっ!

 見たい!見たいよ!


「そ、そんなに凄いっすか?」

「大暴れ自体は、した事はないけどな・・・軽く暴れるんでも、あたしじゃ勝てない」

「そんな事ないよーきっと獣化したアイシャさんに見惚れちゃってボーッとしちゃうって。だから獣化してっ!今直ぐ獣化してっ!」

「お前・・・獣化したのを見たいだけだな!」

「そだよ♪その可愛い耳がどうなるか知りたいの♪」


 普通にどんな感じなのかも知りたいけど、あの耳が変化するかも知りたいの。


「か、か、可愛い言うな!・・・まったくもぅ」


 ぷっ。

 やっぱりアイシャさんは可愛い言われると凄い照れるんだなぁ。

 そんな所も可愛いんだけど、これ言っちゃったら照れなくなっちゃうかも知れないから秘密だね。


「アイシャさん、どうしたっすか?急に照れちゃって、なんか可愛いっすよ」


 あっ!言っちゃったよ。


「ーーーーーーーっ!」


 あははははは。

 その照れ隠し声になってないよ。


「そろそろ行かないか?あんまり遅くなると日暮までに帰って来れなくなる」


 シュヴァツ君は真面目だねー

 ノスフラト君も真面目だけどシュヴァツ君はそれに輪を2重に掛けてる感じだよ。


「そうだっ!お前ら!さっさと行って来い!」

「そうっすね。行きましょう」

「あははははは、アイシャさん行って来るね」


 おぉう!

 スカージュちゃんにムンズと掴まれたー

 うっひょーすっげーぶっとい爪だ。

 私と体長と同じ位の太さだよ。

 刺されたら・・・どうなっちゃうだろ?


「アイシャさん捕まっちゃった!食べられちゃうぅぅぅ」

「食べないっす!食べたところで腹の足しにもならないっす!でも・・・」

「でも?」

「あたしが今はシズネさんの生殺与奪の権利を握ってるっす!はっはっはー」


 むむむっ!

 ここは乗った方が良いのか?

 先制パンチを喰らわすのが良いのか?

 どっちだ?

 んー・・・


「シズネ!やっとけ」


 ニヤリとしながらアイシャさんの進言です。

 やっときましょう。


「スカージュちゃんスカージュちゃん。この岩の真ん中らへんを見といてねー」

「っす?」


 では早速【穿つ】ってみましょうか。

 4連射位でいいかな。


【穿つ】


 おっほっほっほ。

 綺麗に横並びで4つの穴が空いたなぁ

 我ながら天晴れじゃ!


「うふふ、どうやったか分かる?スカージュちゃんに掴まれて身動きとれないのに穴が空いたね。距離的に・・・頭と心臓に届くかなぁ?やってみて良い?」

「!!!!!!!!」

「あっはははは!シズネ、お前の脅し方は怖いぞ!」

「・・・怖いっす・・・あたし・・・死んじゃうの?」

「しないしないしない!!!なんかされなきゃ絶対にしない!!」


 うぅっ・・・

 やり過ぎた・・・

 ポロポロ涙を流すドラゴンなんて想像もしなかったものを見れちゃうとは・・・


「スカージュも悪乗りし過ぎたんだ、お相子あいこだろ」


 れ、冷静だ。

 シュヴァツ君は真面目な上に心底冷静だ。

 うーん・・・

 シュヴァツ君は冗談を言ったりするのかな?


「2人ともお互いに謝って終わりにしよう」


 しかも、言う事が的確な気がする。


「スカージュちゃん、ごめんなさい。言い過ぎたよ」

「あたしこそ、悪乗りしてごめんなさい」

「2人共じゃれ合うのは良いけど、まだ知り合って間もないんだから度を超したじゃれ合いは気を付けないと」


 何だろう、この説得力は。

 まるで・・・


「はーい分かりました先生」

「「先生?」」

「だって先生みたいだったじゃない」

「確かに先生みたいだったっす」

「いゃ、オレはそんな大した人材じゃ・・・それに先生って言うなら他の方々、ミランダ様・ノスフラト様・アイシャ様の方が・・・

「シュヴァツ君!ここに住むなら『様』は禁止!」

「でも・・・」

「大丈夫!『様』じゃないからって文句言う人は居ないから。もし言う様なら、ここから追い出す!」


 それにさ、私には『さん』なんだよね。

 『さん』で良いんだけど、私はミランダさんとかアイシャさんとじゃれたり馬鹿な事をやったりするんだよ。

 『様』『さん』が同等な事をやってるのを見て、私まで『様』になるのがイヤなんだ。


 それにだよ。

 こんな人気の無い所で上下を作りたくないの。

 皆が皆、対等な付き合いをする所にしたいの。


「分かった?分かったなら行こっか」

「はい、気を付けてみます」


 シュヴァツ君、頑張ってね。


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